春の訪れとともに新生活の準備が進む3月。心機一転、家計や将来設計を見直す方も多いのではないでしょうか。特に働く女性にとって、ライフイベントとキャリアの両立は避けて通れないテーマです。
厚生労働省は令和8年度(2026年度)の年金改定を発表しましたが物価や賃金の変動に合わせ、国民年金・厚生年金ともに増額される見通しです。
働き方が多様化する今、女性のキャリア選択が将来の受給額にどう響くのか。最新データをもとに、女性のライフコース別シミュレーションを解説します。
1. 【女性の年金】厚生年金33年間加入・平均年収「約420万円」、将来の年金はいくら?
働き方が多様化する今、キャリアを継続してきた女性が「将来、自分はどのくらいの年金を受け取れるのか」を知ることは、ライフプランニングの第一歩です。厚生労働省の試算(令和8年度改定案)から、3つのライフコース別の受給額(見通し)を見てみましょう。
1.1 ケース①:女性・厚生年金期間中心(20年以上)
年金月額(見通し)
- 令和7年度:13万2117円
- 令和8年度:13万4640円(前年度比 +2523円)
経歴の前提条件
- 平均厚生年金期間:33.4年
- 平均収入:35.6万円(※賞与含む月額換算。年収換算で約427万円)
令和8年度の内訳
- 基礎年金:7万1881円
- 厚生年金:6万2759円
正社員としてキャリアを積み、平均年収427万円程度で推移したモデルケースでは、令和8年度の受給額は月額13万4640円となる見込みです。物価スライドによる増額はあるものの、住居費や生活費を考えると、この金額をベースに老後資金の不足分をどう準備するかが鍵となります。
1.2 ケース②:女性・国民年金(第1号被保険者)期間中心(20年以上)
《年金月額》令和7年度:6万636円 → 令和8年度:6万1771円
- 平均厚生年金期間:6.5年
- 平均収入:25.1万円
- 内訳(令和8年度):基礎年金 5万3119円/厚生年金 8652円
1.3 ケース③:女性・国民年金(第3号被保険者期間)中心(20年以上)
《年金月額》令和7年度:7万6810円 → 令和8年度:7万8249円
- 平均厚生年金期間:6.7年
- 平均収入:26.3万円
- 内訳(令和8年度):基礎年金 6万9016円/厚生年金 9234円
厚生年金の加入期間や現役時代の平均収入によって、将来の受給額は大きく変動します。物価や賃金の変動に伴う改定により、令和8年度は各ケースとも増額となる見通しですが、自身のライフコースがどのパターンに近いかを知っておくことは、老後資金を計画する上で非常に重要です。
2. 【女性の働き方】未婚女性の3割以上「仕事と育児の両立」を希望。
将来の年金額を左右するのは、現役時代の「就業形態」と「期間」です。内閣府の「令和7年版 男女共同参画白書」によると、現代の女性の意識はかつての「専業主婦モデル」から大きくシフトしています。
- 「両立コース」が最多
未婚女性が理想とするライフコースは、仕事と育児を両立する「両立コース」が34.0%で最多。 - 男性側の意識変化
パートナーに「両立」を期待する男性も39.4%に急増。
2.1 30歳代女性の正規雇用率が上昇
かつては出産・育児期に女性の正規雇用率が下がる「M字カーブ」が顕著でしたが、近年は30代女性の就業継続が進み、その底は浅くなりつつあります。
しかし男性の正規雇用率が約8割であるのに対し、女性は依然としてライフイベントによる離職や非正規転換というキャリア断絶のリスクを抱えています。先述のモデルケースのように月額13.4万円規模の年金を将来受給するためには、こうした「両立コース」をいかに継続し、厚生年金の加入期間に空白を作らないかが極めて重要です。育児期も社会保険に加入し続ける働き方を選択することが、老後の安定した生活を支える確実な鍵となります。
3. 【女性の平均賃金】女性「28.5万円」男性はいくら?賃金のピークは何歳?
将来の厚生年金額を決定する「報酬比例部分」に直結するのが、現役時代の賃金水準です。2026年3月24日に厚生労働省で発表された「令和7年 賃金構造基本統計調査」によると、男女計の平均賃金は34万600円ですが、男性の37万3400円に対し、女性は28万5900円に留まっています。
年齢階級別の賃金カーブを見ると、男性は55〜59歳で44万5600円と大きく上昇するのに対し、女性は45〜49歳と55~59歳の30万5700円がピークとなり、男性に比べて賃金上昇が緩やかになっていることがわかります。
将来的に安定した年金受給を目指すには、単なる就業継続だけでなく、男女の賃金格差を是正し、女性の賃金カーブそのものを底上げしていく社会的な仕組みづくりが不可欠です。
4. 自分にあった「働き方」で納得感のある老後資金の確保を
2026年度の年金増額改定は心強いニュースですが、試算結果を見ると、年金だけで老後をカバーするには現役時代の「継続」と「収入」が想像以上に重要であることが分かります。今の時代、多くの女性が仕事と育児の両立を望んでいますが、そのためにはキャリアを中断させない工夫や、社会保険の適用拡大を賢く利用する視点が欠かせません。
もちろん、賃金格差などの社会的な課題はありますが、まずは自分の将来の数字を知ることが第一歩です。公的年金を「柱」にしつつ、iDeCoやNISAなどの自分年金も組み合わせながら、前向きに将来を設計していきませんか。この春の気づきが、20年、30年後のあなたをきっと支えてくれるはずです。
参考資料
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況」2026年3月24日発表
- 内閣府男女共同参画局「令和7年版男女共同参画白書」
- 内閣府男女共同参画局「女性版骨太の方針2025」
村岸 理美