令和7年6月13日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が成立しました。

これにより、2028年4月から「男女差の解消」と「共働き世帯への対応」を主とした、遺族厚生年金の大きな見直しが行われます。

本記事では、遺族厚生年金の見直しの内容を解説するとともに、影響を受ける人・受けない人はどのような人なのかを解説していきます。

1. 遺族厚生年金の概要をおさらい

遺族厚生年金の仕組み1/4

遺族厚生年金の仕組み

出所:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」

2028年4月からの遺族厚生年金の新制度の前に、まずは遺族厚生年金の概要や支給対象者について確認しておきましょう。

遺族厚生年金とは、厚生年金保険料の納付要件などを満たした方が亡くなった際に、遺族に支給される年金のことです。

受給するためには、亡くなった方と受給する方の双方が、所定の要件を満たしている必要があります。

1.1 【亡くなった方の要件】

亡くなった方が、以下のいずれかに該当することが要件となっています。

  • 厚生年金の被保険者期間中に死亡した
  • 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡した
  • 障害厚生年金1級・2級を受給中に死亡した
  • 老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡した
  • 老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡した

1.2 【受給する方の要件と優先順位】

遺族厚生年金を受給する際の優先順位2/4

遺族厚生年金を受給する際の優先順位

出所:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」

遺族厚生年金を受給できるのは、死亡した方に生計を維持されていた遺族ですが、以下のように優先順位が決められています。

  1. 子どものいる配偶者
  2. 子ども(※1)
  3. 子どものいない配偶者(※2)
  4. 父母(※3)
  5. 祖父母(※3)

※1 18歳になった年度の3月31日までにある子ども、または20歳未満で1級・2級の障害を持っている子ども
※2 子のない30歳未満の妻は5年間のみ受給可能。子のない夫は55歳以上であれば受給可能だが、受給開始は60歳から
※3  父母または祖父母は55歳以上であれば受給可能だが、受給開始は60歳から

なお、遺族基礎年金を受給できる場合はあわせて受給できます。

このように、遺族厚生年金は死亡した方と受給する方の双方が要件を満たしている場合に支給されます。

そして、2028年4月から行われる予定の遺族厚生年金の見直しでは、特に影響を受けない方もいれば大きな影響を受ける方もいます。

自分はどちらに該当するのか、次章で確認していきましょう。

2. 遺族厚生年金見直しの影響を受ける人・受けない人

遺族厚生年金の見直し3/4

遺族厚生年金の見直し

出所:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」

2028年4月からの遺族厚生年金の見直しは、「従来の男女差の解消」と「共働き世帯への対応」を主な目的としています。

現在すでに受給中の方や、2028年4月時点で60歳以上になる方などには特に影響はないとされていますが、今後受給する可能性のある現役世代にとっては影響を受ける方が出てきます。

2.1 見直しの影響を受ける人

2028年4月からの遺族厚生年金の見直しの影響を受ける人4/4

2028年4月からの遺族厚生年金の見直しの影響を受ける人

出所:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」

2028年4月からの改正で見直しの対象となるのは、以下の方です。

  • 女性:18歳年度末までの子どもがいない、2028年度末時点で40歳未満の方
  • 男性:18歳年度末までの子どもがいない60歳未満の方

現行制度では、女性は30歳未満で配偶者と死別した場合は5年間の有期給付が受けられ、30歳以上で死別した場合は無期限に給付が受けられます。

一方、男性は55歳未満で配偶者と死別した場合は給付を受けられず、55歳以上で死別した場合でも無期給付を受けられるのは60歳からに据え置かれています。

女性には手厚く、男性にはシビアな内容となっていることがわかるでしょう。

しかし制度改正後は、こういった男女間の差が解消され、男性女性ともに同じ要件での支給となります。

なお、今回の改正により大きな影響を受ける30代女性は推計で年間約250人、60歳未満の男性は推計で年間約1万6000人とされています。

2.2 見直しの影響を受けない人

今回の見直しの影響を受けず、現行制度のまま受給可能なのは、以下の4つの要件のいずれかに該当する方です。

  • すでに遺族厚生年金を受給している方
  • 60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する方
  • 18歳年度末までの子どもを養育している方
  • 2028年度に40歳以上になる女性

すでに遺族厚生年金を受給している方は、現行通り今後も支給されます。

また、有期給付となるのは60歳未満が対象なため、60歳以降に配偶者が亡くなった場合は、これまでと同様に無期給付となります。

18歳年度末までの子ども(一定の障害状態にある場合は20歳未満)を養育している場合は、当該年齢に達するまで受給可能です。子どもが当該年齢を超えた後は5年間の有期給付になります。

ただし、「原則5年の加算によって増額された有期給付」に加え、所得や障害の状態により配慮が必要な場合には引き続き年金を受給できるとされています。

また、今回の改正の影響を受ける女性は、2028年度末時点で40歳未満の方となるため、2028年度に40歳以上になる女性も影響を受けません。

3. まとめ

2028年4月から予定されている遺族厚生年金の見直しにより、これまでの制度から大きく変化します。

特に影響を受けない方もいますが、今後受給する可能性のある現役世代の中には大きな影響を受ける方もいます。

今回の改正内容を十分に理解し、自分が該当するかどうかを早めに確認しておくことが大切です。

参考資料

木内 菜穂子