2026年度の年金額改定にあわせて、年金生活者支援給付金も4月分から見直されます。

物価上昇が続くなか、公的年金に上乗せして支給されるこの給付は、低所得の年金受給者にとって家計を支える重要な制度です。

一方で、年金生活者支援給付金は、対象となっていても自動的に受け取れるとは限らず、請求が必要になる場合があります。

さらに、2026年4月からは在職老齢年金の基準見直しも予定されており、年金を受け取りながら働く人にとって注目度の高い内容になっています。

本記事では、2026年度の給付額の内容を整理したうえで、年金生活者支援給付金の支給要件や申請方法、あわせて公的年金の平均受給額や在職老齢年金制度の見直しポイントを分かりやすく確認していきます。

1. 【2026年4月分から増額】年金生活者支援給付金はいくらもらえる?

年金生活者支援給付金の給付基準額は、公的年金と同様に年度ごとに見直されます。

2026年度の年金額改定により、国民年金(基礎年金)が1.9%の引上げ、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の引上げとなり、年金生活者支援給付金の給付基準額は3.2%の引き上げられる見込みです。

年金生活者支援給付金の給付額1/9

年金生活者支援給付金の給付額

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成

  • 老齢年金生活者支援給付金(月額):5620円
  • 障害年金生活者支援給付金(月額):1級7025円・2級5620円
  • 遺族年金生活者支援給付金(月額):5620円

例えば、老齢年金の受給者が給付基準額どおりに支給される場合、偶数月の年金支給日に「1万1240円(2ヵ月分)」がまとめて振り込まれます。

2. 年金生活者支援給付金は3種類|支給対象になるのはどんな人?

「年金生活者支援給付金」ってどんな制度?2/9

「年金生活者支援給付金」ってどんな制度?

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」

年金生活者支援給付金制度には、受け取る年金の種類に応じて次の3つの区分があります。

  • 老齢年金生活者支援給付金
  • 障害年金生活者支援給付金
  • 遺族年金生活者支援給付金

それぞれの支給要件を見ていきましょう。

2.1 老齢年金生活者支援給付金の支給要件

老齢年金生活者支援給付金の支給要件3/9

老齢年金生活者支援給付金の支給要件

出所:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」

老齢年金生活者支援給付金の主な支給要件は以下のとおりです。

  • 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税
  • 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は90万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は90万6700円以下(※2)

※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。

2.2 「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」の支給要件

「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」の支給要件は以下のとおりです。

  • 障害基礎年金もしくは遺族基礎年金の受給者
  • 前年の所得(※1)が479万4000円(※2)以下

※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は、給付金の判定に用いる所得には含まれません。
※2 扶養親族等の数に応じて増額。

3. 年金生活者支援給付金は要申請!申請方法をチェック

年金生活者支援給付金は自動的に支給されるものではなく、申請しないと受け取れないお金です。ここでは、給付金の申請方法を見ていきましょう。

3.1 すでに年金を受給している方の場合

年金受給者が新たに年金生活者支援給付金の支給要件を満たした場合、毎年9月以降に「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が郵送されます。

年金生活者支援給付金請求書4/9

年金生活者支援給付金請求書

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度 」

必要事項を記入して返送しましょう。

3.2 65歳から新たに年金を受給する場合

65歳を迎えて新たに老齢基礎年金の受給を開始する際には、年金とあわせて年金生活者支援給付金も新たに申請する必要があります。

この場合、65歳の誕生日を迎える約3ヵ月前に、年金の請求書に加えて給付金の請求書も同封されて届きます。こちらに必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金の請求書とあわせて年金事務所に提出しましょう。

65歳を迎えて新たに年金を請求する方の場合5/9

65歳を迎えて新たに年金を請求する方の場合

出所:日本年金機構「65歳の誕生日を迎える方で、老齢基礎年金を新規に請求する方」

3.3 年金を「繰上げ受給」している場合

年金受給者の中には「繰上げ受給」を選択し、65歳を迎える前に受け取っている方もいらっしゃるでしょう。

繰上げ受給者が年金生活者支援給付金の支給要件を満たした場合、下記のように黄色の封筒が送付されます。

また、2025年1月以降に65歳を迎え、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届いた方は、電子申請を利用できるようになっています。

この場合は、郵送での提出は不要となるため、「郵送」または「電子申請」どちらか好きな方法で手続きが可能です。

4. 公的年金の平均額はいくらか|国民年金と厚生年金を比較

そもそも、現代のシニアはどのくらいの年金を受け取っているのでしょうか。

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、国民年金のみを受け取る場合と、国民年金+厚生年金を受け取る場合の平均月額を見てみましょう。

4.1 【国民年金の平均月額】

  • 全体 5万9310円
  • 男性 6万1595円
  • 女性 5万7582円

4.2 【厚生年金の平均月額】

  • 全体 15万289円
  • 男性 16万9967円
  • 女性 11万1413円

※国民年金部分を含む

国民年金の平均月額は5万9310円、基礎年金部分を含む厚生年金の平均月額は15万289円となっています。

ただし、年金額は現役時代の収入や加入期間によって大きくばらつきます。

厚生年金を含めても、受給額は1万円未満から30万円以上まで幅広く分布しており、平均値だけでは実態をつかみにくいのが実情です。

なお、老齢年金生活者支援給付金制度の対象になるには、年金収入が90万9000円(昭和31年4月2日以後に生まれた方)である必要があるので、月額約7万5750円以下が目安となります。

5. 「年金を受け取りながら働く」在職老齢年金制度の仕組みを解説

物価上昇などを背景に老後資金への不安が高まるなか、年金を受け取りながら働き続ける人が増えています。

そうした働き方を考えるうえで押さえておきたいのが「在職老齢年金制度」です。

2026年度から、この制度の見直しが行われ、特に60歳代で働く人にとっては影響の大きい改正となります。

在職老齢年金制度の見直しについて9/9

在職老齢年金制度の見直しについて

出所:厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」

5.1 在職老齢年金とは?

在職老齢年金とは、60歳以降に老齢厚生年金を受け取りながら、会社員などとして働いている人に適用される仕組みです。

給与や賞与などの「報酬」と年金額の合計が一定の基準額を超えると、その超過分に応じて年金の一部または全部が支給停止となります。

この仕組みは、年金と賃金のバランスを調整するために設けられていますが、近年は「働くと年金が減るため就労を控える人が出る」といった指摘もあり、見直しの議論が続いてきました。

5.2 支給停止の基準額が大幅に引き上げられる

在職老齢年金の「支給停止調整額」(年金が満額支給される収入の目安)は、近年段階的に引き上げられています。

  • 2022年度:47万円
  • 2023年度:48万円
  • 2024年度:50万円
  • 2025年度:51万円
  • 2026年度:65万円 

2026年4月以降、給与と年金の合計が月65万円までであれば老齢厚生年金が全額支給されます。

従来の基準額(2025年度:月51万円)と比べると、その引き上げ幅は大きく、減額の影響を受ける人は大幅に減る見込みです。

「働くと年金が減る」という感覚は、60歳代の就労意欲を実質的に抑制してきた面がありました。

今回の改正はその構造に切り込むものであり、収入を気にして労働時間を抑えてきた人にとっては、働き方を見直す現実的なきっかけになりえます。

再雇用制度を利用している60歳代の会社員であれば、給与と年金を無理なく両立できる場面が増えるでしょう。

6. 年金生活者支援給付金の増額と受給条件を踏まえた4月の確認ポイント

2026年度は年金生活者支援給付金が増額され、老齢年金生活者支援給付金は月額5620円(基準額)となります。

物価上昇が続くなか、一定の所得水準にある年金受給者にとっては、家計を下支えする制度として改めて確認しておきたい内容です。

ただし、この給付は誰でも自動的に受け取れるわけではなく、年金の種類ごとに所得要件や世帯要件が設けられています。

特に老齢年金生活者支援給付金は、同一世帯の全員が住民税非課税であることなどが条件となるため、自分が対象かどうかを確認したうえで、必要な手続きを行うことが重要です。

また、2026年4月からは在職老齢年金の基準も見直され、年金を受け取りながら働く人にとっては、これまでより就労と年金を両立しやすくなる見込みです。

年金額そのものだけでなく、上乗せ給付や制度改正も含めて把握し、自分に合った老後の収支設計につなげていきましょう。

参考資料

加藤 聖人