いよいよ8月に入り、夏本番を迎えました。夏休みやお盆休みで帰省し、ご家族と久々に顔を合わせる方も多いのではないでしょうか。
一方で、今年の夏は記録的な猛暑によるエアコンなどの光熱費増に加え、飲食料品を中心とした相次ぐ値上げラッシュが家計を直撃しています。
特に、主な収入源が年金であるシニア世代にとっては、「いまの貯蓄と年金だけで、この物価高を乗り切っていけるのか」と不安を感じる場面も多いことでしょう。
私はこれまでファイナンシャルアドバイザーとして幅広い世代のお客様のご相談を承ってきました。
その中で、老後のお金に対する漠然とした不安を和らげて後悔を防ぐための第一歩は、まず「客観的な事実を知ること」だとお伝えしています。
本記事では、70歳代・二人以上世帯の平均的な貯蓄額や中央値、年金の受給額といったリアルなデータを基に、現代シニアの家計事情を詳しく解説します。
1. 70歳代・二人以上世帯の貯蓄事情:平均額と中央値を比較
金融経済教育推進機構(J-FLEC)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」を基に、「70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額」について見ていきましょう。この調査には、金融資産を保有していない世帯も含まれています。
※ここでの金融資産保有額とは、預貯金の他に株式、投資信託、生命保険などを含んだものです。ただし、日常的な支払いや引き落としに使う普通預金の残高は対象外です。
70歳代・二人以上世帯における金融資産の平均保有額は2416万円でした。しかし、この平均値は一部の富裕層によって大きく引き上げられている傾向があります。より実態に近いとされる中央値は1178万円です。
世帯ごとの詳しい貯蓄額の分布は、以下のようになっています。
- 金融資産非保有:10.9%
- 100万円未満:4.5%
- 100~200万円未満:5.1%
- 200~300万円未満:3.7%
- 300~400万円未満:3.9%
- 400~500万円未満:2.9%
- 500~700万円未満:6.4%
- 700~1000万円未満:6.7%
- 1000~1500万円未満:11.1%
- 1500~2000万円未満:6.7%
- 2000~3000万円未満:12.3%
- 3000万円以上:25.2%
- 無回答:0.6%
金融資産を全く保有していない「貯蓄0円」の世帯が10.9%を占める一方で、3000万円以上の資産を持つ世帯が25.2%にのぼります。
このデータから、70歳代の二人以上世帯では、資産状況に大きな格差があることがうかがえます。
また、貯蓄額が300万円未満の世帯を合計すると24.2%となり、資産が少ない層も一定数存在することがわかります。
その一方で、1000万円以上の資産を持つ世帯は合計で55.3%と半数を超えており、比較的ゆとりのある世帯も多いようです。
老後の資産額は、現役時代の収入や働き方、退職金の有無、さらには健康状態など、さまざまな要因に影響されます。公的年金についても、現役時代の加入状況によって将来受け取る金額が変わってきます。
もし貯蓄が十分でない場合、年金収入だけで生活を維持するのは難しいかもしれません。安心して老後を過ごすためには、それぞれの世帯の状況に応じた生活設計が不可欠です。
健康で働けるうちは就労を続けたり、不動産や投資からの収入を検討したりするなど、早めに対策を講じることが将来の安心につながるでしょう。
2. 厚生年金の受給額はいくら?平均月額と受給権者層の内訳
厚生労働省が発表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を基に、厚生年金の平均受給月額を確認していきましょう。
厚生年金の被保険者は第1号から第4号まで区分されていますが、ここでは主に民間企業の会社員などが受け取る「厚生年金保険(第1号)」の年金月額についてご紹介します。
※この記事で紹介する厚生年金保険(第1号)の年金月額には、基礎年金である国民年金部分の金額も含まれています。
2.1 厚生年金の平均受給月額:全体・男女別の比較
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
2.2 受給額の分布状況:月額階級別の受給権者数
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
月額階級別の受給権者数を見ると、「10万円以上~11万円未満」の層が111万2828人と最も多くなっています。
3. 国民年金の受給額はいくら?ボリュームゾーンを詳しく解説
次に、自営業者や専業主婦(主夫)など、厚生年金の加入期間がない方が受け取る国民年金(老齢基礎年金)の月額について確認します。
3.1 国民年金の平均受給月額:全体・男女別のデータ
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
3.2 受給額の分布:月額階級別の受給権者数から見る実態
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
国民年金の受給額で最も人数が多いボリュームゾーンは「6万円以上7万円未満」で、受給権者全体の約半数を占めています。一方で、「5万円未満」の層を合計すると全体の約21%にのぼります。
また、月額7万円以上を受け取っている人は約300万人で、全体の約9%という結果でした。
このように国民年金の受給額は、満額に近い層が中心であるものの、保険料の納付状況や加入期間に応じて個人差が大きいことがわかります。
4. 筆者からのコメント
ファイナンシャルアドバイザーをしております奥田です。
多くのお客様のコンサルティングを承る中で、「年金だけで生活できるのか」という不安をよく耳にします。
まずは「ねんきんネット」でご自身の現在地を知ることが大切です。
その上で、働き方に合った制度の存在も、ぜひ知っておきましょう。
会社員の方であれば、2026年4月から「在職老齢年金」の支給停止基準額が51万円から65万円に引き上げられています。
年金カットを気にして働く時間を抑えていた方も、ご自身のペースで気兼ねなく働きやすくなるメリットがあります。
一方、自営業など国民年金のみの方には「付加年金」加入の検討もおすすめです。
月額400円の保険料を上乗せするだけで将来の受給額が一生涯増え、受給開始から2年で元が取れる大変効率的な制度です。
こうした仕組みを味方につけて、自分らしい老後の土台づくりを始めてみませんか。



