4. まとめにかえて
今回は、公的介護保険制度の最新動向をふまえ、介護保険の基本と現在の課題などを解説しました。介護保険制度は、費用が約4倍に急増し、保険料も上昇するなど、財政的な持続可能性の維持が大きな課題となっています。この課題解決のため、厚生労働省は、所得の高い高齢者の2割負担の対象を拡大する議論を本格化させました。
この背景には、高齢者世帯の平均貯蓄額が2022年時点で約1625万円に上るなど、現役世代と比較して高い資産水準にあるという実態があり、所得だけでなく資産の保有状況も勘案した、より公平な負担の在り方が模索されています。
特に注目すべきは、新たに2割負担となる人でも、預貯金などの資産が少ない場合は1割負担を維持するという「資産状況による配慮案」が示された点です。これは、「所得」と「資産」の両方を考慮することで、高齢者間の負担の公平性を確保しつつ、必要なサービスへの利用控えを防ぐための重要な一歩と言えます。この機会に自身の年齢区分に応じた給付条件と、この負担の公平化に向けた議論の動向を注視してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省老健局「介護保険制度の概要」
- 厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え」
- 厚生労働省「介護保険事業状況報告の概要(令和7年8月暫定版)」
- 厚生労働省「第129回社会保障審議会介護保険部会の資料について」
- 財務省「財政制度分科会(令和7年11月11日開催)資料一覧・社会保障②」
村岸 理美
