物価上昇や社会保険料の引き上げが続き、年金だけでは家計のやりくりが難しいと感じる高齢世帯が増えています。

厚生労働省の調査では、高齢者世帯の半数以上が「生活が苦しい」と回答しており、生活費が年金収入を上回る「家計赤字」に陥るケースも少なくありません。

本記事では、最新の統計データをもとに、70歳代の平均的な生活費や貯蓄額の実態を整理し、老後の家計を支えるために活用したいNISA・iDeCoなどの資産形成制度について解説します。

いまの家計状況を見直し、将来の生活に備えるヒントとしてお役立てください。

1. 【生活意識】高齢者世帯の55.8%が「生活が苦しい」と回答

厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査」によると、高齢者世帯の55.8%が「生活が苦しい」と感じているそうです。

つまり、2世帯に1世帯以上が経済的なゆとりを持てていないのが現状です。

この背景には、食料品や光熱費など生活必需品の値上げが続いていることに加え、介護保険料・後期高齢者医療保険料の引き上げ、さらには高額療養費制度の見直しに関する議論など、家計を直撃する制度改定が重なっている点が挙げられます。

特に、公的年金のみを主な収入源とする無職世帯では、生活費が年金収入を上回る「家計赤字」の状態にあるケースも少なくありません。

限られた年金のなかで、食費や医療費、光熱費などの固定支出をまかなうことに苦労している高齢者が増加傾向にあります。

2. 【70歳代】1カ月の平均的な生活費はどのくらい?

総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」から、二人以上の世帯のうち65歳以上・無職世帯の家計収支を見てみましょう。

【二人以上世帯】65歳以上の無職世帯の家計収支2/5

【二人以上世帯】65歳以上の無職世帯の家計収支

出所:総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」

2.1 【70歳〜74歳】生活費の内訳

  • 消費支出:26万9015円
  • 非消費支出:3万4824円
  • 実収入:27万5420円
  • 収支:ー2万8419円

2.2 【75歳以上】生活費の内訳

  • 消費支出:24万2840円
  • 非消費支出:3万558円
  • 実収入:25万2506円
  • 収支:ー2万892円

70〜74歳では毎月約2万8000円の赤字、75歳以上でも約2万1000円の赤字が続いており、いずれの世代も年金収入だけでは生活費を賄いきれていない状況がうかがえます。

年齢を重ねるにつれて外出機会や消費支出が減るため赤字幅はやや縮小する傾向にありますが、光熱費・医療費などの固定支出はむしろ増加しやすい点には注意が必要です。

3. 【70歳代】貯蓄額の平均値と中央値はいくら?

J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」から、70歳代の貯蓄額を見てみましょう。

※なお、これから確認する金融資産保有額には、預貯金以外に株式や投資信託、生命保険なども含まれます。また、日常的な出し入れ・引き落しに備えている普通預金残高は含まれません。

70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額(金融資産非保有世帯含む)3/5

70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額(金融資産非保有世帯含む)

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」をもとにLIMO編集部作成

3.1 【70歳代】貯蓄額の平均値と中央値

  • 70歳代:平均値1923万円、中央値800万円

一部の高額資産世帯が全体の平均を押し上げており、実際には多くの世帯が800万円前後の資産規模にとどまっているのが現実です。

この結果からは、シニア世帯間の資産格差が拡大している構図も読み取れます。

年金だけに依存する生活では、物価上昇や医療・介護費の負担増に十分対応できないケースも想定されるため、早めの老後資金対策が不可欠です。

4. 老後資金はどうやって作ればいい?|NISAやiDeCoを上手に活用しよう

将来の生活費を確保するためには、貯蓄だけでなく「資産運用」を取り入れることが重要です。

特に、税制優遇を活用しながら効率的に資産を増やせる制度として注目されているのが、NISA(少額投資非課税制度)とiDeCo(個人型確定拠出年金)です。

どちらも運用益が非課税となる点で共通していますが、目的・運用期間・引き出しの自由度に大きな違いがあります。

4.1 NISAとは?

NISAは、株式や投資信託などの運用益にかかる約20%の税金が非課税になる制度です。

2024年からは「新しいNISA」として制度が拡充され、非課税保有限度額は生涯で1800万円(うち成長投資枠1200万円)と大幅に拡充されました。

新NISA4/5

新NISA

出所:金融庁「NISAを知る」

つみたて投資枠

  • 投資対象商品:金融庁の基準を満たした投資信託(手数料が低く、長期投資に適したもの)
  • 年間投資枠:120万円まで
  • 投資方法:積立

成長投資枠

  • 投資対象商品:上場株式、投資信託、ETF、REITなど(投資信託はつみたて投資枠対象外の商品も含む)
  • 年間投資枠:年間240万円まで
  • 投資方法:一括・積立

NISAはいつでも自由に引き出せる柔軟性があり、老後資金づくりはもちろん、教育費や将来の医療費など、ライフプランに合わせた活用が可能です。

4.2 iDeCoとは?

一方のiDeCo(イデコ)は、自ら毎月掛金を拠出して運用する個人型の確定拠出年金制度です。

拠出した掛金が全額所得控除の対象となるほか、運用益も非課税で再投資されます。

iDeCo(イデコ)の特徴5/5

iDeCo(イデコ)の特徴

出所:iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)の特徴」

さらに、以下のように受け取り時にも税制優遇があり、課税負担を大きく抑えられる仕組みになっています。

  • 一時金で受け取る場合:退職所得控除
  • 年金形式で受け取る場合:公的年金等控除

ただし、原則として60歳まで引き出せない点には注意が必要です。

長期的に老後資金を積み立てたい人や、税負担を抑えながら計画的に資産を形成したい人に適した制度といえます。

5. まとめ

高齢者の多くが「生活が苦しい」と感じている背景には、年金額の伸び悩みと生活必需品の価格上昇、社会保険料の負担増といった要因が重なっています。

特に70歳代のシニア世帯では、平均で月2万円前後の赤字が続いており、貯蓄の取り崩しで生活を支えているケースも少なくありません。

こうした状況を踏まえると、老後の家計を安定させるには支出の見直しだけでなく、資産を「育てる」という視点が不可欠です。

NISAやiDeCoなどの税制優遇制度を活用した長期的な資産形成は、将来の生活費や医療・介護負担に備える有効な手段の1つです。

現役世代のうちから老後を見据え、収入・支出・運用をバランスよく設計していきましょう。

※金額等は執筆時点での情報にもとづいています。

参考資料