春の新生活シーズンは、子どもにかかるお金や家計の負担を見直す家庭が増える時期です。
足元では、児童手当の拡充や子ども・子育て支援金の導入など、子育て世帯を取り巻く制度の見直しも続いており、「自分の家庭で使える制度を改めて確認したい」と感じる人も多いでしょう。
実際には、出産や育児に関する給付だけでなく、学び直しや住宅取得、医療費負担の軽減につながる制度まで幅広く用意されています。
ただ、制度ごとに対象者や申請方法が異なるため、知らないままでは活用の機会を逃してしまうこともあります。
本記事では、子育て世帯が知っておきたい主な支援制度や控除制度を整理し、それぞれの概要を分かりやすく確認していきます。
自分の世帯で利用できる制度がないか、この機会にチェックしてみましょう。
1. 出産育児一時金
出産育児一時金は、公的医療保険に加入している方が出産した際に支給される給付金です。
所得制限は一切なく、住民税課税世帯・非課税世帯を問わず支給されます。
【支給額】
- 原則50万円(産科医療補償制度に加入している医療機関での出産)
【対象者】
- 会社員・公務員・自営業などすべての健康保険加入者とその被扶養者(※妊娠4カ月(85日)以上の出産であること)
2. 出産手当金
出産手当金は、被保険者が出産のために仕事を休み、その間の給与を受けられないとき(または受け取る給与が出産手当金の日額より少ないとき)に支給される給付金です。給与の支払いがあっても、出産手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給されます。
【支給額】
- 支給開始日(※)以前の継続した12カ月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷30日 × 3分の2
※支払い開始日:一番最初に給付が支給される日のことです。
【対象者】
- 健康保険(協会けんぽ)に加入している被保険者
3. 育児休業等給付
育児休業等給付として、子どもの年齢や養育の状況に応じて、要件を満たす場合に「出生時育児休業給付金」「育児休業給付金」「出生後休業支援給付金」「育児時短就業給付金」が支給されます。
【支給額】
- 給付金ごとに異なる
【支給期間】
- 原則として子が1歳に達する日の前日まで(※育児休業給付金において、保育所に入所できない等の要件を満たす場合は最長2歳に達する日の前日まで延長可能)
【対象者】
- 雇用保険に加入しており、一定の要件を満たす労働者
4. 児童手当
児童手当は、0歳から高校生まで(18歳到達後の最初の3月31日まで)の子どもを養育している方に支給される手当です。
2024年10月の制度拡充により、所得制限が完全に撤廃されたため、保護者の所得額に関わらず、すべての対象児童に対して手当が支給されるようになりました。
以前は「所得上限限度額」を超過して手当や特例給付を受け取っていなかった世帯も、現在は支給対象となっています。
ただし、これらの方々が受給を開始するにはお住まいの自治体への申請が必要ですので、手続き漏れがないよう注意が必要です。
【支給額】
- 3歳未満:月1万5000円(第3子以降は3万円)
- 3歳以上高校生年代まで:月1万円(第3子以降は3万円)
【対象者】
- 対象となる児童を養育する父母等
5. 教育訓練給付金
教育訓練給付金とは、働く人の主体的な能力開発やキャリア形成を支援し、雇用の安定や再就職の促進を目的とした制度です。
厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した場合、受講にかかった費用の一部が給付金として支給されます。
教育訓練給付金には、専門実践教育訓練、特定一般教育訓練、一般教育訓練の3種類があります。
【支給内容】
- 専門実践教育訓練:教育訓練経費の50%(年間上限40万円)が訓練受講中6ヵ月ごとに支給
- 特定一般教育訓練:教育訓練経費の40%(上限20万円)が訓練修了後に支給
- 一般教育訓練:教育訓練経費の20%(上限10万円)が訓練修了後に支給
※一定の条件を満たすと支給額が増える場合もあります。
6. ふるさと納税
ふるさと納税は、自分で選んだ自治体に寄附をすると、原則として自己負担2000円を除いた額について、所得税と住民税から控除を受けられる制度です。控除には上限があり、年収や家族構成などによって実質負担2000円で済む寄附額は変わります。
会社員などで確定申告が不要な人は、一定の条件を満たせばワンストップ特例制度を利用できます。寄附先が5自治体以内であれば、確定申告をしなくても控除を受けられます。ただし、医療費控除や住宅ローン減税の初年度申告などで確定申告を行う場合は、ワンストップ特例は使えず、ふるさと納税分も含めて申告する必要があります。
【支援内容】
寄附額のうち2000円を超える部分について、所得税・住民税から控除
※控除上限あり
【対象者】
自治体に寄附をした人
7. 住宅ローン減税
住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを利用してマイホームを新築・取得・増改築し、一定の要件を満たした場合に、年末の住宅ローン残高などをもとに所得税や住民税の控除を受けられる制度です。
令和4年以降に居住した場合は、住宅の環境性能や入居時期などによって控除率や借入限度額、控除期間が異なります。
特に注意したいのは、会社員でも初年度は確定申告が必要な点です。2年目以降は、勤務先の年末調整で手続きできるケースが一般的ですが、初年度に申告しないと控除を受けられません。
住宅取得を予定している子育て世帯にとっては、家計負担を抑えるうえで確認しておきたい制度といえるでしょう。
【支援内容】
年末の住宅ローン残高等をもとに、一定額を所得税・住民税から控除
【対象者】
住宅ローンを利用して住宅を取得・新築・増改築し、一定の要件を満たす人
8. 医療費控除
医療費控除は、本人または生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得控除を受けられる制度です。
対象となるのは、その年の1月1日から12月31日までに実際に支払った医療費で、未払い分は含まれません。
控除額は、「実際に支払った医療費-保険金などで補てんされる金額-10万円」で計算します。なお、総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく総所得金額等の5%を差し引きます。
出産や子どもの通院、家族の治療費がかさんだ年は、対象になる可能性があります。
また、通常の医療費控除とセルフメディケーション税制は選択適用で、両方を同時に使うことはできません。どちらが有利かを確認したうえで申告したいところです。
【支援内容】
支払った医療費が一定額を超えた場合、所得控除を受けられる
※控除額の上限は200万円
【対象者】
本人または生計を一にする配偶者その他の親族のために医療費を支払った人
出所:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
9. 自分の世帯が対象になる制度がないか確認しよう
子育てや住まい、学び直しに関わる支援制度には、給付金だけでなく税負担を軽くする仕組みも含まれています。
出産育児一時金や出産手当金、育児休業等給付、児童手当のように直接家計を支える制度がある一方で、教育訓練給付金や住宅ローン減税、医療費控除など、申請や確定申告によって負担を抑えられる制度もあります。
また、制度によって対象者や手続き方法は大きく異なり、自動的に受けられるとは限りません。
特に児童手当の申請や住宅ローン減税の初年度申告などは、手続き漏れがそのまま受給漏れにつながるため注意が必要です。
使える制度を知っているかどうかで、家計の負担感は変わります。出産、子育て、住宅取得、医療費の増加など、ライフイベントに応じて対象となる支援がないかを確認し、自分の世帯に合った制度を漏れなく活用していきましょう。
参考資料
- 厚生労働省「出産育児一時金等について」
- 全国健康保険協会「出産手当金」
- 厚生労働省「育児休業等給付について」
- こども家庭庁「もっと子育て応援!児童手当」
- こども家庭庁「児童手当制度の概要」
- こども家庭庁「「第3子以降」のカウント方法について」
- こども家庭庁「児童扶養手当について」
- 厚生労働省「教育訓練給付金」
- 国税庁「No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)」
- 国税庁「住宅ローン控除を受ける方へ」
- 国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
加藤 聖人