暦の上では春ですが、まだ寒さが残る2月。暖房費や食料品の値上がりが続き、日々の生活費に頭を悩ませている方も少なくないでしょう。特に年金収入が主な生活基盤となるシニア世帯にとって、物価高は家計に直接的な影響を及ぼします。
実際に、J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」によると、70歳代の世帯では、二人以上・単身世帯ともに87%が「ゆとりがない」と回答しており、その主な理由として「物価上昇」が挙げられています。
このような状況で家計の一助となるのが、2カ月に一度支給される公的年金に上乗せされる「年金生活者支援給付金」です。
この記事では、物価高に立ち向かうためにも知っておきたい年金生活者支援給付金の仕組みや対象者、受給額について、改めて詳しく解説します。ご自身が対象になるか確認するきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
1. 【年金】老後の年金額は人それぞれ
厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、公的年金の平均受給月額は、国民年金(老齢基礎年金)が約5万円、厚生年金(国民年金部分を含む)が約15万円となっています。
しかし、実際の受給額には大きな幅があり、厚生年金を月に30万円以上受け取る方がいる一方で、国民年金と厚生年金を合わせても月額3万円に満たない方もいるのが現状です。
公的年金とそれ以外の所得を合計しても、国が定める基準所得に満たない場合には、「年金生活者支援給付金」を受け取れる可能性があります。
2. 【金額】年金生活者支援給付金の金額は?2026年4月分から3.2%の増額
年金生活者支援給付金は、2019年から始まった制度で、年金やその他の所得が一定基準額を下回る年金受給者の生活を支えることを目的としています。この給付金は、2カ月に1回、通常の公的年金に上乗せされる形で支給されます。
この給付金は、受給している年金の種類に応じて以下の3つに分けられ、それぞれ支給の条件や基準額が定められています。
- 老齢年金生活者支援給付金
- 障害年金生活者支援給付金
- 遺族年金生活者支援給付金
2.1 2026年度における年金生活者支援給付金の支給額
2026年度における年金生活者支援給付金の額は、物価変動などを反映し、前年度と比較して3.2%の引き上げが決定しました。
【2026年度】
- 老齢年金生活者支援給付基準額(月額):5620円
- 障害年金生活者支援給付金(月額):1級7025円・2級5620円
- 遺族年金生活者支援給付金(月額):5620円
特に老齢年金生活者支援給付金の場合、この基準額を基に、個々の保険料納付期間などに応じて最終的な支給額が算出されます。
提示されている金額はいずれも月額であり、実際の支給時には2カ月分がまとめて公的年金に加算されます。基準額を満額受給できる場合、1回の支給で約1万1000円、年間では約6万7000円を受け取ることになります。
なお、厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2025年3月時点での平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金が4146円、障害年金生活者支援給付金が5727円、遺族年金生活者支援給付金が5228円でした。
※2025年3月において認定されている平均給付金額です。
3. 【支給要件】2カ月に一度、ふつうの年金に「年金生活者支援給付金」が上乗せされる人とは?
年金生活者支援給付金を受け取るための要件を確認していきましょう。
障害年金生活者支援給付金と遺族年金生活者支援給付金は、それぞれ障害基礎年金または遺族基礎年金を受け取っており、かつ前年の所得が479万4000円以下の方が対象です。
この所得判定には、障害年金や遺族年金といった非課税収入は含まれません。また、扶養している親族の人数に応じて、所得基準額は引き上げられます。
一方で、老齢年金生活者支援給付金については、所得以外にもいくつかの要件が加わります。
3.1 老齢年金生活者支援給付金の支給対象となる条件
老齢年金生活者支援給付金は、以下の要件をすべて満たす方が対象となります。
- 65歳以上で老齢基礎年金を受給している
- 同じ世帯の全員が市町村民税非課税である
- 前年の公的年金などの収入金額と、給与所得や利子所得といったその他の所得との合計額が、昭和31年4月2日以降に生まれた方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円以下である
老齢年金生活者支援給付金の所得判定においても、障害年金や遺族年金などの非課税収入は計算に含まれませんので注意が必要です。
さらに、所得が基準額をわずかに上回り対象から外れてしまう方との公平性を保つため、「補足的老齢年金生活者支援給付金」という制度が設けられています。
補足的老齢年金生活者支援給付金について
具体的には、昭和31年4月2日以降に生まれた方で所得が80万9000円超90万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方で所得が80万6700円超90万6700円以下の場合に、この補足的な給付金が支給されることになります。
この補足給付金の額は、所得額に応じて段階的に減少する仕組みになっています。
4. 【手続き】年金生活者支援給付金の申請方法
年金生活者支援給付金は、自動的に支給が開始されるものではなく、受け取るためには請求手続きが必要です。対象者になったからといって、何もしなくても年金に上乗せされるわけではない点に注意しましょう。
現在すでに公的年金を受け取っている方で、前年の所得が基準を下回り新たに給付金の対象となった場合、毎年9月1日以降に日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次送られてきます。
4.1 すでに年金を受給している方へ:毎年9月頃に届く案内とは
※すでに年金を受け取っている方の中でも、繰上げ受給をしている場合は書類の様式が異なります。
これから65歳になり老齢基礎年金の受給を開始する方には、誕生日の約3カ月前に送付される年金請求書に、給付金の請求書が同封されています。必要事項を記入の上、年金の請求書とあわせて提出することで手続きができます。
4.2 給付金の手続きは毎年行う必要があるのか
一度、年金生活者支援給付金の請求手続きを完了すれば、その後も支給要件を満たし続ける限り、翌年以降は改めて手続きをしなくても継続して受け取ることが可能です。
支給が継続されるかどうかの判定は、前年の所得に基づいて毎年行われ、その結果は10月分(12月支給)から1年間適用されます。もし対象から外れた場合は、その旨を知らせる「年金生活者支援給付金不該当通知書」が届きます。
また、毎年度の支給額(4月分から適用)については、毎年6月上旬頃に送付される「年金生活者支援給付金 支給金額(改定)通知書」や「年金生活者支援給付金 振込通知書」で確認することができます。
5. まとめ
この記事では、年金生活者支援給付金の制度概要や対象者について解説しました。この給付金は申請しなければ受け取れないため、ご自身が対象に該当すると思われる場合は、忘れずに手続きを進めることが大切です。
近年の物価上昇に対応して年金額も改定されていますが、上昇率に追いつかず実質的な価値が目減りしている状況です。今後もインフレが続く可能性を考えると、生活防衛策を講じることがより重要になります。
インフレへの備えとして、株式や投資信託などを活用した資産運用を検討するのも一つの方法です。公的な年金や給付金だけでなく、ご自身の計画に合わせた資産形成で、将来の資金を準備してみてはいかがでしょうか。
※当記事は再編集記事です。
参考資料
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金制度について」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求される方の請求手続きの流れ」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求手続きのご案内(令和7年度版)」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届いた方へ」
- 総務省「個人住民税」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」
- LIMO「【年金生活者支援給付金】ふつうの年金本体に上乗せされる条件とは?《2カ月に一度、偶数月に支給》年金生活者支援給付金のイロハ」
マネー編集部社会保障班