年金の受給は、いずれ誰もが迎えるものです。年金だけで老後を過ごすことは難しいため、老後資産を貯める・増やすといった対策を早めにする必要があります。

「相続」は、誰もが迎えるものですが、何かと見逃しがちです。たとえば、親が亡くなった後に「実家の管理をどうするか」といった問題などです。

こうした相続財産の扱いは、一歩間違えるとトラブルの原因になります。財産をトラブルの原因にしないためには、どう対処すればよいのでしょうか。この記事では、相続における実家の取り扱いの注意点と、トラブルにならないための対処法を解説します。

1. 実家に誰も住まなくなると税金「増加」の可能性も

親が亡くなった後の実家は、誰も住まなくなり実質的に「空き家」になる可能性があります。空き家の存在自体は違法ではありませんが、さまざまなリスクが潜むため早急な対策が必要です。

代表的なリスクのひとつが、固定資産税の負担増加です。日本の税制では、住宅が建てられている土地に対して、固定資産税が最大6分の1まで減額される「住宅用地の特例」があります。しかし、空き家の状態が悪化して「特定空家等」に該当し、さらに市区町村長から状況改善の「勧告」を受けると、特例の適用対象から除外されて税額が上昇するのです。

「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれがある状態などと認められる空き家を指します。このような特定空家等に対して、自治体(市区町村長)から勧告などの措置が行われます。同じく、適切な管理が行われていないことにより、そのまま放置すれば特定空家等に該当するおそれがある空き家は「管理不全空家等」とみなされますが、こちらも認定された後に市区町村長から「勧告」を受けることで、特例の対象外となります。

空き家をそのままにしておけば、理論上は住宅用地の特例が適用されるため、土地の固定資産税は安いままです。しかし、誰も住まない家は管理が行き届かず、老朽化のスピードが早まります。特定空き家などに指定されてしまうと、結果的に税額が上がってしまいます。土地・建物ともに、適切な管理や早急な処分といった対応が重要です。

次章では、実家を相続した際の法律上の義務を解説します。

2. 登記義務を無視するとペナルティも

固定資産税の負担増に加え、登記義務の遵守も重要です。2024年4月から、不動産の相続登記が義務化されました。相続登記とは、亡くなった人が所有する不動産の名義を、相続人のものに変更する手続きです。

2024年4月から、不動産の相続人は、所有権の取得を知った日や遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記の申請をする必要があります。

相続登記をせずに放置したままでいると、10万円以下の過料の対象になります。2024年4月1日以前に相続が開始している場合も、3年以内には相続登記を完了しなければなりません。相続によって取得した不動産の名義が変わっていない場合は、司法書士に依頼するなどして早急に手続きを済ませましょう。

なお、2026年4月からは、不動産の所有者(登記名義人)に氏名や住所の変更があった場合も、2年以内の変更登記手続きが義務化されました。相続後に住所が変わった場合などは、注意が必要です。

次章では、実家の相続でトラブルにならないためのコツを解説します。

3. 実家をトラブルのもとにしないための対処法3つ

実家の相続がトラブルの原因にならないようにするには、以下の3つについておさえておきましょう。

  • 家族で早めに意思決定をしておく
  • 売却や空き家バンクへの登録をする
  • 相続土地国庫帰属制度を使う

各対処法について解説します。

3.1 家族で早めに意思決定をしておく

理想的な対処法は、早いうちから家族で実家の相続について話し合っておくことです。相続が発生してから協議を始めると、兄弟や親族間で「誰が家の管理を引き継ぐのか」「固定資産税や維持費は誰が支払うのか」といったことで意見が対立し、関係悪化を招きます。

まずは実家を残すのか取り壊すのか、親の意向を確認しておきましょう。そのうえで、相続人になり得る家族全員で誰が管理するのか協議するのが望ましいです。必要に応じて、遺言書を作成してもらい、協議内容を書面に残しておくことも検討しましょう。

あらかじめ家族としての方向性を定めておくことで、トラブルを回避しましょう。

3.2 売却や空き家バンクへの登録をする

相続後の実家に誰も住む予定がないのであれば、売却を検討するとよいです。建物の価値が落ち切らなければ、売買が成立する可能性は十分考えられます。不動産を手放せれば、維持管理の手間や費用が省けて、トラブルが起きる可能性も低くなります。

売却の際は、以下の要件に該当すれば、譲渡所得が最高で3000万円控除される「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」を利用可能です。

  • 昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
  • 区分所有建物登記がされている建物でないこと。
  • 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。

該当する場合は、譲渡所得に税金がかからなくなる可能性もあるでしょう。ただし、2024年1月1日以降に譲渡する場合、相続人3人以上で建物を取得した場合、控除額は2000万円になります。

もし売却が難しいようであれば、自治体などが運営する空き家バンクへの登録も有効です。空き家バンクでは、Web上で売りたい不動産の情報を掲載することで、買い手とのマッチングを待ちます。

無料で掲載できるため、気長に売却を待ちたい場合に適しています。ただし、売却までに時間がかかると、その分固定資産税や維持費が発生し続ける点には注意しましょう。

3.3 相続土地国庫帰属制度を使う

「買い手が見つからないが、自分で管理できる自信がない」という人もいるでしょう。そうした人は、相続土地国庫帰属制度を使いましょう。相続土地国庫帰属制度は、一定額の負担金を支払うことで、土地を手放して国庫に帰属させられる制度です。

相続土地国庫帰属制度2/2

相続土地国庫帰属制度

出所:法務省「所有者不明土地の発生を予防する方策」

負担金は最低20万円からで、宅地については面積に応じて算定されます(※面積に応じて算定されるのは「一部の市街地の宅地」に限られます)。100㎡なら約55万円、200㎡なら約80万円の負担金が必要です。

なお、制度を利用する際は、土地を更地にしなければなりません。建物の解体費用や前述の負担金など、さまざまな費用が発生する点には注意が必要です。

また、権利関係でトラブルがある土地や担保権が設定されている土地は、引き取ってもらえません。実家の解体を予定しており、土地の権利などが明確で、費用を支払える余裕のある人は、活用を検討してみましょう。

4. まとめ

実家の相続は、一歩間違えればトラブルになりかねないものですが、適切な対処法をおさえていれば、親族間での争いを避けられます。

実家が空き家になったまま放置すると、固定資産税の増加や相続登記義務の違反など、親族間のトラブルとは別の問題も発生するため、相続後の取り扱いは早めに決めて、スムーズに対処できるように備えておきましょう。

参考資料

石上 ユウキ