4. 投資家の不安②:OpenAIへの「依存度」が高すぎる
もう一つの懸念材料として泉田氏が指摘したのが、マイクロソフトの法人ビジネスにおける「受注残(RPO)」の内訳です。
受注残とは、将来の売上になることが約束されている契約金額のことです。今回の発表では、法人向け受注残の成長率が前年比110%増と凄まじい数字が出ていました。
しかし、この内訳をよく見ると、驚くべき事実が判明します。
なんと、法人向け受注残の約45%が、OpenAIからのコミットメント(契約)によるものだったのです。
泉田氏はこの構造を「マイクロソフトの株価は、OpenAIの将来性や競争優位性に依存している」と指摘します。
Googleが自社開発のAIモデルを自社サービスに組み込んで「内部で完結」しているのに対し、マイクロソフトは外部企業であるOpenAIに頼る部分が大きいのです。
もし今後、OpenAIの経営が傾いたり、GoogleのAI(Geminiなど)に競争力で負けるようなことがあれば、マイクロソフトの将来の売上も大きく毀損するリスクがあります。
この「他社依存のリスク」が、投資家の警戒感を強めた要因の一つです。
【動画で解説】マイクロソフト、純利益60%増という驚異的な伸び
5. 元機関投資家が警告する「ドットコムバブル」との類似点
動画の後半で泉田氏は、2000年当時の「ドットコムバブル崩壊」での経験を引き合いに出し、現在のAIブームへの警鐘を鳴らしました。
2000年当時も、「インターネットはこれから伸びる」という期待から、光ファイバーやルーターなどのインフラ企業、そしてEコマース企業の株価が実態以上に高騰していました。
しかし、「思ったほど成長しない」「利益が出ない」と投資家が気づいた瞬間、相場は崩壊したのです。
泉田氏は現在の状況について、以下のように語っています。
「株は『期待』でできています。AIへの投資が実を結び、本当に収益がついてくればハッピーストーリーになります。しかし、『AIと言ってもそんなに売上・利益を作れないじゃん』となった時、AIはバブルだったと気づき、投げ売りが始まります」
マイクロソフトの株価下落は、AI投資に対する市場の期待値が「現実的な回収可能性」をシビアに見積もり始めたサインなのかもしれません。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日