元・機関投資家で専門家の泉田良輔氏が、YouTubeチャンネル『イズミダイズム』の最新動画にて、「コーエーテクモホールディングス(以下、コーエーテクモ)」の決算について解説しました。

ゲーム好きのエンジニアからのリクエストで取り上げられたという同社ですが、泉田氏によれば「株式投資の観点から見ると非常にユニークで特徴的な会社」とのこと。

動画内で泉田氏がどのような理論を展開し、同社を分析していたのか、初心者にもわかりやすくご紹介します。

1. 本業の利益を上回る「投資利益」の謎

泉田氏がまず動画内で指摘したのは、コーエーテクモの損益計算書(PL)に見られる数字の大きなギャップです。

直近の令和8年3月期第3四半期累計の数字を見ると、本業の儲けを示す「営業利益」が145億円であるのに対し、「経常利益」は310億円に達しています。

この要因について、泉田氏は「事業で出ない利益が大きいのがこの会社の特徴」と解説します。

具体的には、営業利益と経常利益の間にある「営業外収益」として、投資有価証券の売却益が約109億円、デリバティブ評価益が約55億円も計上されており、合計で275億円の営業外収益が発生していると紹介しています

【動画で解説】コーエーテクモ、ほぼ無借金経営。なぜ投資家から敬遠?

コーエーテクモの決算短信を解説する泉田氏1/3

コーエーテクモの決算短信を解説する泉田氏

出所:各資料をもとにイズミダイズム作成

2. 機関投資家からはなぜ敬遠される傾向にあるのか?

このように現金が潤沢で運用もうまくいっている優良企業であれば、投資家から人気を集めそうに思えますが、泉田氏の解説は意外なものでした。

「むしろ機関投資家からは敬遠される存在になり得る」と言うのです。

動画内では、その理由として以下の点が挙げられていました。

2.1 ファンドマネージャーの視点とのズレ

株式運用を行うファンドマネージャーは「その会社の事業の成長」に投資をしたいと考えています。

そのため、企業側が独自に巨額の資産運用を行っていると、「自分たちの資金を他人に運用預けしているように見えてしまい、顧客(年金基金など)に説明がしづらい」とのことです。

2.2 資産効率(ROE)の問題

多額の現金を溜め込んでいると、投資した株主資本に対する利益の割合(ROE)が低下しがちです。

投資家は「事業に投資するか、自社株買いや配当として株主に還元してほしい」と考えますが、コーエーテクモはその資金を自社での投資運用に回しているため、機関投資家の期待とは方向性が異なると見られがちだと指摘しています。

2.3 アクティビスト(物言う株主)の標的リスク

本業と関係ない資産を多く持つ企業は、「資産を売却して本業に回すか、株主還元しろ」とアクティビストからプレッシャーをかけられるケースが、近年増えていることにも触れていました。

3. 半期報告書から読み解く「堅実なリスクコントロール」

では、コーエーテクモは具体的にどのような運用を行っているのでしょうか。泉田氏は第17期中半期報告書のデータを引き合いに出し、同社の投資スタンスを読み解いています。

コーエーテクモの決算短信を解説する泉田氏2/3

コーエーテクモの決算短信を解説する泉田氏

出所:各資料をもとにイズミダイズム作成

【動画で解説】コーエーテクモ、ほぼ無借金経営。なぜ投資家から敬遠?

資料によると、株式の取得原価が約536億円なのに対し、計上額は約1096億円(差額約560億円のプラス)となっており、投資額が約倍に増えていることがわかります。

一方で、社債の取得原価は約543億円に対し、計上額は約390億円(差額約152億円のマイナス)です。

泉田氏が注目したのは、この「取得原価」のバランスです。「株が約536億円、社債が約543億円と、ほぼ半々にしている」 ことから、「きちんとリスクコントロールを行っている」と分析しています。

結果的に株式市場の好調がプラスに働き、全体として大きなリターンを生んでいると解説しました。

4. まとめ:安定を取るか、効率を取るか

最後に泉田氏は、コーエーテクモの経営方針について、ゲーム業界特有の事情も踏まえて理解を示しています。

ゲーム業界は流行り廃りが激しく「一寸先は闇」の世界です。

「任天堂なども同様だが、プラットフォームの移行などで数年間勝てなくなるリスクに備え、現金を潤沢に持っておくことで会社の生存確率を高める経営哲学があるのではないか」と泉田氏は考察しています。

機関投資家が好む「資産効率を極限まで高める(ROEを高める)ピーキーな経営」は、リターンが大きい反面、業績がへこむ際のリスクも高くなります。

一方で、コーエーテクモのように「低いROEだとしても現金を豊富に持ち、堅実な資産運用で継続性を担保する経営」を好む投資家も存在します。

『イズミダイズム』の解説を通じて、コーエーテクモが「本業で稼いだ利益をしっかり運用するユニークな企業」であることが浮き彫りになりました。

泉田氏は動画の結びとして「自分がどういうリターンを求めるか、どういう株が好きかで、この企業に投資するかどうかの判断が分かれる銘柄だ」と総括しています。

【動画で解説】コーエーテクモ、ほぼ無借金経営。なぜ投資家から敬遠?

5. イズミダイズムとは

イズミダイズムは、元機関投資家である泉田良輔の個人YouTubeチャンネルです。プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。

新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。

教科書的な知識だけでなく、プロの実体験に基づいた分析を通じて、ビジネスパーソンや個人投資家に役立てていただけるコンテンツをお届けしています。

元機関投資家 泉田良輔のシテンで語る金融と経済の今3/3

元機関投資家 泉田良輔のシテンで語る金融と経済の今

出所:Youtubeチャンネル「イズミダイズム」

参考資料