3.3 雇用保険から支払われるお金3:65歳以上が対象「高年齢求職者給付金」
高年齢求職者給付金は、65歳以上で離職した人を対象に支給される給付金です。
高年齢求職者給付金【支給要件】
- 対象者:高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で失業した人
- 支給要件:下記の全ての要件を満たした人
- 離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上ある
- 失業の状態にある:離職し「就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力(健康状態・家庭環境など)があり積極的に求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態」を指す
高年齢求職者給付金【いくらもらえる?】給付金額
- 支給額
- 被保険者であった期間が1年未満:30日分の基本手当相当額
- 被保険者であった期間が1年以上:50日分の基本手当相当額
65歳未満の人が受け取る「失業手当」と異なり、4週間ごとの失業認定を経て分割で受給する方式ではなく、この給付金は原則としてまとめて一度に支給される点が特徴です。
4. 【2026年4月から大幅緩和へ】在職老齢年金の「支給停止調整額」が51万円→62万円に
2025年6月13日、年金制度改革関連法が成立し、働き方の多様化やライフスタイルの変化に対応した制度へと一歩進むことになりました。
今回の改正では、パート勤務の人の社会保険加入範囲の拡大(いわゆる「106万円の壁」の見直しにつながる内容)や、遺族年金の支給要件の改善(遺族厚生年金の男女差の解消や、子どもの遺族基礎年金の受給条件緩和)など、注目すべき改定が含まれています。
その中でも特に、働き続けるシニアの家計に影響が大きいのが「在職老齢年金制度の見直し」です。
本章では、この改正内容に焦点を当てて解説していきます。
4.1 「在職老齢年金制度の見直し」について
在職老齢年金とは、60歳以降も働きながら老齢厚生年金を受け取る際、年金額(※)と給与・賞与などの報酬を合算した金額が一定の基準を上回ると、その分だけ年金が一部または全額支給停止となる仕組みを指します。
(※)老齢基礎年金は対象外となり、全額支給されます。
支給停止調整額(年金が全額支給される基準額)
この制度で用いられる支給停止調整額は、これまでも毎年度段階的に調整が進められてきました。
- 2022年度:47万円
- 2023年度:48万円
- 2024年度:50万円
- 2025年度:51万円
- 2026年度:62万円
今回の見直しでは、基準となる支給停止調整額が2026年4月から大きく引き上げられ、51万円(2025年度)から62万円へと変更されることになりました。
厚生労働省の試算によれば、この改正によって新たに約20万人が年金を減額されることなく受け取れるようになる見込みです。
基準額の引き上げにより、「年金が減るのでは」と心配して就労時間や収入を抑えていたシニア世代も、これまでより幅広い働き方を選択しやすくなると考えられます。
5. まとめ
40歳代・50歳代のうちに新NISAやiDeCoで「お金を育てる」ことは重要ですが、同時に「申請しないともらい損ねる公的支援」へのアンテナを張ることも忘れてはいけません。
今回ご紹介した「加給年金」や「高年齢雇用継続給付」などの制度は、待っているだけでは支給されません。2026年4月からは在職老齢年金の支給停止基準が「62万円」へ大幅に緩和されるなど、制度は常に変化しています。
老後の不安を解消し、60歳以降の選択肢を広げる鍵の一つが、こうした「攻め(投資)」と「守り(公的支援)」の組み合わせと言えるでしょう。
参考資料
- 日本年金機構「初めて老齢年金を請求するとき」年金請求書(国民年金・厚生年金保険 老齢給付)様式第101号
- 日本年金機構「か行 加給年金額」
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
- 厚生労働省「Q&A~高年齢雇用継続給付~」
- 厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」
- 日本年金機構「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」
- 厚生労働省「再就職手当のご案内」
- 厚生労働省「離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
マネー編集部社会保障班

