2. 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】家計の基本 固定費と変動費の考え方
前章で見たとおり、75歳以上の後期高齢シニア夫婦の家計は、平均で毎月およそ2万円の赤字となっています。
ただし、この赤字は単に「収入不足」によって生じているわけではありません。老後の家計を理解するうえでは、支出を固定費と変動費に分けて捉える視点が不可欠です。
この2つの性質を整理することで、赤字が生じやすい理由や、調整の難しさが見えてきます。
2.1 老後でも避けられない「固定費」の存在
固定費とは、生活スタイルを大きく変えない限り、毎月ほぼ一定額が発生する支出です。後期高齢シニア夫婦の場合、主な固定費には次のようなものがあります。
- 光熱・水道費
- 通信費
- 医療保険料・介護保険料
- 医療費の自己負担分
- 税金などの非消費支出
住居費は持ち家率の高さにより比較的低く抑えられていますが、医療・介護関連の固定費は年齢とともに増加しやすい傾向があります。
一度発生すると削減が難しいこれらの固定費は、家計を支える一方で、収支を硬直化させる要因にもなっています。
2.2 調整できるようで実は限界がある「変動費」
一方、変動費はその月の過ごし方によって増減しやすい支出です。
- 食費
- 教養娯楽費
- 交際費
- 被服費
- 交通費
家計が厳しくなると、まず見直しの対象となるのはこれらの変動費です。しかし、家計調査によれば、75歳以上無職世帯のエンゲル係数は32.2%と高い水準にあります。
これは、生活に不可欠な食費の割合がすでに高く、削減余地が限られていることを示しています。変動費を抑えることは、生活の質の低下につながりやすいのが現実です。
2.3 「赤字が小さい=安心」とは言えない理由
毎月の赤字が2万円程度と聞くと、「それほど大きな問題ではない」と感じるかもしれません。しかし、この赤字は固定費を中心とした支出構造の中で発生しています。
- 固定費は簡単に減らせない
- 変動費はすでに圧縮されている
- 突発的な医療・介護費用が加わると、一気に赤字が拡大する
こうした条件が重なることで、家計は想像以上に脆弱になります。重要なのは赤字の大きさではなく、「どれだけ調整余地が残されているか」という点です。
2.4 支出構造を知ることが、老後の備えにつながる
老後の家計管理では、「いくら使っているか」という金額だけでなく、どの支出が固定化され、どこに柔軟性があるのかを把握することが重要です。
年金収入の大幅な増加が見込みにくい以上、支出の性質を理解したうえで、貯蓄の取り崩しペースや生活水準を検討する必要があります。
固定費と変動費のバランスを意識することは、75歳以降の生活を現実的に見通すうえでの重要な視点といえるでしょう。