2.3 雇用関連3:65歳以上が対象「高年齢求職者給付金」
高年齢求職者給付金は、65歳以上の人が離職した場合に受け取れる給付金です。
高年齢求職者給付金【支給要件】
- 対象者:高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で失業した人
- 支給要件:下記の全ての要件を満たした人
- 離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上ある
- 失業の状態にある:離職し「就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力(健康状態・家庭環境など)があり積極的に求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態」を指す
高年齢求職者給付金【いくらもらえる?】給付金額
- 支給額
- 被保険者であった期間が1年未満:30日分の基本手当相当額
- 被保険者であった期間が1年以上:50日分の基本手当相当額
なお、65歳未満が対象となる「失業手当」が4週間ごとの失業認定を経て段階的に支給されるのに対し、この給付金は一度にまとめて支給される点が特徴です。
3. コラム:【51万円から62万円に】在職老齢年金の「支給停止調整額」が大幅緩和へ
2025年6月13日、国会で年金制度改革関連法が可決され、より多様な働き方やライフスタイルに対応できる仕組みへと見直しが進みました。
今回の改正では、パート勤務者の社会保険加入範囲の拡大(いわゆる「106万円の壁」に関連)や、遺族年金の改善(遺族厚生年金の男女差是正や、子どもの遺族基礎年金の受給要件緩和)など、注目したい内容が複数あります。
ここでは、その中でも働く高齢者に特に影響の大きい「在職老齢年金制度の改正」に焦点を当てて解説します。
3.1 来年度に見直しとなる「在職老齢年金制度」とは?
在職老齢年金とは、60歳以降に老齢厚生年金を受け取りつつ働いている人について、年金額(※)と給与・賞与などの報酬の合計が一定基準を超えた場合に、年金の一部または全額が支給停止となる仕組みです。
(※)老齢基礎年金は対象外となり、全額支給されます。
支給停止調整額(年金が全額支給される基準額)
この支給停止の基準となる額は、これまで毎年度少しずつ調整が行われてきました。
- 2022年度:47万円
- 2023年度:48万円
- 2024年度:50万円
- 2025年度:51万円
- 2026年度:62万円
今回の改正では、2026年4月から支給停止基準額が51万円(2025年度)から62万円へ大幅に引き上げられることが決定しました。
厚生労働省の試算によれば、この見直しによって新たに約20万人が年金を満額受け取れるようになります。
基準額の引き上げにより、年金の減額を気にして就労を抑えていたシニアも、これまでより柔軟に働き方を選択できるようになると考えられます。
4. まとめ
「人生100年時代」と呼ばれるいま。新NISA・iDeCoで「お金を育てる」視点とともに、今回ご紹介したような公的支援を確実に受け取るための知識も大切です。
その多くが、支給要件を満たしても「申請手続きをしないと振り込まれない」、申請主義をとっている点もぜひ心に留めておきましょう。
また、2026年4月からの在職老齢年金のルールが大幅に緩和されるように、公的な制度は常に変化しています。
老後資金の不安を和らげ、60歳以降の選択肢を広げるためにも、「手続きしないと振り込まれない」公的支援への関心を高め、最新情報を把握しておくことが大切です。
参考資料
- 日本年金機構「初めて老齢年金を請求するとき」年金請求書(国民年金・厚生年金保険 老齢給付)様式第101号
- 日本年金機構「か行 加給年金額」
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
- 厚生労働省「Q&A~高年齢雇用継続給付~」
- 厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」
- 日本年金機構「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」
- 厚生労働省「再就職手当のご案内」
- 厚生労働省「離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
マネー編集部社会保障班

