3. 働きながら年金を受け取るシニアへ|在職老齢年金制度が改正されます

物価上昇などを背景に老後資金への不安が高まるなか、年金を受け取りながら働き続ける人が増えています。

そうした働き方を考えるうえで押さえておきたいのが「在職老齢年金制度」です。

2026年度から、この制度の見直しが行われ、特に60歳代で働く人にとっては影響の大きい改正となります。

在職老齢年金制度の見直しについて5/5

出所:厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」

3.1 在職老齢年金とは?

在職老齢年金とは、60歳以降に老齢厚生年金を受け取りながら、会社員などとして働いている人に適用される仕組みです。

給与や賞与などの「報酬」と年金額の合計が一定の基準額を超えると、その超過分に応じて年金の一部または全部が支給停止となります。

この仕組みは、年金と賃金のバランスを調整するために設けられていますが、近年は「働くと年金が減るため就労を控える人が出る」といった指摘もあり、見直しの議論が続いてきました。

3.2 支給停止の基準額が大幅に引き上げられる

在職老齢年金の「支給停止調整額」(年金が満額支給される収入の目安)は、近年段階的に引き上げられています。

  • 2022年度:47万円
  • 2023年度:48万円
  • 2024年度:50万円
  • 2025年度:51万円
  • 2026年度:65万円 

2026年4月以降、給与と年金の合計が月65万円までであれば老齢厚生年金が全額支給されます。

従来の基準額(2025年度:月51万円)と比べると、その引き上げ幅は大きく、減額の影響を受ける人は大幅に減る見込みです。

「働くと年金が減る」という感覚は、60歳代の就労意欲を実質的に抑制してきた面がありました。

今回の改正はその構造に切り込むものであり、収入を気にして労働時間を抑えてきた人にとっては、働き方を見直す現実的なきっかけになりえます。

再雇用制度を利用している60歳代の会社員であれば、給与と年金を無理なく両立できる場面が増えるでしょう。

一方で、働き方の判断を収入だけで決めるのは早計です。体力や健康状態、家族と過ごす時間、そして手持ちの老後資金がどの程度あるかによって、最適な選択は人それぞれ異なります。