2024年11月22日に開かれた閣議で、住民税非課税世帯への給付金が決定しました。
1世帯あたり3万円、子ども1人につき2万円加算となります。
住民税非課税世帯への給付金は、今夏〜秋にかけても行われました。給付対象となった人の多くは、高齢者世帯です。住民税非課税世帯には、なぜ高齢者世帯が多く分布するのでしょうか。
この記事では、住民税非課税世帯に高齢者世帯が多い理由や、高齢者世帯の年金・貯蓄額について解説します。
1. 住民税非課税世帯のうち高齢者世帯はどれくらいの割合?
住民税非課税世帯の年代別割合と高齢者世帯の割合を見てみましょう。
【写真全7枚中1枚目】年代別:住民税非課税世帯の割合。2枚目以降で、高齢者の人口増加のデータや老齢年金の受給額グラフ、60歳代・70歳代の貯蓄《円グラフ》などをチェック1/7
出所:厚生労働省「令和5年国民生活基礎調査」をもとにLIMO編集部作成
- 総数:1279世帯(27.4%)
- 20歳代:52世帯(32.7%)
- 30歳代:35世帯(12.0%)
- 40歳代:52世帯(10.0%)
- 50歳代:106世帯(13.6%)
- 60歳代:212世帯(21.7%)
- 70歳代:432世帯(35.9%)
- 80歳代:389世帯(52.5%)
- 65歳以上(再掲):955世帯(38.1%)
- 75歳以上(再掲):611世帯(49.1%)
全年代の総数で見ると、調査対象世帯4674世帯のうち、住民税非課税世帯は1279世帯で27.4%を占めています。
一方、65歳以上の高齢者世帯で見ると、対象世帯2504世帯のうち住民税非課税世帯は955世帯で、38.1%です。75歳に絞ってみると非課税世帯の割合は49.1%と約半数にまでのぼります。
高齢者世帯のうちおよそ4割が住民税のかからない世帯という結果になっており、ほかの年代よりも世帯数・割合ともに高くなっています。
また、全年代における65歳以上の住民税非課税世帯の割合も確認しておきましょう。調査対象世帯4674世帯のうち、65歳以上の住民税非課税世帯は955世帯です。全世帯の20.4%を65歳以上の住民税が課税されない高齢者世帯が占めています。
では、住民税非課税世帯に高齢者世帯が多い理由について、次章で解説します。
2. 住民税非課税世帯に高齢者世帯が多い理由
住民税非課税世帯に高齢者世帯が多い理由としては、以下の3点が考えられるでしょう。
- 高齢者人口が多い
- 収入が年金に限られてくる
- 公的年金等控除の恩恵を受けられる
国内人口の状況やライフスタイル、税制など、非課税世帯に高齢者世帯が多い要因はさまざまです。それぞれの理由を1つずつ解説していきます。
2.1 高齢者人口が多い
住民税のかからない高齢者世帯が増えているのは、そもそも日本の高齢者人口が多いからだと考えられます。
総務省統計局の発表する「人口推計」によれば、2024年6月1日現在の65歳以上の人口は 3625万6000人です。総人口である1億2397万9000人の29.3%を占めています。総人口が前年6月の調査時点に比べて53万2000人減っているのに対して、65歳以上の人口は前年同月に比べて3万9000人増えており、今後も高齢者世帯の割合は増え続けるでしょう。
前述のとおり、現時点で65歳以上の住民税非課税世帯は20.4%を占めています。高齢者人口の増加は避けられないため、この割合は今後さらに大きくなるでしょう。
2.2 収入が年金に限られてくる
職場を退職して老後生活に入ると、基本的に年金収入をメインに生活していくことになります。年金を給与並みに受け取れる人は数少なく、現役の頃と比べると年収は低くなることが多いです。
年収が下がれば所得も低くなるため、住民税が非課税となる所得額の要件を満たしやすくなります。たとえば、東京23区の場合は所得が単身世帯で45万円、扶養親族と二人暮らしで「35万円×2+31万円以下=101万円」以下になれば、住民税は非課税です。
現在の税制は「収入が低い人ほど負担が少ない」ようにつくられています。そのため、収入源が限られて少なくなっていくほど、住民税がかからない可能性が高くなります。
2.3 公的年金等控除の恩恵を受けられる
年金は所得の一つですが、所得控除により合計所得を減らせます。年金に対する所得控除は「公的年金等控除」といい、ほかの控除制度よりも多くの所得金額が差し引かれます。
65歳未満は年金収入が60万円以下、65歳以上は110万円以下であれば、控除により所得が0円となります。ほかの控除と比べても、公的年金等控除で差し引かれる金額は大きいです。
- 基礎控除:最大48万円
- 給与所得控除:55万円(給与所得162万5000円以下の場合)
- 扶養控除:38〜63万円
控除額が大きい分所得金額も大きく減らせるため、住民税非課税となる要件を満たしやすいのです。
高齢者世帯で住民税が非課税となる大きな理由は「公的年金等控除の存在」といえるでしょう。
では、高齢者世帯の年金の平均受給額について、次章で見ていきます。
3. 年金の平均受給額
老後に受給する公的年金は「国民年金」または「国民年金+厚生年金」となります。それぞれの平均受給額を見てみましょう。
3.1 国民年金(基礎年金)
まずは、国民年金(基礎年金)の平均受給額から見ていきます。
- 男子:5万8798円
- 女子:5万4426円
- 全体:5万6316円
国民年金の平均受給額は5万6316円です。分布を見ると6〜7万円の受給額となっている人が男性約831万人、女性約654万人と多くなっています。令和6年度の国民年金の満額受給額は6万8000円だったため、多くの人が満額に近い金額を受給しているといえるでしょう。
なお、国民年金のみ受給となる場合、夫婦ともに満額受給しても、それぞれ公的年金等控除額(65歳以上)である110万円を下回るため、住民税は非課税になります。
3.2 厚生年金(国民年金を含む)
次に、厚生年金の平均受給額を見てみます。
- 男子:16万3875円
- 女子:10万4878円
- 平均:14万3973円
※上記の厚生年金月額には国民年金(基礎年金)を含む。
男性は約16万円、女性は約10万円と平均受給額に差が見られます。厚生年金は働き方や受け取る給与などが受給金額に影響するため、差が出やすくなっています。受給額が平均を下回っていくと、住民税が非課税となる可能性は高くなるでしょう。
次は、高齢者世帯の貯蓄額の平均と中央値を確認します。
4. 高齢者世帯の平均貯蓄額と中央値
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」より、60歳代・70歳代二人以上世帯の貯蓄額を確認していきます。
4.1 60歳代
まずは、60歳代の平均貯蓄額と中央値を見てみましょう。
- 金融資産非保有:21.0%
- 100万円未満:5.9%
- 100~200万円未満:4.5%
- 200~300万円未満:4.3%
- 300~400万円未満:3.0%
- 400~500万円未満:1.9%
- 500~700万円未満:7.2%
- 700~1000万円未満:6.7%
- 1000~1500万円未満:6.8%
- 1500~2000万円未満:5.4%
- 2000~3000万円未満:9.5%
- 3000万円以上:20.5%
- 平均値:2026万円
- 中央値:700万円
金融資産が一切ない「金融資産非保有」の人が21.0%。一方、老後資金の目安の一つとされている2000万円以上の資産を持つ人は、全体の30%となっています。平均値も2000万円を上回っており、老後生活に十分な資産を用意している人も多いようです。収入が少なく住民税が非課税になっていても、十分な資産を持っている世帯も多く存在しているのです。
4.2 70歳代
次に、70歳代の平均貯蓄額と中央値を確認します。
- 金融資産非保有:19.2%
- 100万円未満:5.6%
- 100~200万円未満:5.1%
- 200~300万円未満:4.3%
- 300~400万円未満:4.7%
- 400~500万円未満:2.5%
- 500~700万円未満:6.2%
- 700~1000万円未満:5.8%
- 1000~1500万円未満:10.2%
- 1500~2000万円未満:6.6%
- 2000~3000万円未満:7.4%
- 3000万円以上:19.7%
- 平均値:1757万円
- 中央値:700万円
老後生活で資産を取り崩している世帯もあるでしょう。70歳代になると、2000万円以上の資産がある世帯は27.1%と60歳代に比べてやや少なくなっています。それでも、全体の4分の1以上が2000万円以上の資産を保有しています。年金受給額が少なく非課税世帯になるものの、十分な資産のある世帯も存在するでしょう。
一方、金融資産非保有の世帯も19.2%と60歳代に比べて少なくなっています。要因はさまざまなことが想定されますが、年金や各種給付金のいくらかが貯蓄にまわっている可能性も考えられるでしょう。
5. まとめ
住民税非課税世帯に高齢者世帯が多い理由は、年金受給開始によって現役時代に比べて収入が減る点や所得控除が優位な点などが考えられます。また、資産額を見ると、非課税世帯のなかでも資産を多く持つ世帯もあると想定されます。
生活に苦しむ低所得世帯への支援と同時に、同じく物価高に苦しむ課税世帯への経済施策の実現も期待したいところです。
参考資料
- 厚生労働省「令和5年国民生活基礎調査」
- 総務省統計局「人口推計(2024年(令和6年)6月確定値、2024年(令和6年)11月概算値) (2024年11月20日公表)」
- 東京都主税局「個人住民税」
- 国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」
- 厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」
石上 ユウキ