2. 【働くシニア必見】老後も働くことで「年金が減る&増える制度」とは

「老後も元気に働き続けたい」と考える人が増える一方で、働き方によっては年金額に影響が出ることをご存じでしょうか。

実は、65歳以降の就労には、収入が増えることで「年金が減る仕組み」と、反対に「年金が増える仕組み」の両方が存在します。

ここでは、働くシニアが知っておきたい2つの制度についてわかりやすく紹介します。

働きすぎると年金が減る「在職老齢年金制度」とは

在職老齢年金制度とは、年金を受給しながら厚生年金に加入して働き続ける場合に、収入額によって年金が減額または支給停止となる仕組みです。

支給停止の判断は、就労による給与と年金額を合算した金額を基準に行われ、この基準額を「支給停止調整額」と呼びます。

2025年度の支給停止調整額は51万円に設定されており、この金額を超えると年金の一部、または全額が支給停止の対象となります。

たとえば、基本月額15万円・総報酬月額相当額30万円の場合、合計は45万円となり、支給停止調整額51万円を下回るため年金は減額されず満額受け取れます。

一方で、基本月額15万円・総報酬月額相当額37万円の場合、合計は52万円となり、基準額を超えるため年金が5000円減額されます。

なお、2025年6月13日に年金制度改正法が成立し、2026年4月からは支給停止基準額が「月62万円」に引き上げられる予定です。

2.1 老後も働くことで年金が毎年増える「在職定時改定」とは

在職定時改定とは、65歳から70歳の間に働きながら納めた厚生年金保険料を、毎年10月に年金額へ反映する仕組みです。

働き続けている場合、年に一度、厚生年金の受給額が再計算され、増額分が自動的に上乗せされます。

これにより、働きながら年金を受け取る人でも、保険料の支払いが将来の年金額アップにつながるようになっています。

在職定時改定の対象となるのは、前年9月から当年8月までに厚生年金に加入していた期間です。

この期間に基づいて年金額が再計算され、10月分から増額が反映されます。

ただし、年金は偶数月に2か月分まとめて後払いで支給されるため、実際に増額分を受け取れるのは12月(10月分・11月分)からとなります。

なお、増額の対象となるのは厚生年金部分のみで、国民年金の金額に変動はありません。

このように、年金を受け取りながら働く場合には、「年金が減る仕組み」と「年金が増える仕組み」の両方の制度があります。

あらかじめ制度の内容を把握し、働き方による収支の影響をシミュレーションしておくことが大切です。

次章では、こうした制度と併せて押さえておきたい「雇用に関する給付制度」について解説します。