物価上昇の波が続くなか、私たちの家計と将来設計に改めて視線が向けられています。

2026年2月の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合指数は前年同月比1.6%上昇。日々の買い物負担が増しているだけでなく、手元にある資金の実質的な価値も着実に目減りしている状況です。

  • 総合指数は2020年を100として112.2…前月比(季節調整値)は0.2%の下落
  • 生鮮食品を除く総合指数は111.4…前月比(季節調整値)は0.3%の下落
  • 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は111.5…前月比(季節調整値)は0.1%の上昇

物価上昇が常態化する今、かつての「老後2000万円問題」は、さらなる上積みを視野に入れる段階に差しかかっているといえそうです。

特に、将来を一人で支える「おひとりさま」にとって、資産形成は避けて通れない重要課題の一つ。本記事では最新統計をもとに、おひとりさまの貯蓄実態を年代別にひも解きます。

一部の富裕層によって押し上げられがちな「平均値」ではなく、より実態に近い「中央値」に焦点を当て、今向き合うべき現実的な立ち位置を確認していきましょう。

1. 【年代別データ】おひとりさまの貯蓄額、「平均値と中央値」の残酷なギャップ

まずは、最新のおひとりさまの貯蓄状況について、J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとに確認していきます。

ここでいう金融資産とは、預貯金や生命保険、株式、投資信託などを指し、日常的な支払いに備えた口座残高などは含まれていません。

1.1 【一覧表】30歳代・おひとりさまの貯蓄額(平均・中央値)

30歳代・単身世帯の金融資産保有額(金融資産非保有世帯含む)2/6

30歳代・単身世帯の金融資産保有額(金融資産非保有世帯含む)

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

 

  • 金融資産非保有:32.3%
  • 100万円未満:14.2%
  • 100~200万円未満:14.2%
  • 200~300万円未満:4.9%
  • 300~400万円未満:4.3%
  • 400~500万円未満:2.8%
  • 500~700万円未満:5.5%
  • 700~1000万円未満:3.1%
  • 1000~1500万円未満:5.5%
  • 1500~2000万円未満:4.3%
  • 2000~3000万円未満:2.5%
  • 3000万円以上:3.4%
  • 無回答:3.1%

◆平均と中央値

  • 平均:501万円
  • 中央値:100万円

30歳代の貯蓄額は、平均501万円に対して中央値は100万円と、約5倍の差があります。

金融資産を保有していない世帯(32.3%)と100万円未満(14.2%)を合わせると、およそ半数が「貯蓄100万円以下」にとどまります。一方で、3000万円以上を保有する層(3.4%)も存在し、二極化の傾向がうかがえます。

1.2 【一覧表】40歳代・おひとりさまの貯蓄額(平均・中央値)

40歳代・単身世帯の金融資産保有額(金融資産非保有世帯含む)3/6

40歳代・単身世帯の金融資産保有額(金融資産非保有世帯含む)

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

  • 金融資産非保有:32.1%
  • 100万円未満:15.1%
  • 100~200万円未満:7.1%
  • 200~300万円未満:5.9%
  • 300~400万円未満:4.3%
  • 400~500万円未満:2.2%
  • 500~700万円未満:6.2%
  • 700~1000万円未満:4.6%
  • 1000~1500万円未満:6.2%
  • 1500~2000万円未満:1.2%
  • 2000~3000万円未満:2.8%
  • 3000万円以上:9.9%
  • 無回答:2.5%

◆平均と中央値

  • 平均:859万円
  • 中央値:100万円

40歳代の貯蓄額は平均859万円ですが、中央値は30歳代と同じく100万円にとどまっています。平均との差は8倍以上に広がり、二極化がさらに進んでいる状況です。

金融資産非保有(32.1%)と100万円未満(15.1%)を合わせると47.2%に達する一方で、3000万円以上を保有する層は9.9%と約1割を占めています。

1.3 【一覧表】50歳代・おひとりさまの貯蓄額(平均・中央値)

50歳代・単身世帯の金融資産保有額(金融資産非保有世帯含む)4/6

50歳代・二人以上世帯の金融資産保有額(金融資産非保有世帯含む)

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

  • 金融資産非保有:35.2%
  • 100万円未満:10.1%
  • 100~200万円未満:7.4%
  • 200~300万円未満:4.6%
  • 300~400万円未満:2.7%
  • 400~500万円未満:3.3%
  • 500~700万円未満:4.9%
  • 700~1000万円未満:4.6%
  • 1000~1500万円未満:6.0%
  • 1500~2000万円未満:3.3%
  • 2000~3000万円未満:5.5%
  • 3000万円以上:10.4%
  • 無回答:1.9%

◆平均と中央値

  • 平均:999万円
  • 中央値:120万円

50歳代の貯蓄額は平均999万円、中央値は120万円です。40歳代と比べると平均は約140万円増えていますが、中央値は20万円の増加にとどまっています。

金融資産非保有(35.2%)と100万円未満(10.1%)を合わせると依然として45%超を占める一方、3000万円以上を保有する層も10.4%存在しています。

1.4 【一覧表】60歳代・おひとりさまの貯蓄額(平均・中央値)

60歳代・単身世帯の金融資産保有額(金融資産非保有世帯含む)5/6

60歳代・単身世帯の金融資産保有額(金融資産非保有世帯含む)

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

  • 金融資産非保有:30.4%
  • 100万円未満:9.1%
  • 100~200万円未満:4.3%
  • 200~300万円未満:2.4%
  • 300~400万円未満:4.5%
  • 400~500万円未満:3.1%
  • 500~700万円未満:6.0%
  • 700~1000万円未満:4.8%
  • 1000~1500万円未満:8.1%
  • 1500~2000万円未満:4.1%
  • 2000~3000万円未満:5.5%
  • 3000万円以上:15.6%
  • 無回答:2.2%

◆平均と中央値

  • 平均:1364万円
  • 中央値:300万円

60歳代は平均1364万円、中央値は300万円まで上昇しました。退職金や相続による資産増加が背景にあると考えられますが、平均との開きは依然として4倍以上あります。3000万円以上を保有する層(15.6%)が全体の平均を押し上げている構図です。

一方で、金融資産非保有(30.4%)と100万円未満(9.1%)を合わせると約4割にのぼり、老後期に入っても二極化は続いています。

資産を「取り崩す」段階に入りつつあるなかで、いかに資産寿命を延ばしていくかが問われる世代といえるでしょう。

2. 貯金100万円で止まる人、3000万円超えの人…二極化する「単身老後」の現実

おひとりさま世帯の貯蓄データを読み解くと、平均値と中央値の差から見える現実、そして単身高齢者の増加という社会の変化が浮かび上がります。

これからの老後準備は、数字の表面だけでなく、その中身をどう捉えるかが重要になります。

2.1 貯蓄額は増えているように見えるが…中央値が示す実像

平均値で見ると、年齢が上がるにつれて貯蓄額は増加しているように見えます。とくに50歳代から60歳代にかけて大きく伸びている背景には、退職金の受け取りがあると考えられます。

しかし中央値に注目すると印象は大きく変わります。60歳代に入るまで中央値は100万円台にとどまり、平均値との差が非常に大きいことが分かります。これは一部の高額資産層が平均値を押し上げている一方で、多くの人はそれほど潤沢な貯蓄を持っていないことを示しています。

中央値も50歳代から60歳代で上昇していますが、その伸びには退職金の影響が色濃く反映されています。老後資金を考えるうえでは、現役期の資産形成に加え、退職金をどのように受け取り、どう使うかまで含めた設計が欠かせません。

2.2 単身高齢者は増加傾向に――これから求められる備え

こうした資産状況を考えるうえで見逃せないのが、「おひとりさま」の増加です。内閣府「令和7年版高齢社会白書」によると、65歳以上で一人暮らしをしている人の割合は年々上昇しており、高齢期を単身で過ごす人は今後も増えると見込まれています。

65歳以上の一人暮らしの者の動向6/6

65歳以上の一人暮らしの者の動向

出所:内閣府「令和7年版高齢社会白書(全体版)」

単身世帯では、配偶者の収入や年金に頼ることはできず、生活基盤は自らの資産に大きく依存します。医療や介護といった将来リスクも一人で備える必要があります。

そのため、積立投資や私的年金の活用、就労継続による収入確保、生活費の見直しなど、複数の手段を組み合わせた準備が重要になります。平均値ではなく中央値を意識し、自身の立ち位置を把握したうえで、早い段階から現実的な備えを進めることが、これからの老後を支える鍵となるでしょう。

3. 「平均以下かも…」と焦る前に!今日から始められる老後資金づくりの現実的ステップ

物価上昇や少子高齢化が進むなか、老後に備えて一定の資産を確保したいと考える人は少なくありません。ただ、中央値を見る限り、十分な資産形成は容易ではないのが現実です。

そのため、まずは無理のない金額から毎月積み立てを続けることが、現実的な第一歩となります。

ある程度の余裕が生まれた段階で、資産の一部を運用に振り向けるという選択肢もあるでしょう。

資産運用にはリスクが伴い、その受け止め方は人それぞれです。一方で、資金を効率的に増やしたり、「自分が働くだけでなく、お金にも働いてもらう」という発想を取り入れられる点は利点といえます。

一般的に、年齢を重ねるほど大きなリスクは取りにくくなります。また、高齢になってから初めて運用を始めることに不安を感じる場合もあります。

そのため、運用に関心がある場合は、現役世代のうちに少額から始めて経験を積んでおくことが、将来の安心につながるでしょう。

いずれにしても、事前の情報収集やシミュレーションは欠かせません。この機会に、退職金や老後資金について改めて考えてみてはいかがでしょうか。

参考資料