この記事の読みどころ
化学セクターを総合化学、電子材料、スペシャリティー化学の3つのサブセクターに分類して株価パフォーマンスを検証してみました。
サブセクター別ではスペシャリティー化学が相対的に健闘した一方で、電子材料がTOPIXを下回るパフォーマンスとなりました。
2016年は世界景気の不透明感が増す中で、M&A、新興国経済の底入れと新技術新製品の動向がカギを握ると思われます。
総合化学セクターで予想外に健闘したのは?
筆者は、2015年夏以降、総合化学の基幹事業である石油化学の利益がピークアウトすると予想していました。しかし、その後の原油安が原料ナフサ安につながったことにより、収益はスプレッド拡大の恩恵を受けて堅調に推移しました。
2016年3月期第3四半期(2015年10-12月期)以降の原料価格も想定より安く推移しそうなため、今期の収益は大幅に悪化しないようです。ただ、製品価格は後ズレで軟化するため、年明け以降はスプレッド拡大がピークアウトするでしょう。
このサブセクターの中では、8月後半の中国ショックによる株価暴落後に、三井化学(4183)の株価の戻りが目を引きました。これは、想定外のスプレッド改善を市場が評価したものと考えます。
総じて撃沈状態だった電子材料セクター
電子材料セクターは、3つのサブセクターの中で最も悲惨な結果に終始しました。対TOPIXで負けた要因は次の3つであると考えます。
(1)ノートPC向けの配線板材料からスマホなどモバイル系材料への不十分な事業転換
(2)韓国、台湾に加えて中国勢による電子材料市場への急激な参入と価格競争
(3)裏目に出た日系エレクトロニクス企業との強い絆
唯一、TOPIXをアウトパフォームした日東電工(6988)のケースでは、液晶TVの大型化・薄型化に対応した新型偏光板の市場投入が始まるなどの企業力強化が大きな要因です。
TOPIX上回るパフォーマンスを記録したスペシャリティー化学
スペシャリティー化学とは、ファインケミカル製品、高機能化学製品を総称した言い方です。大手企業が手掛けにくいニッチ市場で活躍する企業群で、利益の成長性、安定性、好財務内容に特徴があります。
2015年のパフォーマンスでは、日産化学(4021)、信越ポリマー(7970)、ダイセル(4202)などのパフォーマンスが好調でした。
円安効果も貢献しましたが、日産化学は農薬事業、信越ポリマーは自動車向けキースイッチ、ダイセルはエアバッグ向けインフレータ(ガス発生装置)など高シェア、高利益率製品が業績を牽引しました。
特筆すべきは、ニッチ分野で高いシェアを有するため、原料安メリットが増益に寄与したこと。2016年上期まで少なくとも原油安が続くことを前提にすると、まだ暫くこのサブセグメントは注目されるかもしれません。
2016年の化学セクターはどう動くか
2016年の経済環境、事業環境が不透明で見通しが難しい、ということは各社への最近の取材でよく聞く話です。
筆者は2016年前半までは、収益の安定したスペシャリティー化学セクターを保持し、夏以降の後半は原油市況を睨みながら徐々に大手総合化学セクターに注目する投資方針で良いのではないかと考えます。
【2015年12月31日 投信1編集部】
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LIMO編集部