5. まとめにかえて
本記事で見てきたように、シニア世代の生活は、平均寿命と健康寿命の大きなギャップに起因する医療・介護費用の増加リスクと、年金収入だけでは賄えない生活費という、二重の課題に直面しています。
特に、70歳代の貯蓄額は平均値と中央値に大きな乖離があり、約2割の世帯が貯蓄ゼロであるという現実は、老後資金に対する「備えの格差」を浮き彫りにしています。 また、65歳以上の無職夫婦世帯が毎月約3万4000円の赤字を計上している状況は、多くの世帯が貯蓄の取り崩しによって生活を維持していることを示唆します。
老後の「健康ではない期間」に安心して生活するためには、現役時代から計画的な資産形成と健康維持の両面からの準備が不可欠です。
まずはご自身の家計の健全性をエンゲル係数などの指標で把握し、将来を見据えた具体的な行動を始めることが、豊かな老後を迎えるための第一歩となるでしょう。
参考資料
- 厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」
- 総務省「2024年(令和6年)労働力調査」(2025年1月公表)
- 厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」
石津 大希