「お墓の維持、この先も続けられるだろうか?」年末年始やお彼岸など、家族が集まるタイミングで、そんな声を耳にした方もいるかもしれません。
実は、厚生労働省によると改葬件数、いわゆる墓じまいは年間15万件を超え、一般的な選択肢になっています。そこで今回は、最新の公的データをもとに、墓じまいを「家計」と「将来負担」の視点からどう考えるべきかを解説します。
1. 【墓じまい】改葬は年間15万件超!墓じまいにかかる費用はいくらぐらい?
墓じまいとは、今あるお墓を撤去し、遺骨を別の場所へ移す「改葬」のことです。
1.1 管理者のいない「無縁墳墓」改葬も年間3400件
令和4年度の改葬(お墓の引っ越し)件数は全国で15万件を超え、「墓じまい」が特別なことではなく、一般的な選択肢として定着していることがわかります。
この数字の中には、管理者がいなくなり法的手続きを経て撤去された「無縁墳墓」の改葬も約3400件含まれており、決して無視できない数となっています。多くの人が自主的にお墓を整理して「終活」を進める一方で、承継者が途絶えて無縁化し、行政等の手で整理されるお墓も確実に存在するという厳しい現実が見えてきます。お墓を子供の代にどう引き継ぐのか、あるいは引き継がないのか。元気なうちに家族で話し合うことが大切です。
1.2 「一時的な出費か、永続的な負担か」墓じまいにかかる費用
墓じまいは、単なる撤去作業ではなく、いくつかの費用がかかります。
主な費用は次の3つです。
- 墓石の撤去費用
- 新しい納骨先にかかる費用(納骨堂や合葬墓など)
- 寺院墓地の場合は「離檀料」
金額の目安が分かりにくいのが離檀料です。離檀料には法律で支払う義務はなく、あくまでこれまでの感謝の気持ちとして渡す「お布施」に近い性質のものです。
金額などの不確定な要素に目が行きがちですが、ここで大切なのは、「今いくらかかるか(イニシャルコスト)」だけでなく、「この先ずっとかかる管理費(ランニングコスト)を止められるか」という視点を持つことです。
2. 【墓じまい】親族トラブルを防ぐ「墓じまい」を進める4つの実務ステップ
もちろん、代々受け継がれてきたお墓を今の形のまま守り続けられるのであれば、それに越したことはありません。ご先祖様を大切に思い、お寺との関係を維持することはとても尊いことです。
しかし、もしその維持が今の生活を圧迫したり、将来のお子さんたちの「重荷」になってしまう恐れがあるのなら、形を変える勇気も必要です。FPとしての視点は「無理をして共倒れになるリスクを避ける」こと。ここでは、家計を守るために「墓じまい」を選択する場合の、失敗しない進め方を解説します。
2.1 ①管理費は誰が払う?今のお墓の「管理コスト」を確認する
まずは、現在のお墓について次の点を整理しましょう。
- 年間の管理費はいくらか
- 誰が支払っているのか
- 今後も払い続けられるか
ここで大切なのは、「気持ち」ではなく数字で把握することです。
2.2 ②独断はトラブルの元。親族と「目的」を共有する話し合いを
次に、親族と墓じまいについて話し合います。
- なぜ今、墓じまいを考えているのか
- 誰の負担を減らすためなのか
独断で進めると後々のトラブルにつながりやすいため、早めの共有が重要です。
2.3 ③次の納骨先はどうする?予算に合わせた選択肢と自治体制度の活用
親族の理解が得られたら、次は納骨先と制度の確認です。
- 合葬墓・納骨堂・永代供養墓などの選択肢
- 自治体独自の支援制度の有無
ここでの選択が、将来の費用負担を大きく左右します。
2.4 ④勝手な撤去は違法!「改葬許可証を取得して手続きを進める
最後に、自治体から「改葬許可証」を取得します。これは法律で定められた必須手続きで、これを取得してから実際の墓じまいが始まります。
3. 【墓じまい】無理なく続けられる形こそが、これからの供養
今回は、最新の改葬件数データをもとに、墓じまいを家計の視点から解説しました。墓じまいは先祖をないがしろにする行為ではありません。管理費という“止められない支出”を見直すことで、家族の将来負担を軽くする選択でもあります。
大切なのは、感情ではなく数字で現状を知ること。そして、元気なうちに家族と話し合うことです。守り続けるのも、形を変えるのも、どちらも正解になり得ます。「自分たちに無理はないか?」その問いかけが、家族全員の安心につながります。
参考資料