YouTubeチャンネル『イズミダイズム』にて、元機関投資家で証券アナリストの泉田良輔氏が、任天堂の最新決算(2026年3月期 第3四半期)について解説しました。

次世代機「Nintendo Switch 2」の発売により売上が約2倍へと驚異的な成長を遂げたにもかかわらず、株価が下落している背景には何があるのでしょうか。

本記事では、泉田氏が動画内で展開した任天堂のビジネスモデルの独自性や、決算書から読み取れる「株価下落の理由」、そして今後の展望について紹介します。

1. 実は「工場」を持たない? 京都の文化から読み解くビジネスモデル

泉田氏はまず、任天堂という企業の裏側について興味深いエピソードを紹介しています。

「単純なゲーム会社だと思われがちだが、実は製造自体は台湾の鴻海(ホンハイ)などに委託しており、自社でゲーム機の工場を持たない『ファブレス』企業である」と泉田氏は語ります。

しかし、唯一自社で工場を持っているものがあり、それが任天堂の祖業である「花札」なのだそうです。

花札は遊びに使う性質上、裏面や品質が均一でなければならず、特に「糊付け」の技術が重要であるため、そこだけは自社で品質保証を行っているというエピソードが披露されました。

さらに泉田氏は、任天堂の「プラットフォームビジネス」(自社でハードウェアという「場」を作り、そこに様々なソフトメーカーが参画する仕組み)は、京都の「お茶屋文化」に通じると指摘します。

お茶屋は場所だけを提供し、仕出し料理や芸妓さんは外部から手配してもてなすという文化があり、これが任天堂のプラットフォーマーとしての素地になっているのではないか、という独自の視点を示しました。

任天堂、売上倍増なのになぜ株価は下がる?理由を動画で見る

2. 第3四半期決算ハイライト:売上は「倍増」も、利益の伸びは控えめ?

続いて、2026年3月期第3四半期の決算短信を基に、業績の解説が行われました。泉田氏は「売上高は1兆9000億円で対前年比99%増、ほぼ倍になっている 」と指摘し、「Nintendo Switch 2」の爆発的な販売力を高く評価しています。

 一方で、営業利益は約3000億円(対前年比21%増)、最終利益は3588億円(対前年比51%増)と、利益も伸びてはいるものの、売上の伸び幅に比べると物足りない印象を受ける点に注目しました。

任天堂の決算資料を解説する泉田氏1/3

任天堂の決算資料を解説する泉田氏

出所:各種データをもとにイズミダイズム作成

3. なぜ「売上倍増」でも利益率が下がるのか?

なぜ売上が倍増しているのに、営業利益は21%増にとどまっているのでしょうか 。泉田氏はこの疑問に対し、決算説明資料を用いて解説しています。

泉田氏によると、今年の第3四半期累計の売上総利益率は37.4%であり、昨年の59.1%から21.7ポイントも大幅に下がっています 。

この理由として、「Nintendo Switch 2は旧型に比べて価格設定を抑えているため利益率が低いこと」や「円安によるドル建て部材の調達コスト上昇」を挙げています。

さらに、任天堂のビジネスサイクル特有の事情として、「新しいプラットフォーム(ゲーム機)が出た直後は、製造原価が高く、利益率の高いソフトウェアの売上比率が相対的に低くなるため、全体の利益率が下がりやすい」という構造を説明しました。

新ハードを普及させるための広告宣伝費(前年比66%増)や研究開発費(同21%増)といった販管費の増加も、利益を圧迫する要因になっていると語っています。

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4. 株価下落の最大の理由は「保守的すぎる通期予想」?

業績自体は絶好調にもかかわらず、株価が下落した最大の理由として、泉田氏は「会社側が発表した通期の業績予想」だと見ています。

任天堂が発表した通期の営業利益予想は3700億円、経常利益予想は4600億円です。

しかし、第3四半期(9ヶ月間)の時点ですでに営業利益は約3000億円、経常利益は4558億円を稼ぎ出しています。

泉田氏は「第4四半期に赤字が出ない限り、この数字は絶対に上振れするはずなのに、上方修正をしていない」と指摘します。

投資家からすれば、「もしかして第4四半期に何か大きな損失が出るのではないか?」と疑心暗鬼になったり、「当然上方修正されると思っていたのに期待外れだ」と失望したりするため、結果として株価が売られる要因になったと分析しています。

泉田氏は、業績修正には関係各所への説明や資料作成などのコストがかかるため、任天堂があえて「保守的」な姿勢を貫き、修正を見送ったのではないかと推測しています。

任天堂の決算資料を解説する泉田氏1/3

任天堂の決算資料を解説する泉田氏

出所:各種データをもとにイズミダイズム作成

5. 今後の株価のカギを握る「サードパーティ」の動向

最後に泉田氏は、今後の任天堂の株価や業績を左右する重要なポイントについて語りました。

それは、任天堂以外のソフトウェアメーカー(サードパーティ)が、いかに「Nintendo Switch 2」に参画し、魅力的なソフトを出せるかという点です。

泉田氏は過去の「Wii」の事例を引き合いに出し、「Wiiリモコンのような新しいUI(ユーザーインターフェース)が登場した際、任天堂自身はそれを活かした面白い自社ソフトを作れたが、他のメーカーはどう対応していいか戸惑ってしまった」と解説。

その結果、サードパーティのソフトが充実せず、株価にもネガティブな影響を与えた過去があったと振り返ります。

Nintendo Switch 2においても、任天堂の自社ソフトが売れることはもちろんですが、他のメーカーが新しいハードの特性を活かしてエコシステム(独自の経済圏)全体を盛り上げられるかどうかが、中長期的な成長と株価上昇のカギになると結論づけています。

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6. ニュースの裏側を読む「投資家視点」

YouTubeチャンネル『イズミダイズム』での解説を通じて、任天堂の「ファブレス」という側面や京都の文化に根差したプラットフォームビジネスの面白さ、そして決算数字の裏に隠された「利益率低下の理由」と「保守的な業績予想」が見えてきました。

売上倍増という華々しいニュースの陰で、投資家が何に注目し、なぜ株価が変動するのか。

表層的な数字だけでなく、その背景にあるビジネスの構造や市場の期待値を読み解くことが、企業業績を正しく評価する上で重要だと言えそうです。

7. イズミダイズムとは

イズミダイズムは、元機関投資家である泉田良輔の個人YouTubeチャンネルです。プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。

新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。

教科書的な知識だけでなく、プロの実体験に基づいた分析を通じて、ビジネスパーソンや個人投資家に役立てていただけるコンテンツをお届けしています。

元機関投資家 泉田良輔のシテンで語る金融と経済の今3/3

元機関投資家 泉田良輔のシテンで語る金融と経済の今

出所:Youtubeチャンネル「イズミダイズム」

参考資料