「預貯金から投資へ」というスローガンを耳にする方も多いでしょう。しかし、これまで預貯金しか持たなかった方が株式や投資信託といったリスク性資産にいきなり投資をするということは考えられません。モノには順序がありますし、また人によって取りうるリスクが異なります。今回は、預貯金1000万円を保有する方が次にどのようなステップで資産形成をすればよいかを考えます。

資産は全体で考える

一口に資産といっても、預貯金、生命保険、債券、投資信託、株式、不動産など様々な資産があります。

そして、その資産もリスクが異なり、元本価格を割れてしまう恐れのない預貯金から、毎日市場価格にさらされる市場性資産までこちらも様々です。

こうした各資産ですが、それぞれを見極めるのは当然ですが、もっとも重要なことは資産全体としてどうかということです。

これまでしっかり預貯金を貯めてきたので、「さあ、リスクをとって資産を増やしていこう」などとすると「証券会社のカモ」、もっというと「カモがネギをしょってきた」といえるかもしれません。

資産形成はリスクが小さい金融資産・金融商品からスタートすべきです。そして、自分のリスク許容度を確認しながら、資産のアップサイドを目指していきましょう。くれぐれもいきなりリスクの高い資産に手を出さないようにしたいものです。

預貯金の次は保険で決まり

預貯金がある方はまず検討すべきは生命保険です。

生命保険は既に多くの方が加入しているかもしれませんが、あらためてその加入内容も含めて見直すべきでしょう。

若いうちに加入した保険であれば、家族構成が変わるごとに見直しをしてもよいですし、子供が手離れすれば、不必要な保険であれば解約をしてもよいでしょう。定期保険などの保険は掛け捨てであれば解約をしても解約返戻金などはほとんどないかもしれませんが、終身保険であれば解約返戻金はあります。

もっとも、保険はいらないという方は少ないでしょう。

「人生100年時代」ともいわれ、多くの方は定年退職後も数十年は生活をしなくてはいけなくなりつつあります。

医療保険や介護保険の必要性、また老後資金をしっかりと貯える必要があります。保険と市場性資産の組み合わせである変額保険などは検討の余地があるでしょう。生命保険の非課税枠の活用も忘れずにしておきたいところです。

投資信託を始めるならとりあえず「つみたてNISA」

資産の中での生命保険の位置づけが決まったところで、次に検討すべきは投資信託でしょう。個人向け国債という選択肢もありますが、利回りを考えると物足りないという方も多いのではないでしょうか。その場合には検討すべきは投資信託となるでしょう。

もちろん、「株式投資が大好きで、自分で銘柄選択もできる」という方は株式投資でもよいですが、投資信託には投資信託ならではの良さがあります。

  • 海外、特に新興国の資産にも簡単にアクセスできる
  • バランス型ファンドの中にはリスク調整が可能な金融商品がある
  • プロ投資家が運用してくれる

ただし、上記のようなファンドの多くはアクティブファンドで信託報酬がインデックスファンドと比べると割高に映ります。

もっとも、割高な理由はあるのですが、どうしても運用コストの安いインデックスファンドが良いという場合には、非課税枠のある「つみたてNISA」が良いでしょう。

つみたてNISAは、金融庁が厳選した投資信託のみのラインナップとなっています。したがって、そこは皆さん安心できる投資信託ばかりですので、その中から選ぶというのが王道です。

ただ、つみたてNISAの枠だけでは(開始年齢によって最終的に活用できる金額は変わります)、決して老後資金をまかなえるわけではありませんので、いやがおうにも投資信託を選別していかなくてはなりません。

定年退職後に手元資金があり、リスクを多少取りながらも増やしていきたいという方には、リスク調整型のバランス型ファンドが適切な金融商品かと思います。

株式投資はどうしてもという方だけにおススメで万人向けでない

株式投資はキャピタルゲインだけではなく、配当や株主優待等、様々なメリットがあります。

ただ、ファンダメンタルズなどのメンテナンスをするのに時間がかかるため、愛好家を除いてはあまり手を出すべき資産ではないでしょう。

また、株式といっても多くの方は日本株への投資を選択されるかと思いますが、日本株は全体でいうと循環株です。景気の良い時に売って、景気の悪い時に買うという長い目で見たトレーディングをする必要があります。

資産形成はリスクの小さい順に

世間では「貯蓄から投資へ」という掛け声のもとに有価証券投資をさせたい人がたくさんいます。ちなみに「貯蓄」には有価証券を含むので、このフレーズ自体がおかしいなという印象です。正確に言えば「預貯金から投資へ」です。

外野の声は無視をして、まずは自分が取りうるリスクの額を考えましょう。仮に、有価証券投資が資産全体の20%であったとしましょう。市場が暴落してその価格が半分になっても10%減ですみます。まだ何とか立て直せるレベルです。

ただ、すべての資産が有価証券であるとして、その価格が半分になると資産の半分を失うことになります。これでは立て直すのにも一苦労です。

預貯金1000万円がみえてくる中では、生命保険=>投資信託=>株式の順に検討してみてはいかがでしょうか。

最後に:住宅購入と住宅ローンをどうとらえるか

実はここまであえて議論をせずにきましたが、個人にとって住宅投資が一番大きな投資ともいえます。

頭金を入れるだけで数千万円の不動産を購入するのですから、立派なレバレッジ投資です。バランスシートの左には資産の住宅、そして右には借入が立ちます。

不動産価格が上がると思えば住宅を購入すればいいですし、住宅ローン減税も条件によっては活用できます。過去10年程度を振り返れば、住宅を購入できた人は「勝ち組」でそうでなかった人にはメリットはあまりないと言えます。

持家というエッセンスはポートフォリオ全体に大きなインパクトを与えます。くれぐれも慎重に検討したいところです。

青山 諭志