「人生100年時代」と言われる今、定年後も現役で働き続けるシニア世代が一般化しています。
2025年11月に株式会社オースタンスが公表した意識調査の結果では、シニアの60.0%が現在も仕事をしており、さらにその約半数が「たとえ生活に困らないお金があっても働き続けたい」と回答しました。
シニアにとっての仕事は、単なる「生活費のため」だけではなく、「人とのつながり」や「健康維持」といった生きがいを支える重要な活動へと変化しています。
その一方で「医療や介護への不安」は根強く、不測の事態に備えるベースとしての年金の役割は大切であることには変わりありません。
この記事では、今のシニア世代の年金受給事情をデータで解説するとともに、現役時代の働き方や過ごし方が老後の根金額にどう影響するかも見ていきます。
1. 【最新調査】経済的自立を超えた「シニアの働く価値観」
2025年11月23日、株式会社オースタンスが公表したシニアの「仕事とお金」に関する意識調査の結果からは、現代のシニアが仕事に求めているリアルな価値観が見えてきました。
調査概要:「仕事とお金」に関する意識調査
- 調査方法:Webアンケート
- 調査対象:「趣味人倶楽部」45歳以上の会員
- 有効回答数:548人
- (40代:2.9%、50代:17.9%、60代:31.4%、70代:36.4%、80代:11.5%)
- 調査日:2025年11月15日~11月18日
1.1 半数以上が現役。働く理由は人それぞれ
現在働いているシニアは全体の6割に達しており、その理由は以下の通りです。
- 1位:生活費のため(482点)
- 2位:人とのつながりを持ち続けたいから(278点)
- 3位:老後資金を増やすため(256点)
- 4位:体を動かしていたい・健康のため(246点)
- 5位:仕事・活動そのものが楽しいから(243点)
1位に「生活費のため」、3位に「老後資金を増やすため」がランクインしています。その一方で「人とのつながり(2位)」「健康のため(4位)」「仕事そのものが楽しい(5位)」など、お金では測れない部分を大切にする傾向も顕著です。
また、仮に経済的な不安が解消されたとしても、約半数(49.5%)のシニアが継続して働くことを希望しています。
これは、仕事が「義務」から「自己実現や社会貢献」の手段へとシフトしていることを表していると言えそうです。
1.2 それでも拭えない「もしも」への不安
意欲的に働くシニアが多い一方で、お金に関する不安として以下のような項目が上位に挙がっています。
- 病気など、医療・介護にかかるお金:66.6%
- 突然のトラブル(事故・災害など):48.0%
- 将来の物価上昇や年金制度の変化:41.8%
健康や生きがいのために働く一方で、「突然の病気や介護で働けなくなった時」の不安が影を落としています。
自分の意思や体力だけで維持できる「就労収入」は、決して終身で保障されているわけではありません。だからこそ、不測の事態でも生涯途絶えることのない「公的年金」は、シニアが安心して社会活動に挑戦し続けるためのセーフティネットとして、その重要性がより高まっています。
では、実際に受け取れる金額はいくらなのでしょうか。改定された最新の年金額を確認しましょう。
2. 公的年金、2025年度分は前年より1.9%増額
公的年金の受給額は、物価や賃金の動向を踏まえて年度ごとに見直しがおこなわれます。
2025年4月からの年金額の改定について確認してみましょう。
2025年度の年金額は、前年度から1.9%引き上げられました。
2.1 2025年度の国民年金と厚生年金の年金額例
- 国民年金(老齢基礎年金(満額):1人分):6万9308円(+1308円)
- 厚生年金:23万2784円(夫婦2人分)(+4412円)
※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金の満額は月額6万9108円(対前年度比+1300円)
※厚生年金は「男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)」で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準
2.2 年金支給日
公的年金は、「偶数月の15日(土日の場合は直前の平日に前倒し)」に、前月までの2カ月分がまとめて支給されるルールです。
そのため、この改定率は6月に支給された「2025年4月分・5月分」の年金から適用されています。
なお、今回の改定内容公表時、「多様なライフコースに応じた年金額」として、現役時代の働き方や収入別での年金額の例も提示されています。

