個人事業主やフリーランスの人にとって、大きなリスクの一つが「業務中のケガや病気」です。勤務先や社会保険による支えがないため、不安を感じている人も多いでしょう。

しかし、労災保険の「特別加入制度」が拡充され、全業種の個人事業主やフリーランスの人が利用できるようになりました。

本記事では、労災保険の特別加入の対象となる個人事業主やフリーランスについて解説します。制度の対象となる4つの区分を紹介しますので、未加入の個人事業主などは確認しておきましょう。

1. 【労災保険】個人事業主でも加入できる「特別加入制度」

労災保険(労働者災害補償保険)は、業務上または通勤中のケガや病気に対して給付を行う公的保険制度です。

本来は「雇用されて働く労働者(会社員など)」を対象としているため、個人事業主やフリーランスの人(以下、個人事業主等)は原則として労災保険の対象外です。

しかし、個人事業主等であっても業務中の事故リスクがあり、会社員などと同様の保護を必要としていました。

こうした実態を踏まえ、個人事業主等を例外的に保護するために設けられた仕組みが「特別加入制度」です。個人事業主等は任意で加入し、自ら保険料を負担することによって労災保険による補償を受けることができます。

2. 【労災保険】「全業種OK」に拡大!2024年11月より特別加入制度《全業種》適用

特別加入制度は以前から存在していましたが、対象は建設業の一人親方や農業従事者などリスクの高い特定業種に限られていました。しかし近年、フリーランスの急増や働き方の多様化にあわせて、制度は段階的に拡充されてきました。

2024年11月からは、企業等から業務委託を受けて働くフリーランス(特定受託事業者)について、業種・職種を問わずすべての個人事業主等が特別加入できるよう制度が拡大されました。制度拡充により、これまで加入できなかった幅広い職種の人などが、労災保険に加入できるようになりました。

3. 【労災保険】特別加入できる個人事業主等《4つの区分》

特別加入の対象となる個人事業主等は、働き方や業務内容に応じて次の4つに区分されます。

  • 一人親方等(個人の運送業者や建設業者など)
  • 特定作業従事者(危険・有害業務に従事する人)
  • フリーランス(特定受託事業者)
  • 形式的には請負でも実態として労働者である人

「形式的には請負でも実態として労働者である人」については特別加入制度に任意で加入するのではなく、発注元の企業が自社の従業員と同様に労災保険に加入する義務を負わされます。

ここまで、特別加入制度の概要と制度の拡充、制度を利用できる個人事業主等の4つの区分について解説しました。次章では、4つの区分に該当する個人事業主等について詳しく解説します。

3.1 ①一人親方等

一人親方とは、建設業や林業、漁業、個人タクシー、貨物運送業などで、労働者を使用せずに自ら現場作業に従事する個人事業主や家族従事者のことです。大工や左官、電気工事士、タクシードライバーなどが代表的な職種です。

これらの業種は高所作業や重機の使用など業務上の労災リスクが高いのが特徴で、特別加入していなければ業務の請負ができないケースもあります。加入手続きは、個人が直接行うのではなく、「特別加入団体(一人親方団体)」を通じて行うのが一般的です。

3.2 ②特定作業従事者

特定作業従事者とは、林業や漁業、農業、介護作業など法律に定められた危険性・有害性の高い業務に従事する個人事業主のことです。業種ではなく「特定の作業内容」によって対象が決まるのが特徴です。

たとえば、農業で特別加入できるのは、法律で定める「特定農作業」に該当する業務を行っている場合などに限られます。

特定農作業の内容2/4

特別加入者の範囲

厚生労働省:「特別加入制度のしおり(特定作業従事者用)」

3.3 ③フリーランス(特定受託事業者)

2024年11月の制度改正で大幅に拡充されたのが、フリーランス(特定受託事業者)です。「特定受託事業者」とは、企業や個人事業主から業務委託を受けて、物品の製造や情報成果物の作成、役務の提供などを行う個人事業主を指します。

改正により、ITエンジニアやプログラマー、イラストレーター、カメラマン、コンサルタントなど、幅広い職種が特別加入の対象となりました。

加入手続きは、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体を通じて行います。

3.4 ④形式的には請負でも実態として労働者である人

契約書上は「業務委託」や「請負」となっていても、実態として特定の企業から指揮命令を受け、勤務時間や就業場所を管理されながら働いている場合、労災保険上の「労働者」と認定される可能性があります。

労働者性が認められる場合、特別加入ではなく「通常の労災保険」の対象となります。つまり、発注元の企業が労災保険の加入手続きを行い保険料を負担する義務を負うことになります。

4. おわりに

個人事業主等は原則として労災保険の対象外ですが、「特別加入制度」を活用することで、公的な補償を受けることが可能です。2024年11月の制度改正により対象は大きく拡大し、現在ではほぼ全業種の個人事業主等が加入できるようになりました。

安心して仕事ができるように、自身の働き方がどの区分に該当するかを確認したうえで、特別加入を検討してみましょう。

参考資料

西岡 秀泰