労災事故が発生した場合、勤務先を経由して労災申請するのが一般的です。しかし。「労災かどうかわからない」「勤務先が申請手続きしてくれない」などの理由で、対応方法がわからないという人もいるでしょう。

本記事では、労災に関する基本ルールと労災事故が発生した場合の対応方法をケース別に解説します。会社以外の相談先も紹介しますので、万一に備えて確認しておきましょう。

1. 労災に関する基本ルール

労働者(賃金をもらって働いている人)はすべて、労働者災害補償保険(以下、労災保険)に加入しなければなりません。

保険料は全額会社が負担し、業務上の災害(業務災害)と通勤途中の災害(通勤災害)が発生した場合、労災保険からの給付を受けられます。

給付の内容は、労災事故による治療費の補償だけでなく、休業補償や死亡・障害・介護などに対する補償など多岐に亘ります。

労災保険給付の種類1/1

~労災保険給付等一覧(9/16)

出所:厚生労働省「労災保険給付の概要」

労災の請求手続きは被災した従業員本人が行いますが、勤務先の証明などが必要となるため勤務先経由で行うのが一般的です。労災対応は会社と相談しながら進めるのが基本ですが、判断に迷ったときの対応を、ケース別に見ていきましょう。

2. 労災かどうかわからないケース

業務や通勤によるケガや病気は労災に該当しますが、労災に該当するかどうか判断がつかないケースがあります。このような場合、まずは勤務先の上司や人事部などの担当部署に相談するのが基本です。

しかし、「上司には相談しにくい」「会社から騒いでいると思われたくない」などの理由で相談できない場合、「労災保険相談ダイヤル(0570-006031)」に電話しましょう。厚生労働省委託事業で労災全般に関し気軽に照会できます。受付は平日の9時から17時までです。

3. どの病院に行けばいいかわからないケース

社外で事故に遭ったケースなどで緊急に病院での治療が必要な場合、可能なら労災指定病院で受診しましょう。治療費は労災保険から出るため、支払が不要となるためです。

労災指定病院以外で受診しても労災保険は適用されますが、労災は健康保険(原則3割負担)が使えないため、一旦治療費の全額を自己負担しなければなりません。

ここまで、労災に関する基本ルールと労災かどうかわからないときの対応などについて解説しました。次章では、会社が労災申請してくれないケースや労災認定されなかったケースでの対応などについて解説します。

4. 会社が労災申請してくれないケース

勤務先が労災申請してくれない理由は、会社が労災に該当しないと判断した場合のほか、労災発生による労災保険料アップや企業イメージの低下、事務負担を避けるために「労災隠し」をしていることも考えられます。

勤務先が労災申請してくれないときは、従業員が自分で労災申請することも可能です。申請書には原則勤務先の証明が必要ですが、申請書の提出先である労働基準監督署で事情を話せば事業所の証明なしで申請書を受理してもらえます。申請書は労働基準監督署の窓口または厚生労働省のホームページからダウンロードして入手できます。

また、労災の認定を巡って会社と争うことを想定して、労働基準監督署や弁護士などに相談するという選択肢もあります。相談時には、勤務状況と事故状況がわかる客観的な資料を持参しましょう。

5. 労災認定されなかったケース

労災申請したが認定されなかった場合(不支給決定)、最初に不支給となった理由を確認しましょう。「業務起因性が認められない」「通勤経路を逸脱していた」などが考えられます。

申請結果やその理由に納得できない場合、「審査請求」を行うことが可能です。審査請求の結果に不服があれば、「再審査請求」もできます。審査請求は、都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官に対し、不支給決定があったことを知った日の翌日から3ヶ月以内に行います。内容が専門的になるため、弁護士に相談したほうがいいケースもあるでしょう。

6. 労災で困ったときの相談先

労災に関する相談先は、基本的には会社の上司や担当部署です。ただし、相談先が取り合ってくれなかったり、相談したくないケースでは、社外の専門家への相談も選択肢です。

労働基準監督署や労災保険相談ダイヤル(電話)、弁護士以外では、以下も相談先の候補として検討してみましょう。無料で相談を受けられます。

7. おわりに

労災事故が発生した場合、原則として勤務先を経由して労災申請を行いますが、会社が対応してくれない場合でも労働者自身で申請可能です。わからないことがあれば勤務先に相談するのが基本ですが、難しい場合は社外の相談窓口の利用などを検討しましょう。

労災保険は業務中の災害などから、労働者を守るための重要な公的制度です。会社が協力的ないケースや自己判断できないケースでも、1人で抱え込まずに専門家の協力を得て適切に行動しましょう。

参考資料

西岡 秀泰