4. 年金月額15万円・単身世帯の保険料の目安【大阪市の例】

年金月額15万円(年180万円)の場合、公的年金等控除後の所得は70万円となります。

この所得をもとに、社会保険料の目安を算出してみましょう。

なお、保険料の算出方法は自治体ごとに異なるため、今回は大阪府大阪市(令和8年度)を取り上げます。

4.1 国民健康保険料の目安

大阪市の令和8年度の料率をもとに計算します。国保の「所得割」は、所得(70万円)から基礎控除(43万円)を差し引いた「27万円」に対して計算されます。

国民健康保険料の計算方法2/3

国民健康保険料の計算方法

出所:大阪市「令和8年度大阪市国民健康保険料のお知らせ」

【所得割】

  • 医療分(所得割×9.5%)= 2万5650円  
  • 後期高齢者支援分(3.06%)= 8262円  
  • 子ども・子育て支援金分(0.28%)= 756円  

※65歳以上のため、国保の介護分(40〜64歳が対象)はかかりません。  

これで所得割の合計は3万4668円となります。

ここに被保険者1人あたりの「均等割」と世帯あたりの「平等割」が加算されますが(軽減前は合計9万2775円)、ここで年金受給者向けの軽減措置が適用されます。

65歳以上の年金受給者は、国保の軽減判定時に所得からさらに15万円を引く特例があるため、所得55万円として判定され、大阪市の基準では「均等割・平等割が5割軽減(半額)」となります。

割引後の均等割・平等割の合計は4万6,386円となるため、最終的な国民健康保険料は次のようになります。

3万4668円(所得割)+ 4万6386円(軽減後の一律分)= 8万1054円/年(月額約6755円)

4.2 介護保険料の目安

続いて、65歳以上が個別に納める介護保険料を算出します。大阪市では合計所得金額に応じて保険料段階(第1~第20段階)が設定されています。

介護保険料の目安3/3

介護保険料の目安

出所:大阪市「介護保険料について」

今回のケース(単身・年金180万円)では住民税が課税されるため、所得70万円の人は「第7段階」に該当します。大阪市の第9期(2024~2026年度)の基準では、第7段階の年額は次のとおりです。

  • 年額:12万2087円(基準額11万988円×1.10)

月あたりの目安に直すと、12万2087円÷12=約1万174円となります。

※もし障害者控除など何らかの理由で住民税が「非課税世帯」となった場合は、大阪市の特例段階である「第4段階」に該当し、年額7万6,027円(月額約6,336円)へと大きく下がります。

年金から差し引かれる社会保険料の合計と手取りは?

大阪市で年金月額15万円(単身・課税世帯)の場合、毎月の年金から差し引かれる保険料の目安は以下の通りです。

  • 国民健康保険料:約6755円  
  • 介護保険料:約1万174円  

差引額の合計は毎月約1万6929円となります。

したがって、額面15万円に対する実際の手取り額の目安は、13万3000円程度になるでしょう。

5. まとめにかえて

65歳・単身世帯で年金月額15万円の場合でも、実際にはその全額を生活費として使えるわけではありません。

大阪市の制度をもとに試算すると、国民健康保険料と介護保険料だけで月1万7000円程度が差し引かれ、手元に残る金額は想像より少なくなります。

現役時代と違い、退職後は健康保険料が全額自己負担となり、さらに65歳からは介護保険料も本格的に発生します。

そのため、「年金はいくらもらえるか」だけでなく、そこから何が差し引かれるのかまで含めて考えることが、老後の生活設計では重要になるでしょう。

なお、本記事で示した保険料は、大阪市の公開資料をもとにした一例であり、あくまで目安です。国民健康保険料や介護保険料は、自治体ごとに料率や区分が異なり、所得状況や軽減措置の適用によっても変わります。

正確な金額を把握するためには、お住まいの市区町村が公表している試算表や窓口での確認が必要です。

老後の家計を考える際は、年金額だけを見るのではなく、社会保険料を差し引いた「実質的な手取り」を基準に、無理のない生活設計を立てていきましょう。

和田 直子
銀行員時代、定年退職を迎えた方々から「年金から思ったよりお金が引かれている」という戸惑いの声を多くお受けしたものです。現役時代は給与明細で天引きされる額を意識しがちですが、いざ年金生活に入ると、健康保険の自己負担化や介護保険の仕組みの変化に驚かれる方が少なくありません。

今回の試算では月約1万7000円の負担となりましたが、保険料は自治体や世帯状況、住民税の課税・非課税によっても大きく変動します。だからこそ、ご自身の住む地域のルールを知り、引かれる分を織り込んだ「リアルな予算」を組むことが大切です。

現役時代からこうした引き算の視点を持っておくと、リタイア後の生活ギャップを最小限に抑えられます。まずは一歩として、お住まいの自治体の基準を調べることから始めてみてください。

参考資料

加藤 聖人