2025年11月募集の個人向け国債は、変動10年型・固定5年型ともに1%を超えています。

定期預金の金利と比較して、個人向け国債を検討している人もいるでしょう。

個人向け国債は、日本政府が元本と利息(元利金)の支払いを保証しているため、元本割れのリスクが極めて低い、国内でもトップクラスに安全性の高い金融商品として位置づけられています。

それにもかかわらず、「買ってはいけない」と囁かれることがあります。これは一体なぜでしょうか?

1. 個人向け国債とは?

個人向け国債は、日本政府が発行体となり、個人投資家のために設計された債券です。国が元本と利息(元利金)の支払いを保証しているため、現在、国内で販売されている金融商品のなかでも極めて高い安全性を持つ資産として位置づけられています。

個人向け国債の主な種類とそれぞれの特徴は以下の通りです。

1.1 変動金利:10年満期

  • 半年ごとに金利が見直されるため、市場の金利が上昇すると受け取る利息も増えるメリットがあります。
  • 適用金利には下限(0.05%)が設定されています。

1.2 固定金利:5年満期

  • 発行時に決定された金利が、満期まで変わらず適用されます。

1.3 固定金利:3年満期

  • 発行時に決定された金利が、満期まで変わらず適用されます。

また、「2025年11月7日(金)~11月28日(金)の個人向け国債の金利は以下のとおりです。

国債の金利一覧1/3

国債の金利一覧

出所:財務省「個人向け国債窓口」

  • 変動金利型10年:1.10%
  • 固定金利型5年:1.19%
  • 固定金利型3%:0.99%

変動10年、固定5年の利率は1%を越えています。

メガバンクの定期預金金利と比較すると、個人向け国債に対して魅力を感じるかもしれません。

1万円から購入可能であり、購入後1年を経過すれば中途解約も可能という柔軟さも魅力のひとつと言えるでしょう。

ただし、中途解約時には直近2回分の利子相当額が差し引かれる点には留意が必要です。また、個人向け国債は国が支払いを保証しているため元本割れリスクが極めて低いものですが、満期前の途中解約にはペナルティがあることを理解しておきましょう。

金利面で定期預金と比較するケースがありますが、安全性では違いがあることを理解しておきましょう。

2. 個人向け国債、固定5年、変動10年が人気

前述のとおり、個人向け国債は3種類あります。

2025年10月の最新の個人向け国債の種類別の応募額は、下記のとおりです。

  • 個人向け利付国庫債券(変動10年)第187回債:1246億円
  • 個人向け利付国庫債券(固定 5年) 第175回債:2323億円
  • 個人向け利付国庫債券(固定 3年) 第185回債:941億円

変動10年と固定5年商品が人気であることがわかります。

3. 個人向け国債「変動10年」半年ごとに利率はどう変動している?

個人向け国債の変動型は、半年ごとに金利が見直されます。

近年、金利は上昇傾向にありますが、個人向け国債の変動金利はどのように変化しているのか見てみましょう。

個人向け国債「変動10年(第156回債)」発行条件2/3

個人向け国債「変動10年(第156回債)」発行条件

出所:財務省「変動10年(第156回)の発行条件」

個人向け国債「変動10年(第156回債)」適用利率の推移

  • 令和5年4月16日から令和5年10月15日:0.33%
  • 令和5年10月16日から令和6年4月15日:0.43%
  • 令和6年4月16日から令和6年10月15日:0.47%
  • 令和6年10月16日から令和7年4月15日:0.61%
  • 令和7年4月16日から令和7年10月15日:0.92%
  • 令和7年10月16日から令和8年4月15日:1.06%

上記のとおり、0.33%でスタートした第156回発行の国債は、いま1.06%まで上昇しています。

ただし、国債の金利は必ず上昇するものではありません。国債の金利は、金融市場の状況、特に日本銀行の金融政策によって変動します。

日本は長らく低金利が続いていました。しかし、2024年3月にマイナス金利政策が解除されて以降はじわじわと金利が上昇しています。

国債金利の推移3/3

国債金利の推移

出所:財務省「国債金利情報」をもとにLIMO編集部作成

これに伴い、個人向け国債の金利も上がってきているのです。 

4. 個人向け国債を「買ってはいけない」という意見も?!

使い道が決まっていないお金で長期で置いておけるお金であれば、金利面で魅力の高い個人向け国債を選んでもよいかもしれません。

しかし、個人向け国債を買ってはいけない!という声も…

その理由について考察してみましょう。

4.1 金利反映のタイムラグが発生する

変動10年型は、金利の見直しが半年ごとに行われる仕組みです。そのため、市場で金利が急激に上昇したとしても、その変化がすぐに国債の利率に反映されるわけではありません。金利の上昇局面では、このタイムラグによって収益の機会を逃すリスクがあります。

4.2 インフレ下では資産価値を維持しにくい

国債の安全性は高いですが、物価が上昇するインフレ環境においては注意が必要です。たとえば、名目上の利回りが0.5%であっても、物価上昇率が2%であれば、実質的な利回りはマイナスになります。インフレが進行した場合、国債の利息収入だけでは、資産の実質的な購買力を維持できない可能性があります。

4.3 中途解約時は利息が差し引かれる

元本は保証されていますが、購入から1年を経過して中途解約する際にもペナルティがあります。解約時には、直近2回分の利子相当額が差し引かれる仕組みです。このため、急な資金ニーズで途中で解約すると、受け取る利回りが大きく減少し、結果的に資金が拘束されるデメリットが生じます。

4.4 他の金融商品と比較した機会損失リスク

個人向け国債は安全性が高い分、利回りは低水準に抑えられがちです。資金を国債に固定することで、より高い利回りを提供している他の金融商品(例:高金利の定期預金、一部の優良な個人向け社債、高配当株など)へ投資する機会を逃してしまう「機会損失」のリスクも考慮する必要があります。

5. まとめ:個人向け国債が有効な選択肢となる人

高いリターンは望めない個人向け国債ですが、一定のケースにおいては非常に有効な選択肢となり得ます。

ここでは、どのような方におすすめできるのかをご紹介します。

5.1 資産の「守り」を重視したい層

個人向け国債が最も力を発揮するのは、「元本を減らしたくない」というニーズを持つ方々です。

  • 高齢者や退職金受給者: 老後の生活資金や退職金を運用する場合、まず安全資産として資産全体のリスクを低減したいと考える方に最適です。極めて元本割れリスクが低いため、安心感を確保できます。
  • 投資初心者: 投資の第一歩を踏み出す際、元本保証がある国債は安心感があります。「今まで投資をしたことがない」という方でも、堅実な商品から始めやすいでしょう。

5.2 ポートフォリオの安定性を求める層

個人向け国債は、「高いリターンは狙えないが、元本割れリスクが極めて低い」という特性を持っています。そのため、資産全体のバランスを取る上での防波堤として組み込むのが賢明な活用法です。

  • 資産配分の一部として: 株式や投資信託といったリスク資産で積極的に資産を増やす一方、個人向け国債で元本を保護するという役割を持たせましょう。これにより、ポートフォリオ全体のリスクとリターンのバランスを効果的に取ることができます。
  • 金利上昇を見込む長期保有者: 将来的に日本の金利が上昇すると見込み、長期保有を考えるなら、半年ごとに利率が見直される変動10年型が有効です。市場金利の上昇に合わせて、受け取る利息が増加する可能性があります。

とくに、高齢者や退職直後の世帯のように、資産を減らすことを避けたい層にとっては、この「元本割れリスクが極めて低い」国債は、資産全体の安定性を確保する上で非常に有効な選択肢と言えるでしょう。

参考資料

和田 直子