2026年3月26日時点で、来月4月15日は年金支給日を迎えます。老後の生活を支える柱である厚生年金ですが、その受給額には大きな個人差があるのが現状です。平均額や受給の実態を踏まえ、今後の備えについて考えていきます。

1. 【厚生年金】平均15万円台と「月20万円以上」の壁。

厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(基礎年金を含む)の平均受給額は月15万289円となっています。

ただし、この平均値の裏側では男女差が顕著に表れています。

1.1 男女別の平均受給額

  • 全体:15万289円
  • 男性:16万9967円
  • 女性:11万1413円

※いずれも国民年金分を含む

また、受給額の分布をみると次のような割合となっています(全体:約1608万人)。

  • 10万円未満:19.0%
  • 10万円以上:81.0%
  • 15万円以上:49.8%
  • 20万円以上:18.8%
  • 30万円以上:0.12%

半数近くが月15万円以上を受け取っている一方で、20万円を超える人は2割弱にとどまります。こうした状況から、年金のみで生活を賄うのは難しく、iDeCoなどの私的年金や就労継続による収入確保といった対策の重要性が高まっています。

2. 【年金の繰上げ受給】早くもらえるが「一生減額」が続く注意点

本来65歳から受け取る老齢年金を、60〜64歳の間に前倒しで受給する仕組みが「繰上げ受給」です。

繰上げ受給の減額イメージ

【グラフで分かる】繰上げ受給の減額イメージ

出所:日本年金機構「年金の繰上げ受給」をもとにLIMO編集部作成

 

前倒しすることで早期に受給できるメリットはありますが、その代わりとして受給額は生涯にわたって減額されます。

2.1 減額率の計算

減額率 = 0.4% × 繰上げ月数(最大24%)

たとえば60歳から受け取る場合、最大で24%減となります。

※1962年4月1日以前生まれの人は0.5%(最大30%)と、より大きな減額率が適用されます。
※一度選択すると取り消しはできません。

3. 【年金の繰下げ受給】最大84%増も!繰下げ受給で手取りを増やす「待機の壁」

一方、受給開始を66歳以降に遅らせる「繰下げ受給」では、年金額を増やすことが可能です。

繰下げ受給の増額イメージ

【グラフで分かる】繰下げ受給の増額イメージ

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」をもとに筆者作成

 

3.1 増額率の計算

増額率 = 0.7% × 繰下げ月数(最大84%)

75歳まで遅らせた場合、最大84%増となります。ただし、増額には以下のような注意点もあります。

  • 待機期間中は年金収入がないため生活費の確保が必要
  • 受給前に亡くなった場合、増額分は遺族に引き継がれない
  • 税金や社会保険料の負担が増える可能性
  • 未請求分は5年を過ぎると時効で受け取れない

単純に「増えるから得」とは言い切れず、健康状態や家族構成を踏まえた判断が求められます。

4. 【年金の繰上げ・繰下げ受給】「年金を増やす人」はまだ少数派?

厚生年金保険(第1号) (老齢厚生年金)受給権者の繰上げ・繰下げ受給状況の推移

厚生年金保険(第1号) (老齢厚生年金)受給権者の繰上げ・繰下げ受給状況の推移

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

 

老齢厚生年金(特別支給を除く)の受給者における利用状況を見ると、

  • 繰上げ受給:1.2%
  • 繰下げ受給:1.9%

となっており、いずれもまだ少数にとどまっています。

ただし近年は、繰下げを選ぶ人が徐々に増加しており、特に70歳時点では4.2%に達しています。

背景としては、

  • 高齢期の就労拡大
  • 制度改正による繰下げ年齢の上限引き上げ
  • 増額効果への理解の浸透

などが挙げられます。全体としては「早く受け取る」よりも「増やして受け取る」という考え方が広がりつつあります。

5. まとめにかえて

厚生年金の平均受給額は15万円台ですが、実際には個人差が大きく、20万円以上受け取る人は限られています。

繰上げ・繰下げといった制度を活用すれば受給額を調整できますが、それぞれにメリットとリスクが存在します。特に繰下げは増額効果が大きい一方で、生活資金や健康面の不確実性も考慮が必要です。今後は年金だけに依存せず、多角的な老後資金の準備が重要になるでしょう。

参考資料