4. 個人向け国債を「買ってはいけない」という意見も?!

使い道が決まっていないお金で長期で置いておけるお金であれば、金利面で魅力の高い個人向け国債を選んでもよいかもしれません。

しかし、個人向け国債を買ってはいけない!という声も…

その理由について考察してみましょう。

4.1 金利反映のタイムラグが発生する

変動10年型は、金利の見直しが半年ごとに行われる仕組みです。そのため、市場で金利が急激に上昇したとしても、その変化がすぐに国債の利率に反映されるわけではありません。金利の上昇局面では、このタイムラグによって収益の機会を逃すリスクがあります。

4.2 インフレ下では資産価値を維持しにくい

国債の安全性は高いですが、物価が上昇するインフレ環境においては注意が必要です。たとえば、名目上の利回りが0.5%であっても、物価上昇率が2%であれば、実質的な利回りはマイナスになります。インフレが進行した場合、国債の利息収入だけでは、資産の実質的な購買力を維持できない可能性があります。

4.3 中途解約時は利息が差し引かれる

元本は保証されていますが、購入から1年を経過して中途解約する際にもペナルティがあります。解約時には、直近2回分の利子相当額が差し引かれる仕組みです。このため、急な資金ニーズで途中で解約すると、受け取る利回りが大きく減少し、結果的に資金が拘束されるデメリットが生じます。

4.4 他の金融商品と比較した機会損失リスク

個人向け国債は安全性が高い分、利回りは低水準に抑えられがちです。資金を国債に固定することで、より高い利回りを提供している他の金融商品(例:高金利の定期預金、一部の優良な個人向け社債、高配当株など)へ投資する機会を逃してしまう「機会損失」のリスクも考慮する必要があります。

5. まとめ:個人向け国債が有効な選択肢となる人

高いリターンは望めない個人向け国債ですが、一定のケースにおいては非常に有効な選択肢となり得ます。

ここでは、どのような方におすすめできるのかをご紹介します。

5.1 資産の「守り」を重視したい層

個人向け国債が最も力を発揮するのは、「元本を減らしたくない」というニーズを持つ方々です。

  • 高齢者や退職金受給者: 老後の生活資金や退職金を運用する場合、まず安全資産として資産全体のリスクを低減したいと考える方に最適です。極めて元本割れリスクが低いため、安心感を確保できます。
  • 投資初心者: 投資の第一歩を踏み出す際、元本保証がある国債は安心感があります。「今まで投資をしたことがない」という方でも、堅実な商品から始めやすいでしょう。

5.2 ポートフォリオの安定性を求める層

個人向け国債は、「高いリターンは狙えないが、元本割れリスクが極めて低い」という特性を持っています。そのため、資産全体のバランスを取る上での防波堤として組み込むのが賢明な活用法です。

  • 資産配分の一部として: 株式や投資信託といったリスク資産で積極的に資産を増やす一方、個人向け国債で元本を保護するという役割を持たせましょう。これにより、ポートフォリオ全体のリスクとリターンのバランスを効果的に取ることができます。
  • 金利上昇を見込む長期保有者: 将来的に日本の金利が上昇すると見込み、長期保有を考えるなら、半年ごとに利率が見直される変動10年型が有効です。市場金利の上昇に合わせて、受け取る利息が増加する可能性があります。

とくに、高齢者や退職直後の世帯のように、資産を減らすことを避けたい層にとっては、この「元本割れリスクが極めて低い」国債は、資産全体の安定性を確保する上で非常に有効な選択肢と言えるでしょう。

参考資料

和田 直子