新年度の慌ただしさも少し落ち着いてきたこのころ、家計や貯蓄の状況を見直すという方も多いでしょう。
特に、老後に向けた資金は一朝一夕で貯められるものではないため、長期的な見通しを立てて計画的な準備が必要です。
そして日本は世界でもトップクラスの長寿国であり、老後の生活も長く続くことが予想されます。
老後資金が不足するリスクを踏まえて資金を準備しなければなりません。
今回は、長寿化に伴う資金不足のリスクや75歳以上の高齢夫婦世帯の家計見直しのポイントを解説します。
資産寿命を延ばす方法も解説していくので、ぜひ本記事を参考に老後資金の準備を始めましょう。
1. 長寿化に伴う「資金不足のリスク」
現代の日本は「人生100年時代」と言われており、世界でもトップクラスの長寿国となっています。
長生きできることは素晴らしいことですが、一方で老後の生活資金の面ではリスクがあります。
ここでは、2024年時点の日本の平均寿命と長寿によるリスクを踏まえた資金計画についてご紹介します。
1.1 2024年時点の平均寿命
厚生労働省の「令和6年簡易生命表」によると、2024年時点の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.13歳となっています。
平均で見ると女性の方が長寿の傾向があることが分かります。
1.2 資産の寿命を意識した資金計画が必要
年金が主な収入源となる老後生活においては「収入<支出」という家計になるケースが少なくありません。
この状態で長生きするということは、貯蓄を取り崩す期間が長くなるということになり、資金が不足するリスクも高まります。
先ほど平均寿命を紹介しましたが、65歳時点の平均余命で見ると男性が19.47年、女性が24.38年となっています。
仮に65歳で完全に退職して年金生活に入った場合、平均して20〜25年ほど、夫婦の生活費をまかなっていく必要があります。
後ほど詳しく見ますが、75歳以上のシニア夫婦世帯では毎月の家計が平均して約2万7000円の赤字となっています。
仮に、老後を通じて毎月3万円ほど生活費が不足すると想定した場合、単純計算で720万〜900万円の貯蓄の取り崩しが必要となる計算です。
平均以上に長生きする場合はもっと資金が必要となります。
長生きによる資金面でのリスクを踏まえた上で、資産寿命を意識した資金計画を立てましょう。
(※編集部注)上記はあくまで現在の物価水準や日常的な生活費のみで計算した「単純計算」の目安です。実際の資金計画においては、将来的な物価上昇(インフレ)の影響や、「介護費用」「医療費」「住まいの修繕費」といった、まとまった突発的な支出も別途想定しておく必要があります。
2. 75歳以上夫婦世帯の家計見直しのポイント
75歳以上のシニア夫婦は老齢年金が主な収入源となり、収入を増やすことは容易ではありません。
老後資金の不足を防ぐためには、家計を見直して無駄な支出を減らすことが重要です。
ここでは、75歳以上の後期高齢シニア夫婦の家計見直しのポイントを3点ご紹介します。
2.1 月々の固定費を削減する
支出を減らしたいのであれば、月々の固定費を削減することが重要です。
毎月固定でかかる支出を減らすことができれば、家計にかかる負担を大きく軽減できます。
例えば、不要なサブスクを解約したり、通信費を安いプランに乗り換えたりすることで固定費を削減できます。
また、コンパクトな住居に住み替えることで家賃などの固定費を減らすというのもひとつの手です。
家計への影響が大きい固定費を見直し、無駄な支出を削減しましょう。
2.2 民間保険の保障内容を見直す
民間の医療保険や生命保険に加入している場合、保障内容を見直すことも家計への影響が大きくなります。
不要な保障は外し、シンプルな保険プランを設計して保険料の負担を軽くしましょう。
75歳以上になると後期高齢者医療制度に加入することになり、医療費の窓口負担は原則1割(所得によっては2割・3割)となります。
加えて「高額療養費制度」によって1カ月の医療費の上限額が定められており、医療費の自己負担が過重になるのを防ぐ仕組みになっています。
民間の医療保険は、こうした公的制度では対象外となる分(差額ベッド代や食事代など)の不足をカバーする目的へシフトし、保険料の負担を抑える工夫をすると良いでしょう。
また、生命保険についてもすでに子どもが独立している場合は、そこまで大きな保障を準備する必要性は低くなる傾向があります。
昔加入したままの生命保険がある場合、一度見直してみても良いかもしれません。
2.3 支出のメリハリをつける
無駄な支出を削減することは大切ですが、何でもかんでも支出を減らせば良いというわけではありません。
支出項目のなかで優先すべきものとそうでないものとで、メリハリをつけることが大切です。
例えば、医療や健康に関する出費はあまり削り過ぎない方が良いでしょう。
健康を損なって入院・手術となれば、かえって大きな支出が発生します。
また、不要なサブスクは解約した方が良いですが、支出を減らすために我慢してまでサブスクを解約する必要はありません。
必要なものと不要なものを見極め、どこを削ってどこにお金を使うかを考えることが大切です。
3. 資産寿命を延ばすための工夫
支出を減らす一方で、保有している資産の寿命を延ばす工夫をすることも大切です。
ここでは、資産寿命を延ばすためのポイントをご紹介します。
3.1 毎月の不足分を把握する
まず、老後生活で毎月どれくらい不足が生じるのかを把握するところから始めましょう。
家計の収入・支出を把握していないと、貯蓄をどのように取り崩すかを決めることができないためです。
総務省統計局の「家計調査(家計収支編)二人以上の世帯 2025年」によると、75歳以上の二人以上の無職世帯における平均的な家計収支は、実収入が25万2798円、実支出が28万23円でした。
平均的に毎月約2万7000円が不足している計算になります。
ご自身の家計状況も一度見直しを行い、毎月どれくらい不足しているのかを把握しましょう。
3.2 必要額だけを取り崩す
毎月の不足額を把握できたら、必要な分だけを貯蓄から取り崩すように心掛けましょう。
必要以上の金額を取り崩してしまうと、資産の寿命が短くなる恐れがあります。
心理的に「少し余裕を持って取り崩したい」という気持ちがあるかもしれませんが、手元にお金があるとつい使ってしまうケースは少なくありません。
結果的に不要な支出が増えてしまい、資産が減るスピードが早くなる恐れがあります。
毎月の不足分をしっかりと把握していれば、必要額以上に取り崩さずに済みます。
生活費で足りない分だけを取り崩すように意識し、資産寿命を長持ちさせましょう。
3.3 一部を運用に回す
保有する資産の一部を投資・運用に回し、資産を増やすことも有効な手段のひとつです。
老後を迎えるとリスクを避けようとして投資をやめるケースも少なくありませんが、資産寿命のことを考えると運用は続けておいた方が良いでしょう。
老後生活で投資を行うのであれば、とにかくリスクを抑える工夫が必要です。
比較的リスクが小さい債券や金などを中心に保有したり、さまざまな投資対象に分散して資金を投じたりすることが重要です。
また、資産のほとんどを投資に回すと、いざお金が必要なときに損失を抱えてしまうリスクが伴います。
2〜3年分ほどの生活費・予備資金は預貯金等で確保し、残りのお金を安全性の高い投資先で運用しておくと良いでしょう。
4. 長寿リスクを見据えて家計・資金計画を設計しましょう
日本では長寿化が進んでいるため、老後資金が不足するリスクを踏まえた資金計画が重要です。
定年後のセカンドライフが長く続く可能性を見据え、十分な貯蓄を準備しておく必要があるでしょう。
高齢期には月々の固定費を見直したり、民間保険の保障内容を見直したりして、家計の無駄な支出を減らす工夫が大切です。
また、資産寿命を延ばすためのポイントとして「毎月の不足分を把握する」「必要額だけ取り崩す」「一部を運用に回す」といった点が挙げられます。
安心して長生きできるよう、資産寿命を意識した資金計画を設計しましょう。
参考資料
丸山 大輝