年金を受給しながら暮らしている方にとって、昨今の物価上昇は家計に大きな影響をおよぼしているのではないでしょうか。
中には、公的年金だけでは日々の生活費に不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
実は、年金の収入額や所得が一定の基準に満たない方を対象として、年金に上乗せして支給される「年金生活者支援給付金」という制度が存在します。
この記事では、どのような方が対象になるのか、いくら受け取れるのか、そして手続きはどのように進めるのかを、3つの種類に分けて詳しく解説していきます。
ご自身やご家族が対象となる可能性がないか、ぜひこの機会に確認してみてください。
1. 年金生活者支援給付金とは?公的年金に上乗せされる支援制度の基本
年金生活者支援給付金制度は、年金を受給されている方々の生活をサポートするため、2019年から開始された制度です。
この制度では、定められた受給要件を満たす方へ、2カ月に1回、公的年金の支給日と同じタイミングで給付金が支給されます。
年金生活者支援給付金には3つの種類があり、受け取っている基礎年金に応じて「老齢」「障害」「遺族」のいずれかが支給される仕組みです。
言い換えると、各種基礎年金を受給している方のうち、所得などの条件をクリアした場合に給付金の対象者となります。
2. 【種類別】年金生活者支援給付金の支給要件を詳しく解説
基礎年金を受け取っている方で、年金収入やその他の所得を合わせた金額が、定められた基準額を下回る場合に「年金生活者支援給付金」の対象となる可能性があります。
ここでは、給付金の支給要件について「老齢」「障害」「遺族」の3種類に分けて具体的に見ていきましょう。
2.1 老齢年金生活者支援給付金の対象者と具体的な条件
老齢年金生活者支援給付金は、以下のすべての要件を満たす方が対象となります。
- 65歳以上で、老齢基礎年金を受給していること
- 同一世帯に属する全員が、市町村民税非課税であること
- 前年の公的年金などの収入金額(※1)と、それ以外の所得の合計額が、生年月日に応じて以下の基準額以下であること(※2)
・昭和31年4月2日以降生まれの方:80万9000円以下
・昭和31年4月1日以前生まれの方:80万6700円以下
※1 障害年金や遺族年金などの非課税収入は、ここでの収入金額には含まれません。
※2 合計額が基準額を上回る場合でも、一定の範囲内(昭和31年4月2日以降生まれは90万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれは90万6700円以下)であれば、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されるケースがあります。
2.2 障害年金生活者支援給付金の対象者と具体的な条件
障害年金生活者支援給付金は、次の2つの支給要件を両方とも満たした場合に支給対象となります。
- 障害基礎年金を受給していること
- 前年の所得額(※)が479万4000円以下であること(扶養親族の人数によって基準額は上がります)
※ 所得額の計算には、障害年金などの非課税収入は含まれません。
2.3 遺族年金生活者支援給付金の対象者と具体的な条件
遺族年金生活者支援給付金を受け取るためには、以下の要件をすべて満たすことが必要です。
- 遺族基礎年金を受給していること
- 前年の所得額(※)が479万4000円以下であること(扶養親族の人数によって基準額は上がります)
※ 所得額の計算には、遺族年金などの非課税収入は含まれません。
3. 年金生活者支援給付金の支給額はいくら?最新データで見る平均月額と件数
厚生労働省が公表している「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考に、年金生活者支援給付金が実際にいくら支給されているのか、平均月額を確認します。
2025年3月時点のデータ(※)によれば、平均給付月額は、老齢年金生活者支援給付金が4146円、障害年金生活者支援給付金が5727円、そして遺族年金生活者支援給付金は5228円です。
※2025年3月時点で認定されている平均給付額です。
給付金額ごとの給付件数の内訳は、以下のようになっています。
3.1 老齢年金生活者支援給付金の給付額別件数
- 1000円未満:7万5101件
- 1000円以上2000円未満:31万4450件
- 2000円以上3000円未満:59万9166件
- 3000円以上4000円未満:108万2177件
- 4000円以上5000円未満:103万4357件
- 5000円以上6000円未満:104万5423件
- 6000円以上7000円未満:18万5291件
- 7000円以上8000円未満:9万3265件
- 8000円以上9000円未満:4万4796件
- 9000円以上1万円未満:1万9891件
- 1万円以上:1万524件
3.2 障害年金生活者支援給付金の給付額別件数
- 5000円以上6000円未満:149万3700件
- 6000円以上7000円未満:68万3466件
3.3 遺族年金生活者支援給付金の給付額別件数
- 1000円未満:ー
- 1000円以上2000円未満:607件
- 2000円以上3000円未満:1569件
- 3000円以上4000円未満:ー
- 4000円以上5000円未満:ー
- 5000円以上:7万5531件
4. 年金生活者支援給付金を受け取るための請求手続きガイド
この章では、年金生活者支援給付金を受け取るために必要な請求手続きについて解説します。
すでに公的年金を受給している方で、新たに給付金の支給対象者となった場合、日本年金機構から請求書を兼ねた案内が郵送されます。
4.1 手続きの流れ①:すでに基礎年金を受給している方
- 毎年9月の第1営業日以降に、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次送られてきます。
- 2025年1月以降に65歳になり、日本年金機構からこの請求書が届いた方は、電子申請の利用も可能です。
- 電子申請を利用しない場合は、請求書に必要事項を記入し、切手を貼ってポストに投函します。
なお、支給要件に該当するかどうかの確認が取れない方には、「年金生活者支援給付金請求書(A4型)」と「所得状況届」が送付されることになっています。
次に、これから年金を請求する方の手続きの流れを見ていきましょう。
4.2 手続きの流れ②:これから老齢基礎年金を請求する方
- 65歳になる3カ月前に送付される「年金請求書(事前送付用)」に、給付金の請求書が同封されています。
- 必要事項を記入した上で、受給開始年齢の誕生日前日以降に、年金の請求書と一緒に年金事務所へ提出します。
※障害または遺族の年金生活者支援給付金の対象者で、初めて基礎年金を請求する方は、給付金の請求書が自動では郵送されません。年金の請求手続きと同時に、ご自身で年金事務所や市区町村の窓口にて給付金の請求手続きを行う必要がありますのでご注意ください。
4.3 給付金の支給日はいつ?支給スケジュールについて
年金生活者支援給付金は、公的年金と同じく偶数月の15日に支払われます。15日が土日や祝日にあたる場合は、その直前の金融機関営業日に前倒しで支給されることになります。
例えば、10月に支給されるのは8月分と9月分の2カ月分です。
支給先の口座は年金と同じですが、通帳には年金と給付金が別々に記載されます。
5. 注意点:公的年金の受給額は個人差が大きい
厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、公的年金の平均受給月額は国民年金(老齢基礎年金)で約5万9310円、厚生年金(国民年金部分を含む)では約15万289円となっています。
しかし、年金の受給額は現役時代の働き方などによって大きく異なるため、注意が必要です。
特に厚生年金では、その差が顕著に見られます。
「厚生年金に加入していれば安心」と思われがちですが、実際には月額30万円以上を受け取る方がいる一方で、月額1万円未満の方もおり、受給額には大きな幅があります。
したがって、年金と他の所得を合計しても所得が基準を下回る場合、「年金生活者支援給付金」の対象になる可能性があります。
6. まとめ
本記事では、年金生活者支援給付金制度の概要、支給の条件、給付額、そして手続きの方法について詳しく解説しました。
この制度は、公的年金などの収入が一定の基準を下回る方々の生活を支える、年金に上乗seされる重要な給付金です。
ご自身の年金の種類(老齢・障害・遺族)を確認し、所得や世帯の状況が要件を満たしているか、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
新たに給付金の対象となった方へは、日本年金機構から請求書が届きますので、見落とさないようにしましょう。
もし分からないことがあれば、給付金専用ダイヤルや近くの年金事務所へ問い合わせてみるのも良いでしょう。
ご自身の状況を正確に理解し、活用できる制度を有効に利用していくことが大切です。
※当記事は再編集記事です。
参考資料
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度 特設サイト」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「『年金生活者支援給付金請求書』 の提出をお願いします!」
- 日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求する方の請求手続きの流れ」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- LIMO「年金に上乗せされる「年金生活者支援給付金」とは?【2月・4月・6月・8月・10月・12月に支給】対象者や支給額、手続き方法をわかりやすく解説」
マネー編集部年金班