2026年3月に入り、日差しに春の訪れを感じる日が増えてきました。
桜の開花予報が気になるこの季節は、年金を受け取っている方々にとって、一つの区切りとなる時期でもあります。
まもなく訪れる4月の支給日は「令和7年度(2025年度)」における最後の年金支給となり、新年度の家計を考える上で重要なタイミングです。
老後の生活を支える重要な柱である年金について、改めて関心を寄せている方も少なくないでしょう。
来月4月15日は2カ月に1度の年金支給日です。
今回は、2月分と3月分の厚生年金+国民年金を「40万円(月額20万円)以上」もらえる人の割合を解説します。
さらに、受給開始時期を早める「繰上げ受給」と、遅らせる「繰下げ受給」という選択が、将来の生活にどのような影響を与えるのか、それぞれのメリットとデメリットを詳しく見ていきます。
1. 厚生年金+国民年金「月20万円」は少数派?2カ月分「40万円以上の人」は何%?
厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(国民年金分を含む)の平均受給月額は15万289円となっています。
しかし、この金額はあくまで平均であり、男女間での受給額には大きな隔たりがあるほか、受給額の分布にも特徴が見られます。
1.1 【男女別】「厚生年金+国民年金」の平均受給額にはどれくらいの差がある?
〈全体〉平均年金月額:15万289円
〈男性〉平均年金月額:16万9967円
〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金の金額を含みます。
1.2 受給額別の構成割合
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を基にした、全体の受給権者1608万5696人における受給額の割合は以下の通りです。
- 10万円未満の割合:19.0%
- 10万円以上の割合:81.0%
- 15万円以上の割合:49.8%
- 20万円以上の割合:18.8%
- 30万円以上の割合:0.12%
受給額の分布状況を見ると、月額15万円以上を受け取っている人は全体の約半数を占めていますが、月額20万円(2カ月ごとの支給額で40万円)という水準に達している人は、全体の約18.8%と2割に満たないのが実情です。
このことから、老後の生活資金を公的年金のみに依存するのではなく、iDeCo(個人型確定拠出年金)などを活用した資産形成や、より長く働き続けるためのキャリアプランニングといった、自助努力による備えの重要性がうかがえます。
2. 年金の繰上げ受給とは?早く受け取るメリットと「生涯減額」のデメリット
繰上げ受給の減額イメージ

「繰上げ受給」とは、原則として65歳から支給が開始される老齢年金を、60歳から64歳の間に前倒しで受け取ることができる制度です。
早期に年金を受け取れるという利点がある一方で、一度選択すると生涯にわたって減額された年金を受け取り続けることになるため、慎重な判断が求められます。
減額率の計算方法
年金の減額率は、繰上げを請求した月数に応じて、以下の式で計算されます。
- 減額率(最大24%) = 0.4% × 繰上げ請求した月数
例えば、最も早い60歳0カ月で請求した場合、年金額は24%減額されます。
※昭和37年4月1日以前に生まれた方は、減額率が「0.5%(最大30%)」となり、現行制度よりも高めに設定されています。
※繰上げ受給の請求は一度行うと取り消すことができず、減額された年金額が生涯続く点に注意が必要です。
3. 年金の繰下げ受給で増額する際の注意点|税金や社会保険料の負担増も
「繰下げ受給」は、年金の受給開始を66歳以降に遅らせることで、受け取る年金額を増やすことができる制度です。
1カ月遅らせるごとに受給額が増え、その増額率の高さが大きな特徴です。
増額率の計算方法
増額率は、65歳に達した月(誕生日の前日を含む月)から、実際に受給を開始するまでの月数に基づいて決定されます。
- 増額率(最大84%) = 0.7% × 繰下げた月数
最長となる75歳まで受給開始を遅らせた場合、年金額は最大で84%増額されます。
※昭和27年4月1日以前に生まれた方は、繰下げの上限年齢が70歳までとなるため、最大増額率は42%です。
※この制度を利用する際は、年金の受給を待つ間の生活費をどのように確保するかが重要なポイントになります。
繰下げ待機期間中は、加給年金などが支給されない点にも注意が必要です。
また、万が一、年金を受け取る前に亡くなってしまった場合、遺族が増額された年金を代わりに受け取ることはできません。
そのため、自身の健康状態や家族の状況などを総合的に考慮した上で、慎重に判断することが求められます。
特に注意したいのは、待機中に亡くなった場合、遺族が未支給分の年金を請求しても「5年以上前」の分は時効によって受け取れなくなるリスクです。
これにより、本来受け取れるはずだった年金の一部が失われる可能性があります。
さらに、待機期間中に他の年金の受給権が発生した場合は、その時点で増額率が固定されます。
加えて、年金の受給額が増えることに伴い、所得税や住民税、社会保険料の負担も増加する可能性があるため、額面通りの増額がそのまま手取り額の増加にはつながらないという点も理解しておく必要があります。
4. 年金の繰上げ・繰下げ受給の利用状況は?最新データから見る選択のトレンド
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢厚生年金(特別支給を除く)の受給権者における繰上げ・繰下げの利用状況には、近年変化が見られます。
令和6年度末時点での利用率は、繰上げ受給が1.2%、繰下げ受給が1.9%となり、受給開始を遅らせる繰下げを選択する人が、早める繰上げを選択する人を上回っています。
繰上げ受給の利用率は、令和2年度の0.5%から少しずつ上昇しているものの、依然として低い水準で推移しています。
その一方で、繰下げ受給の利用率は同期間に1.0%から1.9%へと着実に増加しており、年金の受給開始を遅らせて増額を図るという選択肢が広がりつつあることがわかります。
4.1 70歳時点での繰下げ受給の選択状況
70歳時点での利用状況に注目すると、繰下げ受給を選択した人の割合は令和6年度で4.2%に達しており、上昇傾向がより顕著になっています。
この背景には、健康で長く働き続ける高齢者が増加していることや、繰下げ受給による年金額の増額効果が広く認知されてきたことがあると考えられます。
また、制度改正によって繰下げが可能な年齢の上限が引き上げられたことも、この選択を後押しする一因と見られます。
このように、繰上げ受給の利用が限定的であるのに対し、老後の生活設計において「早く受け取る」ことよりも「増やして受け取る」ことを重視する傾向が強まっていると言えそうです。
今後は、個々の就労状況や家計の事情などを踏まえながら、自身のライフプランに最も適した受給開始時期を選択することが、ますます重要になるでしょう。
5. 自身のライフプランに合わせた年金受給計画を
今回は、厚生労働省の最新データに基づき、厚生年金の受給実態や、受給開始時期の選択肢である繰上げ・繰下げ制度について解説しました。
年金だけで「月額20万円」を確保できる人が受給者全体の約2割にとどまるという現実は、多くの人にとって、自身の老後資金計画を考えるきっかけになるかもしれません。
重要なのは、単純に「早くもらうか」「遅らせるか」の二者択一で考えるのではなく、ご自身の健康状態や資産状況、そして年金を増額した場合の税金や社会保険料を差し引いた「手取り額」がどうなるのかを冷静にシミュレーションすることです。
「長生きリスク」への備えとして繰下げ受給を検討する際には、税負担の増加や、万が一の際の遺族への保障なども含めて総合的に判断することが大切です。
豊かなセカンドライフを実現するための第一歩は、こうした公的年金制度のメリットとデメリット、いわば“光と影”の部分を正しく理解することから始まります。
この機会に、税制優遇制度のiDeCoの活用や働き方の見直しなど、ご自身に合った「備え」を具体的に検討してみてはいかがでしょうか。
※当記事は再編集記事です。




