心地よい春風が吹き抜け、木々の新緑がまぶしい季節となりました。

新年度の慌ただしさも少し落ち着き、ご自身やご家族の健康、そして将来の家計についてゆっくりと見直すのに適した時期ではないでしょうか。

季節の変わり目から初夏に向かうこの時期は、日々の体調管理も大切になります。特に、高齢の方はケガや病気のリスクが大きいため、医療費の負担がかさみやすいことが特徴です。

今回は、75歳以上で加入する「後期高齢者医療制度」の医療費負担割合を決める所得基準や、老後の医療費に備えて現役世代ができる準備についてご紹介します。

後期高齢者医療制度に2割負担が導入された理由も解説しますので、ぜひ本記事を参考に高齢期の医療費負担について理解を深めましょう。

1. 【後期高齢者医療制度】医療費負担割合「1割・2割・3割」課税所得のボーダーラインとは?

75歳以上(一定の障害状態にある方は65歳以上)の方が加入する「後期高齢者医療制度」は、所得に応じて医療費の窓口負担が決まります。

1割・2割・3割の負担区分が設けられていますが、それぞれの区分に該当する所得の基準はいくらなのでしょうか。

ここでは、1割・2割・3割負担となる所得の目安額をご紹介します。

1.1 3割負担になる課税所得と、年収換算での目安

医療費の窓口負担が3割になるのは「現役並み所得者」に区分された場合です。

現役並み所得者とみなされる基準は「課税所得145万円以上」です。

年収に換算すると、単身世帯で年収約383万円以上、複数人の世帯で年収約520万円が目安額となります。

1.2 2割負担になる課税所得と、年収換算での目安

医療費の窓口負担が2割になるのは「一定以上所得のある方」に区分された場合です。

一定以上所得があるとみなされる基準は「課税所得28万円以上」です。

年収に換算すると、単身世帯で年収約200万円以上、複数人の世帯で年収約320万円以上が目安額となります。

1.3 1割負担になる課税所得

医療費の窓口負担が1割になるのは「一般所得者」に区分された場合です。

上記の3割・2割の基準に該当しない(課税所得が28万円未満)場合、一般所得者とみなされます。

2. 「2割負担」が導入された理由とは?

2/2

聴診器 豚の貯金箱 医療費のイメージ

Doidam 10/shutterstock.com

後期高齢者医療制度では1割・2割・3割の区分が設けられていますが、以前は1割・3割の区分しかありませんでした。

2022年10月1日から2割の区分が設けられましたが、なぜ2割負担が導入されたのでしょうか。

ここでは、2割負担が導入された背景や今後の可能性について解説します。

2.1 現役世代の負担軽減が目的

後期高齢者の医療費は、窓口で支払う自己負担分を除き、残りを公費と現役世代の保険料でまかなう仕組みとなっています。

しかし、高齢化に伴って医療費全体は増加を続けており、それを支える現役世代の負担は年々重くなっていました。

こうした状況を踏まえ、一定以上の所得がある後期高齢者については医療費を2割負担してもらうこととなりました。

現役世代の負担を軽減し、制度そのものを維持させることが目的で2割負担が導入されたということです。

2.2 今後は金融資産による負担増の可能性も

現役世代の負担軽減や制度の維持を目的に2割負担が導入されましたが、今後さらなる見直しが入る可能性も考えられます。

近年では、株式や債券などの金融商品から得られる所得を、医療費の負担割合を決める基準所得に反映させることが議論されています。

現在の制度では、金融所得は確定申告を行わなければ課税所得に含まれないため、窓口負担を決める基準所得にも含まれていません。

年金やその他の所得が少なく、代わりに株式や債券等で多くの所得を得ている場合、医療費を1割・2割負担するだけで済むというケースがあるのです。

こうした不公平を是正するため、金融所得を含めて医療費の負担割合を決定すべきであるという方向の議論が行われています。

今後は金融資産が多いことで医療費負担が大きくなる可能性もあるため、議論の行方にも注目しておくと良いでしょう。

3. 老後の医療費に向けて現役世代ができる備えとは

老後の医療費負担に向け、現役世代のうちから以下の3点を押さえておくと良いでしょう。

  • 将来の年金見込額を把握しておく
  • 年間医療費を想定しておく
  • 民間の医療保険の内容を見直す

それぞれ解説していきます。

3.1 将来の年金見込額を把握しておく

まず、老後の医療費が何割負担になるのかを把握するためにも、年金の見込額を知っておくことが大切です。

前述の通り、後期高齢者医療制度の窓口負担は年金を含めた所得で決まるため、年金額を把握することで医療費負担の割合も見通しを立てることができます。

年金の見込額は、定期的に郵送される「ねんきん定期便」やねんきんネットから確認できます。

老後の資金計画を設計する第一歩として、将来受給できる年金の見込額を把握するところから始めてみましょう。

3.2 年間医療費を想定しておく

老後の資金計画を立てる際、生活費をプランに組み込むことは多いですが、医療費は想定されていないケースがあります。

老後にかかるであろう医療費をあらかじめ組み込んで、将来の資金計画を立てることが大切です。

例えば、年間20万円ほどの予算を「医療費」という枠で確保しておけば、ケガや病気で医療費が発生しても対応できます。

他にも緊急入院や手術に備えた医療費を予算として多めに確保しておけば、突発的な医療費が発生してもカバーできます。

「医療費は必ず発生するもの」という前提で資金計画を立てておくと、老後の医療費発生にも問題なく対応できるでしょう。

3.3 民間の医療保険の内容を見直す

民間の医療保険に加入している場合、保障内容を見直すことも重要です。

保障内容に過不足がないかを定期的にチェックし、最適な保険プランを設計しましょう。

日本は公的医療保険制度が充実しているため、過度に民間の医療保険で保障を備える必要性は高くありません。

保障を手厚くするとその分保険料が高くなるので、無駄な保障を外して保険料負担を軽減させる工夫が大切です。

一方、保障が手薄な状態でケガや病気になると、医療費の自己負担が重くなる可能性があります。

普段の保険料を削減することばかり考えていると、万が一の備えとして医療保険が機能しなくなってしまいます。

定期的に医療保険の内容を見直し、過不足のない最適な保障内容を備えておきましょう。

4. 高齢期の医療費について見通しを立てておきましょう

後期高齢者医療制度は窓口負担が原則1割になる制度ですが、所得によっては2割・3割の負担となります。

現役世代の負担軽減や制度維持の目的から今後も本人の負担が増加する可能性は十分にあるため、計画的に医療費を準備しておくことが大切です。

老後の医療費に向けた備えには「年金見込額を把握しておく」「年間医療費を想定しておく」「民間医療保険の内容を見直す」といった方法があります。

現役世代のうちから高齢期の医療費について見通しを立て、しっかりと準備しておきましょう。

参考資料