2. 政府が掲げる総合経済対策の全体像。その中核をなす「3つの柱」を解説
政府は、現在の日本経済を、長引くデフレやコスト削減を重視する風潮から脱却し、持続可能な「成長型経済」へと移行するための重要な転換期と位置づけています。デフレへの後戻りを防ぎ、確かな成長路線を確立できるかが問われています。
このような背景から、これまでの政策を抜本的に見直し、経済成長の果実を国民へ広く分配することで、生活の豊かさを実感できる社会の実現を目標としています。
今回発表された総合経済対策は、以下の3つの柱から成り立っています。
2.1 第1の柱:物価高騰に対応し、生活の安全保障を確保
政府は「物価高から暮らしと職場を守る」とのスローガンを掲げ、各地域の実情に応じた支援を強化する方針です。
具体策として、重点支援地方交付金を増やして冬季の電気・ガス料金の負担軽減を図ります。また、子育て世帯には「物価高対応子育て応援手当(仮称)」として子ども1人につき2万円が支給される予定です。
加えて、中小企業が賃上げを実施しやすい環境を整備するため、国や地方自治体との契約単価を見直し、公共事業などにおける価格転嫁を推進することも盛り込まれています。
2.2 第2の柱:「強い経済」を実現するための危機管理投資と成長投資
日本経済の潜在成長率を高め、「強い経済」を構築することを目指し、戦略的な分野へ集中的に投資を強化する方針が示されました。
投資の重点分野として、AIや半導体、サプライチェーンの強靭化といった経済安全保障関連のほか、食料・エネルギーの安定供給、防災・減災、国土強靭化などが挙げられています。
このほか、先端科学技術の研究開発支援、非正規雇用者を含む多様な人材へのリスキリング(学び直し)機会の提供、NISA制度の拡充を通じた個人の資産形成の促進など、将来を見据えた投資も計画されています。
2.3 第3の柱:防衛力と外交力の強化
国民の安全と繁栄を確保し、「強い日本」を実現するための取り組みも進められます。
具体的には、防衛力の根本的な強化と体制の整備、自衛隊員の待遇改善を図るとともに、多角的な経済外交を積極的に展開していく方針です。
また、日米間の関税合意を土台とする「日米戦略的投資イニシアティブ」(総額約80兆円)を着実に実行し、企業の資金繰りを支援するなど、国際社会における連携も強化していくとしています。
