最も寒さが厳しくなる1月。各地から雪の便りが届く中、シニア層にとって次に待ち遠しいのは、2月15日の年金支給日かもしれません。
家計にとっては嬉しい年金。しかし、75歳以上の後期高齢者では、年金などの収入が医療費の負担につながり、悩まされている人も少数派ではないようです。
そのため、近年は自分自身の収入を「中途半端な収入」と表現する後期高齢シニアも。
今回は、後期高齢者の医療費自己負担が増える収入基準について紹介します。また、75~90歳代の平均年金月額や、「中途半端な収入」になりやすいケースも解説します。
1. 75歳以上の後期高齢者で「中途半端な収入」ってどういう意味?
近年、「中途半端な収入」が原因で、収入と制度の狭間で悩む後期高齢者は少なくありません。なかでも、収入が影響しやすいのは「後期高齢者医療制度」で、高齢者の家計に負担がかかりやすいようです。
1.1 【後期高齢者医療制度】年金+αで「現役並み」と判定される条件とは?
75歳以上が加入する「後期高齢者医療制度」の窓口(自己)負担割合は、全員一律ではありません。所得に応じて、下記の1~3割のいずれかが適用されます。
1割:現役並み所得者、2割該当者に該当しない方
2割:一定以上の所得がある人:下記1、2の両方に該当する場合
- 同じ世帯の被保険者の中に課税所得が28万円以上の人がいる
- 同じ世帯の被保険者の「年金収入」+「その他の合計所得金額」の合計額が以下に該当する。(1人の場合は200万円以上、2人以上の場合は合計320万円以上)
3割:現役並み所得者
同じ世帯の被保険者の中に課税所得が145万円以上のかたがいる場合(注)一定の基準・要件を満たす場合、窓口負担割合が1割又は2割になるケースがある
2025年10月より、2割負担の後期高齢者に対する「配慮措置」が終了しました。そのため、中途半端な収入によって2割負担に該当した人は、医療費の負担を厳しく感じるケースがあります。
2. 【75歳~ 後期高齢シニア】医療費の自己負担割合が「3割」になってしまう人のはこんな人!
75歳以上の方で、年金やその他の所得が以下の「ボーダーライン」付近にある人は、いわゆる「中途半端な収入」による負担増のリスクが高まります。
所得金額がボーダーラインを超えると、医療費の自己負担は増えます。しかし、下記のようなケースでボーダーラインを微妙に超えてしまう後期高齢者は、少数派ではないようです。
- 企業年金があり、医療費が3割負担
- 厚生年金の加入期間が長かったため、医療費が2割負担
- 自分の年金は少ないが、配偶者の年金額が影響して2割負担
高齢期における年金などの収入は、多いに越したことはありません。一方で、ほんの少しボーダーラインを超えただけで、医療費の負担が増えると家計にも影響します。
健康リスクが高いからこそ、ボーダーラインを微妙に超える「中途半端な収入」は、後期高齢者を悩ませる要因の1つです。
家計の負担を和らげるため、まずは「高額療養費制度」による1ヶ月の支払い上限額を把握し、支出の目安を立てておきましょう。
あわせて、年間の医療費が一定額を超えた場合は「医療費控除」を忘れずに申告することが大切です。これらの公的制度を適切に活用することで、税金の還付など実質的な負担軽減が期待できます。
3. 【75歳~ 後期高齢シニア】国民年金・厚生年金「平均年金月額」はどのくらい?
では、75歳以上の後期高齢者は、公的年金をどれくらい受給しているのでしょうか。平均年金額は、厚生労働省年金局が公表する「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」が参考になります。
70~90歳代における後期高齢者の平均年金月額を紹介します。
3.1 【75~79歳】国民年金と厚生年金の平均年金月額
70歳代の後期高齢者である75~79歳の平均年金額は、以下のとおりです。
国民年金
- 75歳:5万9659円
- 76歳:5万9555円
- 77歳:5万9349円
- 78歳:5万9124円
- 79歳:5万8676円
厚生年金(国民年金を含む)
- 75歳:15万1410円
- 76歳:15万1241円
- 77歳:15万962円
- 78歳:15万862円
- 79歳:15万3115円
3.2 【80歳代】国民年金と厚生年金の平均年金月額
80歳代の平均年金月額も見てみましょう。
国民年金
- 80歳:5万8623円
- 81歳:5万8269円
- 82歳:5万8003円
- 83歳:5万7857円
- 84歳:5万9675円
- 85歳:5万9425円
- 86歳:5万9228円
- 87歳:5万9204円
- 88歳:5万8756円
- 89歳:5万8572円
厚生年金(国民年金を含む)
- 80歳:15万3729円
- 81歳:15万5460円
- 82歳:15万7744円
- 83歳:15万9994円
- 84歳:16万2555円
- 85歳:16万3947円
- 86歳:16万5577円
- 87歳:16万5557円
- 88歳:16万6200円
- 89歳:16万6767円
3.3 【90歳代】国民年金と厚生年金の平均年金月額
90歳代における公的年金の平均月額は、以下のとおりです。
国民年金
- 90歳代以上:5万5633円
厚生年金(国民年金を含む)
- 90歳代以上:16万4027円
3.4 75歳以上の医療費負担は「年金+αの所得」で決まる
75歳以上の医療費負担は「年金+αの所得」で決まります。
国民年金のみ(年約70万円前後)なら1割負担で済みますが、厚生年金(年約180万~190万円前後)受給者は2割負担の境界線(200万円)の目前にいます。
200万円の境界線に位置する2割負担も切実ですが、さらに所得が積み重なると、現役並みの「3割負担」が現実味を帯びてきます。
次では「3割負担」の対象となりやすいケースを紹介します。
4. 【75歳~ 後期高齢シニア】医療費の自己負担割合が「3割」になりやすいのはこんな人!
後期高齢者の世帯で、医療費が3割負担となりやすいのは、次のようなシニア層です。
- 企業年金による公的年金への上乗せ
- 同じ期間に複数の個人年金保険を受け取っている
- 不動産所得で定期的な収入を得ている
- 満期保険金や投資の利益で一時的な収入増加
個人年金保険に複数加入している場合は、受給期間をずらしておけば、3割負担を避けられる可能性があります。また、満期保険金や投資で一時的に収入が増加すると、1年間は3割負担となる可能性があります。
しかし、後期高齢者医療制度は、自己負担の割合が毎年見直されます。通常の収入額に戻れば、翌年からは再び1割や2割負担に戻るケースも少なくありません。
公的年金が主な収入源となるシニア層にとって、少しでも収入を増やしたいところです。しかし、中途半端な収入によって、制度の恩恵が受けられなくなるケースは、決して珍しいことではないと言えるでしょう。
5. 将来の「手取り」を守るために――出口戦略を見据えた資産形成を
後期高齢者が収入を増やそうとする際は、「制度を味方につけられる方法」を考えることが大切です。中途半端な収入増加によって、制度の恩恵を受けられず、結果として家計がマイナスになってしまっては本末転倒です。
これは、現役世代にも同じことが言えます。老後に向けた貯蓄を考えているなら、後期高齢者となる未来を予測し、「税制優遇」を活用しながらの資産形成が重要です。
新NISAの非課税メリットやiDeCoの所得控除を賢く活用すれば、効率よく老後の備えを厚くすることができます。
ただし、社会保障制度や税制は時代とともに変化し続けます。
将来「中途半端な収入」で後悔しないためには、単に資産を増やすだけでなく、それを「いつ、どう受け取るか」という出口戦略まで見据えておくことが大切です。
常に最新の情報をキャッチして、ご自身にとって最適な「お金の得方」を模索してみてくださいね。
参考資料
児島 裕子