5. 国民年金の受給額を増やす「付加年金」という選択肢
これまで見てきたように、国民年金のみを受給する場合の金額は、厚生年金と比べると少なめです。働き方が多様化する中で、厚生年金に加入しないフリーランスや自営業の方も増えています。
国民年金の受給額を増やす方法の一つとして、比較的始めやすい「付加保険料の納付」という制度がありますので、ご紹介します。
5.1 付加保険料の納付制度について
この制度は、毎月の国民年金保険料(2025年度は1万7510円)に加えて「付加保険料」として月額400円を上乗せして納付することで、将来受け取る年金額を増やせる仕組みです。
付加保険料を納付できる対象者
- 国民年金第1号被保険者
- 65歳未満の任意加入被保険者
付加保険料を納付できないケース
- 国民年金保険料の納付を免除されている人(法定免除、全額免除、一部免除、納付猶予、または学生納付特例)
- 国民年金基金に加入している人
個人型確定拠出年金(iDeCo)と付加年金は同時に加入できますが、iDeCoの掛金によっては併用できない場合もあります。
40年間、付加保険料を納付した場合のシミュレーション
65歳から受け取れる年間の付加年金額は「200円 × 付加保険料を納めた月数」で計算されます。仮に20歳から60歳までの40年間、付加保険料を納め続けた場合を考えてみましょう。
- 40年間に納付した付加保険料の総額:19万2000円(400円×480カ月)
- 65歳以降に受け取れる付加年金額(年間):9万6000円(200円×480カ月)
これにより、毎年の年金に9万6000円が加算されます。40年間で納付した付加保険料の総額は19万2000円のため、年金を受け取り始めてから2年で元が取れる計算です。
会社員として厚生年金に加入しながら副業をしている場合を除き、20歳から60歳までの自営業者やフリーランスの方は国民年金の加入対象となります。
6. まとめ
この記事では、日本の公的年金制度の基本である「2階建て」の仕組みから、2025年度の最新の年金額、そして働き方によって受給額が大きく異なる実態までを、具体的なデータと共に解説しました。
特に40代、50代の方々にとっては、現役時代の働き方が老後の生活設計にいかに直結するかを再認識する機会になったのではないでしょうか。
将来への漠然とした不安を解消するためには、まずご自身の現状を正確に把握することが第一歩です。
「ねんきん定期便」や、インターネットで年金記録を確認できる「ねんきんネット」を活用し、これまでの加入履歴と将来の受給見込額を確認してみてはいかがでしょうか。
その上で、公的年金だけでは不足すると感じる部分を、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)といった制度を活用して補っていくなど、ご自身のライフプランに合わせた資産形成を検討するのも一つの方法です。
公的年金を老後資金の土台と捉え、早めに準備を始めることが、安心して未来を迎えるための鍵となります。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「国民年金付加年金制度のお知らせ」
和田 直子
