次回の年金支給日は4月15日(水)です。新年度を迎え、何かと出費がかさむ時期に向けて、この日を心待ちにしているシニアの方も多いのではないでしょうか。

標準的な夫婦世帯の場合、厚生年金(国民年金を含む)は2人分で月額23万7279円とされています。

しかし、多くの場合、年金からは税金や社会保険料が天引きされるため、実際に受け取れる金額は額面よりも少なくなります。

ゆとりある老後生活を送るためには、この「手取り額」をしっかりと把握したうえで計画を立てることが大切です。実際、高齢者世帯の半数以上が「生活が苦しい」と感じているというデータもあります。

この記事では、年金の額面から天引きされる5つの項目について、具体的に解説していきます。

1. 【2026年度】標準的な夫婦の年金額は月額23万7279円。ただし手取りは…

受け取れる老齢年金の額は、現役時代の年金加入状況によって決まるため、一人ひとり大きく異なります。

また、年金額は毎年度、賃金や物価の変動に応じて見直される仕組みです。2026年度(令和8年度)は、前年度から国民年金(基礎年金)が1.9%、厚生年金が2.0%の引き上げとなりました。

 

国民年金(老齢基礎年金)を満額で受け取る場合、月額7万608円です。

会社員と専業主婦のモデル世帯で、夫が標準的な報酬を得ていた場合、夫婦2人分の厚生年金(国民年金を含む)は23万7279円になります。

1.1 国民年金・厚生年金の具体的な年金額(2026年度の例)

  • 国民年金(老齢基礎年金(満額):1人分):7万608円(+1300円)
  • 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分)(+4495円)

※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金の満額は月額7万408円(対前年度比+1300円)
※厚生年金は「男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)」で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

ただし、これはあくまで額面の金額です。ほとんどの場合、年金から「税金や社会保険料」が天引きされるため、実際の手取り額はこれより少なくなります。

ちなみに、お住まいの地域や扶養の状況によって天引きされる額は異なりますが、一般的に年金の手取り額は「額面の85〜90%程度」になることが多いと言われています。

2026年度の標準的な夫婦の年金額(23万7279円)に当てはめると、実際の手取りは月に20万〜21万3000円程度になる計算です。「意外と引かれるな…」と感じた方も多いのではないでしょうか。

次回の支給日である4月15日(水)に支給される年金からも天引きされるお金について、詳しく見ていきましょう。

2. 年金から天引きされる税金・社会保険料、5つの項目とは?

現役時代、毎月の給与や賞与から税金や社会保険料が天引きされ、額面と手取りの差に驚いた経験がある方も多いでしょう。実は、老後の年金からも同じように天引きが行われるのです。

公的年金から天引きされるお金は、主に以下の5種類です。

  • 所得税と復興特別所得税
  • 住民税と森林環境税
  • 国民健康保険料
  • 後期高齢者医療保険料
  • 介護保険料

※国民健康保険料と後期高齢者医療保険料は、どちらか一方のみが天引きされ、両方が同時に引かれることはありません。また、これらの項目はそれぞれ天引きされるための要件があり、必ずしも全員が対象となるわけではありません。

それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。

2.1 天引き項目1:所得税・復興特別所得税

所得税は、個人の所得に対して課される税金です。年金の支給額から公的年金等控除や基礎控除、配偶者控除などを差し引いた「課税所得」に、所定の税率をかけて計算されます。また、平成25年1月1日から令和19年12月31日までの所得については、復興特別所得税も合わせて徴収されます。

公的年金等に係る雑所得の速算表2/5

公的年金等に係る雑所得の速算表

出所:国税庁「高齢者と税(年金と税)」

例えば、年金から各種控除を差し引いた「課税所得」が194万9000円以下の場合、所得税率は復興特別所得税を含めて5.105%となります。

2.2 天引き項目2:住民税・森林環境税

住民税は、その年の1月1日時点で居住している自治体に納める地方税です。前年の所得に応じて課税される「所得割」と、所得にかかわらず一定額が課税される「均等割」の合計で算出されます。

また、2024年10月からは、地球温暖化対策の財源として、個人住民税と合わせて「森林環境税」も年金から天引きされるようになりました。

2.3 天引き項目3:介護保険料

65歳になると、介護保険の第1号被保険者となり、介護保険料を単独で納めることになります(64歳までは健康保険料に上乗せされています)。保険料の金額は、お住まいの自治体や本人の所得によって異なります。

一例として東京都江戸川区では、所得に応じて19段階の基準が設けられており、該当する段階の保険料を納付する仕組みです。

なお、介護保険料は、要介護認定を受けているかどうかにかかわらず、生涯にわたって支払い続ける必要があります。

2.4 天引き項目4:国民健康保険料(74歳まで)

国民健康保険に加入している年金受給者は、その保険料も年金から天引きされることがあります。

国民健康保険料は「医療分」「支援分」「介護分」の3つで構成され、それぞれ所得に応じて計算される「所得割」と、加入者数に応じて計算される「均等割」を合計して決まります。

前述の通り、65歳以上になると介護保険料は別途納めるため、国民健康保険料から介護分はなくなります。

※所得割の料率や均等割の金額は、お住まいの自治体によって設定が異なります。
※自治体によっては、平等割や資産割などを採用しているところもあります。

2.5 天引き項目5:後期高齢者医療保険料(75歳から)

原則として75歳になると、すべての人が後期高齢者医療制度に加入します。この保険料も、一定の要件を満たすと年金から天引きされます。

保険料は、所得に応じて負担する「所得割」と、加入者全員が等しく負担する「均等割」の合計で算出され、その金額は都道府県ごとに少しずつ異なります。

6月支給の年金までは、2025年度の保険料が天引きされます。参考までに「年金収入195万円の単身世帯」の場合、都道府県別の保険料がどのくらいになるか見てみましょう。

年金収入195万円の人の2025年度の保険料例3/5

年金収入195万円の人の2025年度の保険料例

出所:厚生労働省「後期高齢者医療制度の令和6・7年度の保険料率について」をもとにLIMO編集部作成

  • 全国:5673円
  • 北海道:6325円
  • 青森県:5415円
  • 岩手県:4808円
  • 宮城県:5216円
  • 秋田県:5042円
  • 山形県:5283円
  • 福島県:5056円
  • 茨城県:5358円
  • 栃木県:4991円
  • 群馬県:5567円
  • 埼玉県:5067円
  • 千葉県:5008円
  • 東京都:5355円
  • 神奈川県:5440円
  • 新潟県:4850円
  • 富山県:5033円
  • 石川県:5573円
  • 福井県:5458円
  • 山梨県:6003円
  • 長野県:5156円
  • 岐阜県:5400円
  • 静岡県:5275円
  • 愛知県:6117円
  • 三重県:5475円
  • 滋賀県:5371円
  • 京都府:6180円
  • 大阪府:6495円
  • 兵庫県:6134円
  • 奈良県:5833円
  • 和歌山県:6125円
  • 鳥取県:5892円
  • 島根県:5618円
  • 岡山県:5758円
  • 広島県:5438円
  • 山口県:6408円
  • 徳島県:6033円
  • 香川県:5892円
  • 愛媛県:5719円
  • 高知県:6100円
  • 福岡県:6641円
  • 佐賀県:6250円
  • 長崎県:5792円
  • 熊本県:6259円
  • 大分県:6509円
  • 宮崎県:5675円
  • 鹿児島県:6592円
  • 沖縄県:6410円

同じ年収であっても、住んでいる都道府県によって月々の保険料に約1800円もの差が出ることがわかります。

3. データで見る高齢者の生活実態:半数以上が「生活苦」を実感

厚生労働省が公表した『2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況』によると、高齢者世帯の半数以上が生活について「苦しい」と感じている実態が明らかになりました。

  • 大変苦しい:25.2%
  • やや苦しい:30.6%
  • 普通:40.1%
  • ややゆとりがある:3.6%
  • 大変ゆとりがある:0.6%

「大変苦しい」と「やや苦しい」を合計すると55.8%にのぼり、生活に厳しさを感じている人が「普通」と回答した人を上回る結果となっています。

さらに、同調査では高齢者世帯の収入源についても報告されており、総所得のすべてが「公的年金・恩給」である世帯は43.4%でした。

  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:16.4%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:15.2%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%

このデータは、半数以上の世帯が年金以外の収入で家計を補っている現状も示しています。

4. まとめ:年金の「額面」だけでなく「手取り額」を把握した資金計画を

2026年度の年金額は国民年金が1.9%、厚生年金が2.0%増額されたものの、年金からは税金や社会保険料が天引きされるため、手取り額は額面よりも少なくなります。

年金から天引きされる主な項目は、以下の5つです。

  • 所得税・復興特別所得税
  • 住民税・森林環境税
  • 介護保険料
  • 国民健康保険料
  • 後期高齢者医療保険料

高齢者世帯の半数以上が「生活が苦しい」と回答し、約半数が主な収入源を年金に頼っている現状を考えると、手取り額を意識した計画的な資金管理が不可欠といえるでしょう。

次回の年金支給日である4月15日(水)を前に、ご自身の年金から何がいくら天引きされているのかを確認し、改めて老後の資金計画を見直してみてはいかがでしょうか。

参考資料

太田 彩子