4. なぜ75歳を過ぎると個人差が広がるのか?家計を左右する要因
75歳という年齢を超えると、「同じ年代」という一つの枠組みでは捉えきれないほど、個々の暮らしや家計の状況に大きな違いが生じてきます。この年代では、年齢そのものよりも、健康状態や家族構成、保有資産の内容といった要素が、生活の安定性を左右するようになります。
例えば、同じ75歳以上の夫婦世帯であっても、以下のような状況では家計の構造が大きく異なります。
- 夫婦ともに健康で自立した生活を送っている世帯
- 夫婦のどちらか一方が要介護状態にある世帯
- 配偶者と死別し、実質的に単身に近い生活を送る世帯
4.1 健康状態が家計の分かれ道に:医療・介護費用の影響
75歳以降の家計に最も大きな影響を与えるのが、医療や介護の必要性です。自立した生活を維持できている間は支出も比較的安定していますが、通院の頻度が増えたり、介護サービスを利用し始めたりすると、支出は急激に増加する傾向があります。
特に介護が関わるケースでは、以下のような費用が発生します。
- 医療費・介護サービス利用料
- 介護用品の購入費や住宅改修費
- 外出や家事をサポートする外部サービス費
これらは、総務省「家計調査 家計収支編(2025年)」のような統計データには直接現れにくい支出であり、同じ年金収入であっても家計のゆとりに差を生む大きな要因となります。
4.2 家族構成の変化と固定費の関係性
もう一つの重要なポイントは、家族構成の変化です。夫婦二人で暮らしている場合と、どちらかが亡くなり単身に近い生活になる場合とでは、生活の前提そのものが変わります。
単身に近い状態になると、次のような状況が生まれやすくなります。
- 住居費や光熱費が想定していたほど下がらない
- 家事や通院の負担が増大する
- 外部のサービスに頼る度合いが高まる
このように、「世帯の人数が減っても支出は減りにくい」という状況が生じることがあります。
4.3 「平均」が参考にならない年代へ:個別事情の重要性
このように、75歳以降の家計は、
- 年金額の多い少ない
- 貯蓄額の多い少ない
といった金銭的な側面だけでなく、個々の生活環境そのものによって大きく左右されます。そのため、「平均的な後期高齢者の夫婦」というモデルケースは、実態を把握する上で次第に意味をなさなくなります。
大切なのは、平均値と比較することではなく、自分自身の健康状態や家族の状況を前提として、将来どのような支出が見込まれるのかを具体的に捉えることです。
こうした個人差が広がる中で、次に家計へ大きく影響するのが、75歳から加入する後期高齢者医療制度と、その自己負担割合です。この制度への理解が、家計の安定性を左右する段階に入っているといえるでしょう。
では、この後期高齢者医療制度について詳しく見ていきましょう。