「富裕層」と聞くと、自分とは縁遠い世界の話だと感じる方も多いのではないでしょうか。しかし、日本国内の富裕層・超富裕層は合計165万世帯を超え、その数は年々増加を続けています。

本記事では、野村総合研究所のレポートをもとに「富裕層」の定義や世帯数の実態を確認したうえで、富裕層が実践している資産運用の5つの共通ルールと、富裕層が増え続けている3つの背景について解説します。

資産規模の大小にかかわらず、参考にできる考え方も多く含まれているので、ぜひ最後までご覧ください。

1. この記事の3つのポイント

  •  日本の富裕層・超富裕層は合計165万3000世帯、資産469兆円
  •  富裕層は「守りの運用」やオルタナティブ投資を重視する傾向がある
  •  株高・非課税制度の拡充・相続により、今後も富裕層は増える可能性がある

2. 富裕層が実践している資産運用、5つの共通ルール

資産規模の大きい富裕層は、一般的にどのような考え方で資産運用に取り組んでいるのでしょうか。ここでは、富裕層に共通して見られる資産運用の考え方を、5つのポイントに整理して紹介します。

2.1 1.資産保全(守り)を最優先にする

資産規模が大きくなるほど、リターンの絶対額も大きくなります。たとえば「1億円が10%増える(+1000万円)」よりも、「10億円が3%増える(+3000万円)」方が、増える金額そのものは大きくなる計算です。

そのため、富裕層は無理にハイリスクな運用でリターンを追い求めるのではなく、年3〜5%程度の着実なリターンを狙うポートフォリオを組むケースが多く見られます。大きな下落を避けることを優先した結果とも言えるでしょう。

2.2 2.オルタナティブ(代替)投資を積極的に活用する

株式や債券といった伝統的な資産だけでなく、非上場企業の株式や実物資産にも分散して投資を行うのも、富裕層に見られる特徴のひとつです。

  • プライベート・エクイティ(PE):未公開株への投資
  • 実物不動産・インフラ:安定したキャッシュフローとインフレ耐性が期待できる資産
  • ヘッジファンド:市場の上げ下げにかかわらず絶対収益を狙う運用手法

これらは株式市場の相場に連動しにくい資産のため、市場全体が大きく下落する局面でも、資産全体への影響を抑える効果が期待されています。

2.3 3.「非流動性プレミアム」を取りに行く

富裕層は普段の生活資金や、いつでも動かせるお金にすでに余裕があるため、「5〜10年間は現金化できない」といった制約のある投資商品(PEファンドや不動産案件など)にも資金を預けられます。

その引き換えとして、通常よりも高い利回り(非流動性プレミアム)を得られる点も、富裕層の運用における特徴のひとつです。

2.4 4.節税・事業承継・相続まで一体で資産を管理する

富裕層は「運用でいくら増えたか」だけでなく、「税金や費用を差し引いたあと、手元にいくら残るか」という視点を強く意識しています。

  • 資産管理会社の設立(法人化)による税率のコントロール
  • 生前贈与や信託(トラスト)を活用した相続税対策
  • 海外資産の活用や事業承継スキームの構築

運用と税金・承継対策を別々に考えるのではなく、一体のものとして管理している点も、資産規模の大きい世帯に特徴的な考え方といえるでしょう。

2.5 5.プライベートバンクなど専門家チームを活用する

富裕層は自分一人で判断するのではなく、プライベートバンク(PB)や税理士、弁護士、ファイナンシャルプランナーなど、複数の専門家によるネットワークを構築しているケースが多く見られます。

それぞれの専門家の知見を組み合わせ、チームとして資産全体を総合的に管理・保全しているのです。

川勝 隆登
資産保全を最優先にするという考え方は、資産規模が大きいほど守るべき金額も大きくなるためです。たとえば1億円のポートフォリオが10%減れば1000万円の損失ですが、10億円であれば3%の下落でも3000万円の損失になります。年3〜5%程度の着実なリターンを狙うのも、大きな下落を避けたいという発想の裏返しといえます。個人投資家であっても、リターンを追い求める前に「どこまでの下落なら受け入れられるか」を先に決めておく発想は、資産規模にかかわらず参考にできる考え方です。

富裕層の運用における考え方は、資産規模にかかわらず「リスク管理」や「税金への意識」といった点で、個人投資家にとっても参考になる部分が少なくありません。次章では、そもそも「富裕層」とはどのような世帯を指すのか、定義と世帯数を確認していきましょう。

3. そもそも「富裕層」とは?定義と世帯数を確認

「富裕層」と呼ばれる資産家は、具体的にはどのような世帯を指すのでしょうか。野村総合研究所のレポートをもとに、「富裕層」の定義について見ていきましょう。

3.1 《富裕層の定義》

野村総合研究所のレポートでは、純金融資産保有額の規模に応じて、日本の全世帯を5つの階層に分類しています。

具体的には、純金融資産が1億円以上の世帯を「富裕層」、その中でも5億円以上の世帯を「超富裕層」と定義しています。

3.2 資産1億円以上の世帯は、日本にどれくらいいる?

「富裕層+超富裕層」の合計は165万3000世帯。これは、日本の全世帯の約3%に相当します。

  • 超富裕層(5億円以上):11万8000世帯/135兆円
  • 富裕層(1億円以上5億円未満):153万5000世帯/334兆円
  • 準富裕層(5000万円以上1億円未満):403万9000世帯/333兆円
  • アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満):576万5000世帯/282兆円
  • マス層(3000万円未満):4424万7000世帯/711兆円

富裕層と超富裕層が保有する資産の合計は469兆円。全世帯の保有資産額(1795兆円)の約26%が、上位約3%にあたるこの2つの層に集中していることになります。