春が近づき、新年度を意識する時期になりました。この時期は、これからの暮らしや老後のお金について見直すきっかけにもなります。

なかでも気になるのが、公的年金で「月15万円」に届く人がどれくらいいるのかという点です。この記事では、国民年金と厚生年金の違いをおさらいしながら、厚生年金受給者の実態や今後注目したい制度改正について解説します。

1.  4月分から年金は増額へ。国民年金+1.9%・厚生年金+2.0%

4月分から年金額は引き上げられますが、「それで月15万円に届く人は増えるのか」と気になる方もいるでしょう。

  • 国民年金(老齢基礎年金・満額):月額7万608円(1人あたり)
  • 厚生年金(夫婦2人分の標準的な年金額):月額23万7279円

2026年度の老齢基礎年金の満額は月額7万608円です。

国民年金は増額されても、単体でみると月15万円には届かない水準にあります。仮に75歳まで繰下げ受給した場合でも、月13万円程度であり、国民年金だけで老後資金をカバーするのは簡単ではないと考えられます。

これに対し、厚生年金の標準的な年金額は夫婦2人分で月額23万7279円とされています。

ただし、この金額は平均的な収入で40年間会社員として働いた夫と、その間専業主婦だった妻の世帯を想定したモデルケースです。実際には、誰もがこの金額を受け取れるわけではありません。

2. 「月15万円」は多い?少ない?まずは公的年金の基本を確認

2.1 公的年金の仕組み「2階建て構造」

日本の公的年金制度は「2階建て」の仕組みです。

1階部分に当たるのが、20歳以上60歳未満すべての方が加入する国民年金です。
その上に、会社員・公務員の方が加入する厚生年金の、2階建て構造になっています。

また、3階部分として、企業が任意で設立し社員が加入する企業年金や、国民年金の第一号被保険者が任意で加入できる国民年金基金などがあります。

2階建ての年金制度が持つ基本的な特徴を確認していきましょう。

2.2 【1階部分】国民年金

国民年金は、公的年金の「1階部分」にあたる制度です。

  • 対象:日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入します。
  • 保険料:定額となっており、毎年度、物価や賃金の変動を踏まえて見直されます。2026年度は月額1万7920円です。
  • 受給額:原則として、保険料を40年間(480月)納めると、65歳から満額の老齢基礎年金が支給されます。2026年度の満額は月額7万608円です。

また、納付が難しい場合は、所得状況などに応じて免除制度や納付猶予制度を利用できる場合があります。

2.3 【2階部分】厚生年金

厚生年金は、公的年金の「2階部分」にあたる制度です。会社員や公務員などが、国民年金に上乗せして加入します。

  • 対象:主に会社員や公務員などが加入します。
  • 保険料:保険料は収入に応じて決まり、勤務先と本人が半分ずつ負担します。
  • 受給額:65歳から老齢基礎年金に上乗せして老齢厚生年金を受け取れます。金額は一律ではなく、加入期間や現役時代の報酬額によって決まります。

そのため、厚生年金は同じ65歳からの受給でも、働き方や年収によって受給額に差が出やすい制度といえます。

3.  厚生年金受給者のうち「月15万円」に届く人はどれくらい?

厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、厚生年金受給権者の平均受給額は、国民年金を含めて月15万289円です。

年金月額階級別老齢年金受給権者数(男女別)3/4

年金月額階級別老齢年金受給権者数(男女別)

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

ただし、平均額が15万円を超えているからと言って、多くの人がこの水準に達しているとは限りません。
実際の分布を見てみましょう。

  • 5万円未満:23万7835人(1.48%)
  • 5万円以上10万円未満:281万6139人(17.51%)
  • 10万円以上15万円未満:501万6238人(31.18%)
  • 15万円以上20万円未満:498万7811人(31.01%)
  • 20万円以上25万円未満:266万2397人(16.55%)
  • 25万円以上30万円未満:34万5993人(2.15%)
  • 30万円以上:1万9283人(0.12%)

これらを合計すると、月15万円以上を受け取っている人は801万5484人で、全体の49.8%です。つまり、厚生年金受給権者のうち、月15万円に届く人は約半数ということになります。

また、厚生年金の受給額は男女で差が見られるため、女性に限ってみると状況はさらに異なります。

女性の平均年金月額は11万1413円で、全体平均の15万289円を大きく下回っています。さらに、月15万円以上を受け取っている女性は66万4486人で、全体の12.29%にとどまります。

このように、厚生年金全体では「月15万円以上」は約半数に達するものの、男女別でみると大きな差があることがわかります。

4.  今後の制度改正にも注目。働き方や備え方に影響も

今回見てきた年金額や受給水準に加えて、今後の制度改正にも目を向けておきたいところです。

厚生労働省によると、2025年6月に年金制度改正法が成立しており、今後は働き方や老後の備え方に関わる見直しが順次進められる予定です。

4.1 年金制度改正の全体像《主な見直しポイント》

社会保険の加入対象の拡大

短時間労働者の社会保険加入について、賃金要件や企業規模要件の見直しが盛り込まれました。いわゆる「106万円の壁」に関わる制度変更として注目されています。

在職老齢年金の見直し

働きながら年金を受け取る人に関わる在職老齢年金制度も見直し対象です。支給停止調整額は「65万円」へ引き上げられます。(2025年度は月51万円)

遺族年金の見直し

遺族厚生年金については、男女差の解消が図られるほか、子どもが遺族基礎年金を受給しやすくなる見直しも盛り込まれています。

保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ

厚生年金などの保険料や年金額の計算に使う標準報酬月額の上限について、月65万円→75万円へ段階的な引き上げが予定されています。

私的年金制度

iDeCoの加入可能年齢の上限引き上げや、企業型DCの拠出限度額の拡充、企業年金の運用状況の見える化も盛り込まれました。

5. まとめ

4月から年金額は増えるものの、国民年金だけで月15万円に届くのは難しく、厚生年金受給者でも月15万円以上を受け取っている人は全体の49.8%と約半数にとどまります。

平均額だけでなく、実際の受給分布をみることの大切さがわかります。

今後は制度改正も進むため、年金額の増減だけでなく、自分の働き方や加入状況に応じた老後資金の備えを考えておくことが重要です。

参考資料