冬の足音が近づく今、現役世代の私たちにとって、目前の家計だけではなく老後の暮らしも大きな関心事ですね。

総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上の単身無職世帯の平均消費支出(いわゆる生活費)は月額14万9286円。

単身者が最低限の生活を送るために、ひと月あたり「約15万円」程度の収入が目安となりそうです。

【グラフ】65歳以上の単身無職世帯の平均消費支出(いわゆる生活費)は月額14万9286円

65歳以上の単身無職世帯の家計収支

出所:総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」

では、公的年金だけでこの目安額、あるいはそれ以上の月額15万円を受け取れている人は、実際どれだけいるのでしょうか?

今回は、公的な統計データに基づき、老齢厚生年金(国民年金を含む)の受給者のうち、この目安額をクリアしている人の割合と、老後資金準備の重要性について具体的な数字で解説します。

1. 日本の公的年金制度は「国民年金(基礎年金)と厚生年金」の2階建て構造

日本の公的年金制度は、すべての国民に共通する基礎年金(1階:国民年金)と、会社員や公務員が加入する報酬比例の年金(2階:厚生年金)から成る「2階建て」構造です。

【1階部分】国民年金(基礎年金)の仕組みをおさらい

  • 加入対象:原則として日本に住む20歳から60歳未満のすべての人
  • 保険料:全員定額、ただし年度ごとに改定される(※1)
  • 受給額:保険料を全期間(480カ月)納付した場合、65歳以降で満額の老齢基礎年金(※2)を受給できる。未納期間分に応じて満額から差し引かれる

※1 国民年金保険料:2025年度月額は1万7510円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2025年度月額は6万9308円

【2階部分】厚生年金の仕組みをおさらい

  • 加入対象:会社員や公務員、またパートなどで特定適用事業所(※3)に働き一定要件を満たす人が、国民年金に上乗せで加入
  • 保険料:収入に応じて(上限あり)決定される(※4)
  • 受給額:加入期間や納付済保険料により、個人差が出る

厚生年金は、国民年金(基礎年金)に上乗せされる2階部分の制度として、主に会社員や公務員が加入します。

この国民年金と厚生年金は、加入者の範囲、保険料の計算方法、そして将来の年金受給額を算出する方式がそれぞれ大きく異なります。したがって、老後に受け取る年金総額は、加入していた制度の種類や、現役時代の収入水準によって個人差が生じるのが特徴です。

また、公的年金の給付額は固定ではなく、物価変動や現役世代の賃金の動向に合わせて毎年見直される「マクロ経済スライド」というしくみが組み込まれている点も理解しておく必要があります。

※3 特定事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される