たとえば、40歳から60歳まで毎月給与の中から一定の金額を積み立てていたとしましょう。60歳に定年退職を迎え、つみたて投資を終了するものとします。

その際に、買付平均株価(簿価)が時価を上回っていれば資産形成はひとまずは成功したといえるでしょう。一方で、簿価が時価を下回っていれば、資産形成の結果は含み損ということになり、残念な結果だったといえるでしょう。

リーマンショック級とは言わないまでも、現役最後の日に株式市場が大暴落をしたとすればどうでしょうか。そこまでの簿価が相当程度低い水準で、暴落後の株価よりもさらに低い簿価であれば問題ないですが、株式市場の株価が暴落することで簿価を下回るような時価となった際には、含み損となってしまいます。

現役時代は「また安く買いつけることができる」という安心感はあるでしょうが、定年後には新規の資金拠出がないとすれば、ここまで見てきたドルコスト平均法の良さの一部を活用できないということになります。

もっとも、新規の資金拠出は終わったとしても、保有している資産の価格が上昇し、簿価を上回れば含み益となるので、その後の状況次第ということになりますが、老後を含み益の状況でスタートするのか、または含み損でスタートするのかは、心理的に大きく異なるといえるでしょう。

こうみると、ドルコスト平均法を上手に活用するためには、時価が簿価を上回るまで続けるという姿勢が必要です。

しかし、もっとも気を付けておくべきは、ドルコスト平均法を実践する投資対象に何を選ぶかという問題です。

長期に資産価格が上がる資産を見出せるのか

ドルコスト平均法という方法論に議論は集中しやすいですが、もっとも議論すべきは、「何に投資をするか」です。