5月の大型連休が明け、さわやかな初夏の風に新緑が揺れる心地よい季節となりました。

落ち着いた日常が戻るなかで、日々の家計やこれからの生活設計について改めて見つめ直している50歳代から70歳代の方も多いのではないでしょうか。

物価の上昇が続く昨今、日々の生活への不安から、家計の助けとなる公的な支援制度に注目が集まっています。

なかでも「住民税非課税世帯」に該当する場合、さまざまな負担軽減策を受けられることをご存じでしょうか。

本記事では、住民税非課税世帯が対象となる主な5つの優遇措置について客観的に整理してご紹介します。また、「給与や年金がいくらなら非課税になるのか」という具体的なボーダーラインについても解説しますので、ご自身の状況と照らし合わせながら今後の家計管理の参考にご覧ください。

1. 【一覧で確認】住民税非課税世帯が受けられる「5つの主な優遇制度」

新型コロナウイルス対策や物価高への対応として、これまで住民税非課税世帯を対象に、現金給付を含むさまざまな支援策が実施されてきました。

住民税非課税世帯とは、所得が一定の基準以下で、住民税が課されない世帯のことを指します(具体的な条件については後ほど説明します)。

こうした世帯に対する支援は給付金だけではなく、生活を支える多様な制度が用意されています。

ここでは、その中から代表的な5つの措置を取り上げて紹介します。

【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置1/6

【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置

LIMO編集部作成

1.1 1:国民健康保険料(応益割)の減額

  • 応益分保険料(均等割・平等割)の「7割・5割・2割」のいずれかを減額

1.2 2:介護保険料の減額

  • 第1号被保険者(65歳以上)が対象。減額される金額は自治体ごとに異なる

1.3 3:国民年金保険料の免除・納付猶予

  • 全額免除・一部免除・納付猶予のいずれか

1.4 4:保育料の無償化

  • 0歳から2歳までの保育料が無償化
  • これにより、0~5歳までの保育料が無料になる

1.5 5:高等教育の修学支援新制度

  • 授業料・入学金の免除または減額
  • 返還を要しない給付型奨学金
  • 上記により大学、短期大学、高等専門学校、専門学校を無償化

このほかにも、自治体が独自に設けている制度を含めると、活用できる支援策は数多くあります。

では、住民税非課税世帯とは具体的にどのような世帯を指すのかについて、次章で確認していきましょう。

2. 【住民税の基本から確認】「住民税非課税世帯」とはどのような世帯か

まずは、住民税の基本的な仕組みを整理したうえで、住民税非課税世帯に該当する条件を確認していきます。

住民税は、居住地の都道府県や市区町村に納める地方税で、自治体が行う公共サービスやインフラ整備などを支える重要な財源です。

住民税は「均等割」と「所得割」の2層構造2/6

個人住民税のしくみ

出所:総務省「個人住民税」

個人に課される住民税は、「均等割」と「所得割」の2つの要素から成り立っています。

  • 均等割:所得に関係なく一律に課税される部分
  • 所得割:所得に応じて税額が決まる部分

均等割と所得割の両方が課されない状態を「住民税非課税」といい、世帯の全員がこの条件に当てはまる場合を「住民税非課税世帯」と呼びます。

なお、所得割のみが非課税となるケースもありますが、給付金などの支援策の対象となるかどうかは、自治体によって取り扱いが異なります。

そのため、詳しい条件については、必ずお住まいの市区町村が定めている基準を確認するようにしましょう。

3. 【要件】住民税が「非課税」となる3つの世帯条件を確認

では、住民税が非課税となる条件について、具体的に見ていきましょう。

以下のいずれかに該当する場合、住民税は課されません。

  1. 生活保護を受けている
  2. 障害者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で、前年の所得が135万円以下である
  3. 前年の所得が各市区町村の基準を下回る

なお、1と2の条件は全国共通ですが、3に該当する所得の基準については、市区町村ごとに定められており、内容が異なる点に注意が必要です。

4. 住民税非課税世帯となる「所得のボーダーライン」は?

「住民税非課税世帯」に該当する所得水準について、ここでは兵庫県神戸市を例に確認してみます。

住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?3/6

住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?

出所:神戸市「住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?」

35万円×(本人+同一生計配偶者(※)+扶養親族数)+10万円+21万円

ただし、21万円は同一生計配偶者(※)または扶養親族がいる場合のみ加算

※同一生計配偶者とは、納税義務者と生計を一にする配偶者で、前年の合計所得金額が48万円以下の人

5. 住民税非課税世帯となる「収入のボーダーライン」は?

住民税が非課税となるかどうかは、先に触れた同一生計配偶者や扶養親族の人数に加え、収入の種類によっても基準が異なります。

所得は、収入金額から各種控除を差し引いて算出されるため、本章では神戸市の基準を分かりやすく「収入額ベース」に置き換えて見ていくこととします。

5.1 【単身世帯】住民税非課税世帯となる「収入のボーダーライン」

合計所得金額が45万円以下になる方

  • 給与収入のみで収入金額が100万円以下
  • 年金収入のみで収入金額が155万円以下(65歳以上)
  • 年金収入のみで収入金額が105万円以下(65歳未満)

5.2 【同一生計配偶者か扶養家族が1名いる場合】住民税非課税世帯となる「収入のボーダーライン」

合計所得金額が101万円以下になる方

  • 給与収入のみで収入金額が156万円以下の方
  • 年金収入のみで収入金額が211万円以下の方(65歳以上)
  • 年金収入のみで収入金額が171万3333円以下の方(65歳未満)

単身世帯の場合、給与収入のみであれば年収100万円以下、65歳以上で年金収入のみの場合は155万円以下が、住民税非課税となる一つの目安です。

これに対し、同一生計配偶者や扶養親族がいる世帯では、非課税となる収入基準はより高く設定されます。

とくに、65歳以上で年金収入のみの世帯では、収入の目安が211万円以下となり、単身世帯に比べて条件が大きく緩やかになっている点が特徴といえるでしょう。

このように、住民税が非課税となるかどうかは、世帯構成や収入の内容によって左右されます。

6. 【シニア世帯】「住民税非課税世帯」はどの程度の割合を占めている?

厚生労働省の「令和6年国民生活基礎調査」を参考に、年代ごとに住民税が「課税されている世帯」の割合を見ていきます。

【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合5/6

【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合

出所:厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」(第131表)をもとにLIMO編集部作成

  • 29歳以下:63.0%
  • 30〜39歳:87.5%
  • 40~49歳:88.2%
  • 50~59歳:87.3%
  • 60~69歳:79.8%
  • 70~79歳:61.3%
  • 80歳以上:52.4%
  • 65歳以上(再掲):61.1%
  • 75歳以上(再掲):54.4%

※  全世帯数には、非課税世帯及び課税の有無不詳の世帯を含む
総数には、年齢不詳の世帯を含む
住民税課税世帯には、住民税額不詳の世帯を含む

住民税が課税されている世帯の割合は、30~50歳代では9割弱となっていますが、60歳代になると79.8%まで低下します。

さらに、65歳以上では61.1%、75歳以上では54.4%と、年齢が高くなるにつれて割合は下がっていきます。

このように、加齢に伴い、住民税が課される世帯の割合は段階的に減少していることが分かります。

一般的に、年金生活に移行すると現役時代より収入水準が下がることに加え、65歳以上では公的年金に対する所得控除が手厚く設けられています。

また、遺族年金は非課税とされている点も特徴です。

こうした事情から、年金を受給している高齢者世帯は、住民税非課税世帯に該当しやすい傾向にあるといえるでしょう。

7. 年金だけで生活できている高齢者は「半数以下」

厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」から、老後のシビアな現実が浮き彫りになっています。

「公的年金・恩給を受給している世帯」のうち、収入の100%を年金・恩給だけで賄えている世帯は全体の43.4%にとどまりました。つまり、半数以上の世帯は「年金だけでは生活費が足りていない」状態なのです。

総所得に占める公的年金・恩給の割合別 世帯構成6/6

総所得に占める公的年金・恩給の割合別 世帯構成

出所:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況

  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:16.4%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:15.2%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%

年金の受給額には個人差がありますが、最低限の生活費すら年金だけではまかなえないケースも決して珍しくありません。

私的年金や十分な預貯金がない場合、定年後も働き続けたり、家族の支援を受けたり、あるいは各種の生活支援制度を活用するといった「年金以外の補填手段」を早い段階から検討しておくことが重要です。

8. 収入が減ったときに知っておきたい「住民税非課税」の基準

現役時代よりも大きく収入が下がる老後生活や、病気・失業などで急激に収入が落ち込んだ際に、家計の助けとなるのが「住民税非課税世帯」を対象とした様々な優遇措置です。

住民税が非課税になる主な要件は、以下の3つです。

  1. 生活保護を受けている
  2. 障害者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親であり、前年の所得が135万円以下である
  3. 前年の所得が、お住まいの市区町村が定める基準を下回っている

「仕事を辞めて治療に専念している」「求職中だが仕事が見つからない」といった事情で所得が大幅に減った現役世代の方や、年金収入がメインとなる高齢者世帯は、この要件に当てはまる可能性が十分にあります。

住民税非課税世帯になると、今回解説した以外にも複数の支援や優遇措置を受けられるケースがあります。「自分は対象になるかもしれない」と思ったら、利用できる制度を取りこぼさないためにも、一度お住まいの自治体の公式サイトを確認するか、役所の窓口で直接相談してみることをおすすめします。

参考資料