年末へ向けて慌ただしさが増すこの季節、改めて公的な制度やご自身の生活について見つめ直す方もいるのではないでしょうか。今回は、病気や障がいがある方を支える大切な制度の一つ、「障害者手帳」について解説します。
障害者手帳には「身体」「療育」「精神」の3種類がありますが、この記事では所持者数が約478万人と最も多い「身体障害者手帳」に焦点を当て、その「障がい種類別の内訳」と「等級別の実態」を最新のデータ(令和5年度)で詳しく見ていきます
1. 障害者手帳は3種類、それぞれの特徴とは?
公的な支援を受けるための証明書である障害者手帳には、「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」の3種類があります。これらの手帳を持つことで、障害者総合支援法などに基づく幅広いサポートを利用できるようになります。手帳は、自治体や民間のサービスを含め、必要なサポートへアクセスするために重要な役割を果たしています。
1.1 身体障害者手帳
身体障害者手帳は、視覚、聴覚、肢体(手足など)、心臓や腎臓といった内部機能など、身体機能に一定水準以上の障害があると認められた方に交付されます。交付は都道府県・指定都市・中核市が行い、取得には指定医師による診断書や意見書が必要です。原則として更新は不要ですが、障がいの状態に変化があった場合は再認定を受けることがあります。令和5年度時点の所持者数は478万3069人で、3種類の手帳の中で最も多くなっています。
1.2 療育手帳
療育手帳は、児童相談所や知的障害者更生相談所において知的障害と判定された方に交付されます。この手帳により、障害福祉サービスをはじめとする様々な支援が受けられます。制度の運用や判定基準は自治体によって異なるのが特徴です。令和5年度の所持者数は128万1469人です。
1.3 精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害があると認められた人に交付され、社会参加の促進などのための支援を受けることができます。障害等級は1級から3級まであり、精神疾患の状態と日常生活や社会生活を送る上での能力障害の状態の両面から総合的に判断されます。令和5年度の所持者数は144万8917人です。
今回は、所持者数の多い「身体障害者手帳」に焦点を当てて、その内訳と推移を詳しく見ていきます。
2. 身体障害者手帳の所持者、「種類別で一番多いのは?何級が多い?」それぞれの内訳
身体障害者手帳交付台帳は、身体障害者福祉法施行令に基づいて各都道府県などが手帳の交付状況を管理している公的な記録です。この台帳に登録されたデータから、手帳を持っている方の障がいの種類の内訳や、その数の年ごとの変化を確認できます。
2023年度(令和5年度)における身体障害者手帳交付台帳に登録されている総数は、478万3069件でした。
2.1 障がい種類別の内訳
【障がい種類別の内訳】
- 肢体不自由:233万4864件(48.8%)
- 内部障害:162万8015件(34.0%)
- 視覚障害:44万2400件(9.2%)
- 聴覚・平衡機能障害:31万9724件(6.7%)
- 音声・言語機能またはそしゃく機能障害:5万8066件(1.2%)
内部障害とは、心臓、腎臓、呼吸器、膀胱・直腸、小腸、肝臓、免疫の機能に関する障がいの総称です。内訳をみると、肢体不自由と内部障害の2種類だけで、全体の8割以上を占めていることが分かります。
2.2 障害者手帳等級別の内訳
身体障害者手帳の等級は、身体障害者福祉法に基づき、障がいの重度を示すために定められています。障がいの程度は、法別表に記載された基準に基づき、重度の側から1級から6級までが設定されています。(法別表には7級の基準も設定されていますが、7級単独では手帳の交付対象となりません。)
【身体障害者手帳交付台帳登載数478万3069件の内訳】
- 1級:153万8635人
- 2級:68万6171人
- 3級:77万8530人
- 4級:116万823人
- 5級:30万2328人
- 6級:31万6582人
内訳をみると、1級と4級の交付者数が突出して多いことがわかります。この等級が、手帳所持者が受けられる福祉サービスや優遇措置の内容を決定するための基準となります。等級の数字が小さいほど(1級に近いほど)、障がいの程度が重度であることを示しています。
3. 障害者手帳と障害年金、何が違う?どんな支援?
病気や障がいがある方を支える国の支援には、「障害年金」と「障害者手帳」という二つの柱があります。この二つは役割が大きく異なります。簡単に言えば、障害年金は所得保障の役割を持ち、身体障害者手帳は福祉サービスなどの支援や優遇措置を受けるための「証明」という役割があります。どちらの制度も対象や目的が異なるため、しくみを理解することが適切な支援を受けるための第一歩となります。
3.1 障害年金「生活を支える経済的な支え」
障害年金は、病気やケガが原因で日常生活や仕事に支障が出た際に支給される場合がある公的な年金制度で、いわば所得保障の役割を担います。障害年金を受け取るためには、初診日が国民年金または厚生年金の加入期間中であることや、定められた保険料の納付要件を満たしていることなどが必要です。
障がいの程度によって等級が設けられており、障害基礎年金では1級・2級、障害厚生年金では1級から3級までがあります。この等級は、主に障害が生活や就労にどの程度影響しているか(障害状態)を基に判断されます。
対象となる主な疾患: うつ病、統合失調症、脳梗塞、がん、人工透析、リウマチなど、精神疾患から内部障害まで広範囲にわたります。
3.2 身体障害者手帳「支援や優遇措置を受けるための証明」
身体障害者手帳は、身体の機能に障がいがあることを公的に確認する証明書としての役割を持っています。この手帳は、主に福祉サービスや、公共交通機関の割引制度をはじめとするさまざまな優遇措置を利用する際に必要となります。
認定の基準は、視覚、聴覚、手足(肢体)、内臓などの身体機能の構造的な欠損や機能不全といった障害に基づいて判断されます。障がいの程度に応じて、重度の側から1級から6級までが設定されています。(法別表には7級の基準も設定されていますが、7級単独では手帳の交付対象となりません。)
4. 障害者手帳、暮らしを支えるサービスとは?
障害者手帳をもとに申請することで、福祉サービスだけでなく日常生活に役立つ多様な優遇措置を利用できる場合があります。たとえば、公共料金等の割引や、所得税・住民税の控除といった全国一律の支援が受けられます。さらに、自治体や事業者が独自に提供するサービスとして、鉄道・バス・タクシーなどの運賃割引や携帯電話料金の割引などがあり、毎日の生活の負担を軽くしてくれます。
障害者手帳で利用できるサービスの一例4/5
LIMO編集部作成
福祉の面では、手帳を持つことで、医療費の自己負担が軽くなる自立支援医療(更生医療など)の対象となったり、補装具の購入・借受け費用の支給を受けたりできます。
また、共同生活援助(グループホーム)や居宅介護といった障害福祉サービスは、手帳と連携して利用が進められます。これらのサービスを組み合わせることで、障がいのある方の地域での自立した生活が総合的に支援されます。
5. 障害者手帳と障害年金、それぞれの役割を理解「適切な支援へつなげる」
今回は、公的な支援を受けるための「障害者手帳」について解説しました。身体障害者手帳は令和5年度時点で約478万人が所持し、肢体不自由が約半数を占めるという実態が分かります。この手帳は、医療費の軽減措置や運賃割引など、将来にわたって生活を支える福祉サービスを受けるための「証明書」という大切な役割があります。
一方で、障害年金は現在の生活を経済的に支える「所得保障」の役割であり、障害者手帳と年金では目的が異なります。これらの制度の違いを今から理解しておくことは、いざという時にあなたやご家族が適切な支援を受けるための貴重な備えとなるでしょう。
