生活保護制度は、日本の社会保障制度の重要な柱の1つです。
今回は生活保護制度の1つである生活扶助に付随して冬季の生活費の補助を目的として支給される「冬季加算」について説明をします。生活保護の受給者は2024年6月の時点で約201万人いるとされており、その中で生活扶助による被保護者(現に保護を受けている人)は約170万人いるという統計結果が出ています。
多くの人が受給している制度である生活扶助において、冬季加算は重要な支援となります。ぜひ参考にしてください。
1. 生活保護と生活扶助
今回説明する冬季加算は、生活保護制度の1つである生活扶助に加算して支給されるものです。前提となる生活保護制度と生活扶助について、簡単に見ていきましょう。
1.1 生活保護とは
生活保護とは「生活に困窮する人に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を援助することを目的」とした制度です。
生活保護制度が適用されることにより、厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費と収入を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が「保護費」として生活を支援する金額として支給されます。
生活保護制度には8つの種類があり、支払われる保護費によって「生活扶助」「住宅扶助」「教育扶助」「医療扶助」「介護扶助」「出産扶助」「生業扶助」「葬祭扶助」に分かれています。
1.2 生活扶助とは
生活保護の1つである生活扶助とは、生活に困窮している人に対して衣食や光熱費などの生活の基本となる部分に支給される金銭給付です。
主要となる生活費を賄う給付であるため、寒さにより光熱費がかさむ冬季期間において、増加分を考慮した加算を行うことにより、生活の困窮を防ぐことを目的としています。
2. 生活保護の冬季加算
生活保護の冬季加算とは、生活扶助による保護を受けている世帯に対して冬季期間に加算される給付です。ここからは冬季加算の詳細について説明していきます。
2.1 冬季加算の概要
冬季加算は「冬季における光熱費等の増加需要に対応するものとして、生活扶助基準に上乗せして支給するもの」です。
生活扶助の受給者に対して、10月から4月までの7ヶ月間、または11月から3月までの5ヶ月間、要件に沿って算出された金額が通常の保護費に上乗せして支給されます。このとき、支給期間は地区ごとに区分されて決定します。
冬季における光熱費等の増加需要に対して支給されるものですが、必ずしも光熱費の補填のために使用をしなくても良いことになっています。
3. 冬季加算の加算額の決定方法
冬季加算の加算額は以下の3つの要素によって決定します。
- 冬季加算地域区分(地域の寒冷度合いの区分)
- 世帯構成人数
- 級地区分(地域の物価や生活水準の区分)
それぞれの要素について、詳しく見ていきましょう。
冬季加算地域区分について
冬季加算の金額は地域の寒さの程度によって異なり、寒冷度合いの区分は都道府県ごとにⅠ区からⅥ区の6つに区分されています。
この冬季加算地域区分により、Ⅰ区とⅡ区は加算期間が10月から4月の7ヶ月間、そのほかの区域は11月から3月までの5ヶ月間と支給期間も決定します。
世帯構成人数による違い
冬季加算の金額は、世帯の人数によっても異なってきます。1人世帯から9人世帯まで徐々に支給額が加算され、10人以上の世帯となると一人追加あたりの加算額が地区ごとに決まっています。上限額はありませんが、増加するごとに金額の加算は緩やかになる特徴があります。
級地区分による違い
冬季加算は、級地によっても金額が異なります。級地とは、生活保護法第8条第2項に基づき、地域における生活様式や物価差による生活水準の差を生活保護基準に反映させることを目的とした制度による区分で、全国の市区町村を1級地1-1から3級地-2の6区分に分類したものです。
ご自身のお住まいの級地区分については、インターネットなどで一覧が検索できるので、必要に応じて確認をしてみてください。
3.1 具体的な加算金額
先ほど説明をした通り、冬季加算の金額の決定は3種類の要素が絡み合って決定されるため複雑です。今回は各地域区分と世帯人数ごとの冬季加算の金額の一例を示します。
ただし、区分や金額は変更される可能性があるため、最新の情報は各自治体に確認することも必要です。
〈1級地-1の場合の加算額例〉
- 1人世帯:Ⅰ区1万2780円からⅥ区2630円
- 2人世帯:Ⅰ区1万8140円からⅥ区3730円
- 3人世帯:Ⅰ区2万620円からⅥ区4240円
- 4人世帯:Ⅰ区2万2270円からⅥ区4580円
〈秋田県秋田市に居住する2人暮らしの夫婦の場合の加算額例〉
- 秋田県の冬季加算区分:Ⅰ区
- 秋田市の級地:2級地-1
- 冬季加算額:1万8140円/月
- 加算期間:10月から4月(7ヶ月間)
この場合、月々の生活費に約1万8000円が加算されることになるため、生活に困窮する生活扶助の被保護者にとっては大きな支援であると考えられます。
しかし例えば、同じ2級地-1である水戸市に住んでいたとします。茨城県はⅥ区ですので、2人暮らしでも月の加算は3730円、加算期間は5ヶ月となり、大きな差が生じます。
この地域差については問題視されている点ではありますが、現状としては解消されていません。
4. 冬季加算の特別基準
冬季加算には、特別な条件を満たすと基準の1.3倍の金額を受給することができる、「特別基準」というものがあります。
4.1 特別基準の支給要件
特別基準が支給される要件としては、厚生労働省ホームページに掲載されている「2023年4月1日施行 生活保護実施要領等」によると、「傷病、障害等による療養のため外出が著しく困難であり、常時在宅せざるを得ない者又は乳児(1 歳の誕生日の前日までの間にある児童をいう。) が世帯員にいる場合であって、保護の基準別表第 1章の1の(1)に規定する地区別冬季加算額によりがたいときは、地区別冬季加算額に1.3を乗じて得た額(当該額に10円未満の端数が生じたときは、当該端数を10円に切り上げた額とする。)の範囲内において特別基準の設定があったものとして必要な額を認定して差し支えないこと」となっています。
支給の決定に関して、実際に判断をするのは生活保護の申請先である市区町村になりますので、該当だと思われる場合は詳細を自治体に確認してみてください。
5. 冬季加算の申請方法
冬季加算は生活扶助の被保護世帯に対して自動的に加算されるものであるため、別途の申請は必要ありません。
「保護決定通知」が届いた方は、冬季加算額が上乗せされていることを確認してください。特別基準の申請については、該当だと思われる場合には自身の自治体の担当に相談してみてください。
6. 冬季加算の目的と使途
冬季加算の主な目的は、寒冷地域に住む生活保護受給者の冬季の生活を支援することです。具体的には以下のような用途が想定されています。
- 暖房費(電気代、ガス代、灯油代など)
- 防寒具の購入(冬物衣料、毛布など)
- 冬季の食費の増加分(暖かい食事の材料費など)
ただし、冬季加算の使途に制限はありません。受給者は自身の判断で、最も必要な用途に使用して構わないことになっています。余ったとしても、返金をする必要はありません。
7. 冬季加算の課題と現状
生活保護制度における冬季加算には、今回説明した通り地域や人数による加算額の格差が発生します。そのため、「区分や級地、世帯構成人数別の加算額が妥当であるかどうか」「夏季に増加する費用とのバランスがとれているのか」といった論点が生じます。
これらの論点を適切に検討するため、厚生労働省では地域ごとの消費額や光熱費支出などの検証を行い、加算額の妥当性が保たれるようにしており、今後も各市区町村ごとの支出額の分析などを行い、区分や級地の変更も考えることを検討しています。
8. 冬季加算は生活保護受給者にとって重要な支援
冬季加算は生活保護受給者にとって冬季の生活を支える重要な支援です。地域や世帯構成、住居の種類によって金額が異なるため、該当の世帯は自身の状況に応じた正確な情報を把握して冬季の生活設計をしましょう。
また、今は該当でない世帯においても生活保護制度に関する理解や経緯の理解を深めることで、必要なときに適切な対応をすることができるようになります。ぜひ頭に入れておきましょう。
※金額や要件などは自治体等によって異なるので、個別の相談・お問い合わせにはお答えできません。
参考資料
- 政府統計「令和6年度被保護者調査 結果の概要」
- 厚生労働省「生活保護制度」
- 厚生労働省社会・援護局保護課 第19回社会保障審議会生活保護基準部会資料「冬季加算について」
- 厚生労働省社会・援護局保護課 第3回社会保障審議会生活保護基準部会資料「生活保護制度における地域差等について」
- 厚生労働省「生活保護法による保護の基準」
- 厚生労働省「2023(令和5)年4月1日施行生活保護実施要領等」
斎藤 彩菜