6月30日に総務省が公表した「労働力調査(基本集計) 2026年(令和8年)5月分結果」によると、就業者数は6890万人に達し、前年同月に比べて52万人の増加となりました。
長く働き続ける人が増える一方で、老後の生活を支える重要な柱の一つである公的年金について、「自分が将来いくらもらえるのか」「他の人はどのくらいもらっているのか」といった疑問を持つ方も少なくないでしょう。
かつて私が銀行の窓口でお客さまのライフプランや資産形成に寄り添ってきた経験からも、まずは制度の基本やご自身の現状を知ることが、将来への安心につながると実感しています。
この記事では、日本の公的年金制度の基本である「国民年金」と「厚生年金」の仕組みから、2026年度の最新の年金額、さらには性別やこれまでの働き方によって受給額がどう変わるのかを、具体的なデータをもとに詳しく解説します。
ご自身のセカンドライフをより豊かにするための第一歩として、年金についての知識を深めてみませんか。
1. 日本の年金制度は「2階建て」構造
日本の公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2種類で構成されており、しばしば「2階建て」構造と表現されます。
1.1 1階部分:国民年金(基礎年金)
まず、制度の土台となる1階部分が「国民年金」です。
国民年金制度は、原則として日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入対象となります。
保険料は全国で一律に定められており、毎年度見直しが行われます。
参考までに、2026年度の月額保険料は1万7920円です。
40年間にわたり保険料をすべて納付した場合、65歳から満額の老齢基礎年金(2026年度で月額7万608円)を受け取ることができ、保険料の未納期間がある場合は、その期間に応じて支給額が減額される仕組みになっています。
1.2 2階部分:厚生年金
次に、2階部分にあたるのが厚生年金制度です。
この制度に加入するのは、会社員や公務員のほか、特定の事業所で働くパートタイマーなど、定められた要件を満たす方々です。
厚生年金は国民年金に上乗せして加入する形になるため、2階建てと呼ばれています。
厚生年金の保険料は国民年金とは異なり、給与の額に応じて決まるため、収入が多いほど保険料も高くなります。
ただし、保険料には上限が設定されているため、一定以上の収入がある方は同額の保険料となります。
将来支給される年金額は、厚生年金への加入期間や納めた保険料の総額によって算出されるため、受け取る金額は人それぞれ異なるのが大きな特徴です。
2. 2026年度における年金の支給額
公的年金の支給額は、物価や賃金の変動を考慮して、毎年見直しが実施されます。
2025年度と比較すると、国民年金(基礎年金)は1.9%、厚生年金(報酬比例部分)は2.0%の引き上げとなります。
2.1 国民年金と厚生年金の支給額例(2026年度)
- 国民年金(老齢基礎年金・満額・1人分):7万608円(+1300円)
- 厚生年金(夫婦2人分):23万7279円(+4495円)
※昭和31年4月1日以前に生まれた方の老齢基礎年金の満額は月額7万408円(前年度比+1300円)です。
※厚生年金の金額は、平均的な収入(平均標準報酬月額45万5000円、賞与含む)の男性が40年間勤務した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金満額)の給付水準を想定しています。
3. 厚生年金・国民年金の受給額に見られる個人差
老齢年金の受給額は、現役時代の年金加入状況によって一人ひとり異なります。
ここでは、厚生年金と国民それぞれの平均月額と、受給額ごとの人数分布を確認し、どの程度の個人差があるのかを見ていきましょう。
3.1 厚生年金の平均月額と受給額のばらつき
厚生労働省年金局の『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、平均年金月額は以下の通りです。
- 全体:15万289円
- 男性:16万9967円
- 女性:11万1413円
※上記の金額には国民年金の額も含まれています。
受給額の分布状況(1万円ごと)
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
データを見ると、月額1万円未満から30万円を超える方まで、受給額が非常に幅広く分布していることがわかります。
3.2 国民年金の平均月額と受給額のばらつき
厚生労働省年金局『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によれば、国民年金の平均月額は以下の通りです。
- 全体:5万9310円
- 男性:6万1595円
- 女性:5万7582円
受給額の分布状況(1万円ごと)
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
国民年金の平均月額は全体で約5万9000円でした。
男性が約6万2000円、女性が約5万8000円と、わずかながら男女差が見られます。
最も人数の多いボリュームゾーンは「6万円以上~7万円未満」であり、多くの方が満額に近い年金を受け取っていることが推測されます。
厚生年金ほどではありませんが、国民年金でも月額1万円未満から7万円以上まで、受給額には個人差があることがわかります。
4. ライフコースで見る厚生年金と国民年金の支給額モデル
年金の受給額は個人差が大きいため、平均額だけでは実態を把握しきれない部分があります。
「自分は将来いくらくらい年金をもらえるのだろう」と考える際の参考として、ここではライフコース別の目安額をご紹介します。
厚生労働省が2026年1月23日に公表した資料「多様なライフコースに応じた年金額の例」を基に見ていきましょう。
この資料では、年金の加入経歴を5つのパターン(男性2つ、女性3つ)に分け、それぞれの年金額の概算が示されています。
4.1 ケース①:男性・主に厚生年金に加入
年金月額:17万6793円
- 平均厚生年金期間:39.8年
- 平均収入:50万9000円(賞与を含む月額換算。以下同様)
- 基礎年金:6万9951円
- 厚生年金:10万6842円
4.2 ケース②:男性・主に国民年金(第1号被保険者)に加入
年金月額:6万3513円
- 平均厚生年金期間:7.6年
- 平均収入:36万4000円
- 基礎年金:4万8896円
- 厚生年金:1万4617円
4.3 ケース③:女性・主に厚生年金に加入
年金月額:13万4640円
- 平均厚生年金期間:33.4年
- 平均収入:35万6000円
- 基礎年金:7万1881円
- 厚生年金:6万2759円
4.4 ケース④:女性・主に国民年金(第1号被保険者)に加入
年金月額:6万1771円
- 平均厚生年金期間:6.5年
- 平均収入:25万1000円
- 基礎年金:5万3119円
- 厚生年金:8652円
4.5 ケース⑤:女性・主に国民年金(第3号被保険者)に加入
年金月額:7万8249円
- 平均厚生年金期間:6.7年
- 平均収入:26万3000円
- 基礎年金:6万9016円
- 厚生年金:9234円
これらのモデルケースから、厚生年金の加入期間の長さや現役時代の平均収入が、将来の年金月額に大きく影響することがわかります。
特に、現役時代に国民年金と厚生年金のどちらを主として加入していたかによって、老後の受給額に大きな差が生まれることが見て取れます。
5. 公的年金のみで生活する高齢者世帯の現状
現在の高齢者世帯のうち、どのくらいの割合が「年金収入のみ」で生活しているのでしょうか。
厚生労働省の『2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況』によると、高齢者世帯(※)の平均的な所得のうち、「公的年金・恩給」が63.5%を占めています。
次いで、仕事による収入である「稼働所得」が25.3%、「財産所得」が4.6%と続きます。
さらに「公的年金・恩給を受給している世帯」に限定して見ると、収入のすべてが「公的年金・恩給」である世帯は43.4%にのぼります。
※高齢者世帯とは、65歳以上の人のみで構成されるか、またはこれに18歳未満の未婚の人が加わった世帯を指します。
5.1 総所得に占める公的年金・恩給の割合ごとの世帯構成
- 総所得に占める公的年金・恩給の割合が100%の世帯:43.4%
- 総所得に占める公的年金・恩給の割合が80~100%未満の世帯:16.4%
- 総所得に占める公的年金・恩給の割合が60~80%未満の世帯:15.2%
- 総所得に占める公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
- 総所得に占める公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
- 総所得に占める公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%
このデータから、半数以上の世帯が公的年金以外の何らかの収入によって生活を補っている実態がうかがえます。
6. まとめ
この記事では、日本の公的年金制度の基本から2026年度の最新情報、そしてライフコース別の受給額モデルまで、幅広く解説しました。
データが示すように、年金の受給額は現役時代の働き方や加入歴によって大きく異なります。
また、高齢者世帯の約半数が年金以外の収入を得て生活しているという実態も、これからのライフプランを考える上で重要な視点となるでしょう。
ご自身の年金記録や将来の受給見込み額を正確に把握することが、豊かなセカンドライフに向けた第一歩です。
日本年金機構の「ねんきんネット」などを活用して、一度ご自身の状況を確認してみてはいかがでしょうか。
将来の生活設計を具体的に考える良い機会になるかもしれません。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
- 厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「II 各種世帯の所得等の状況」
- 総務省「労働力調査(基本集計) 2026年(令和8年)5月分結果」
中本 智恵