2026年10月1日から、中小企業退職金共済制度の「加入促進強化月間」が始まりました。厚生労働省が9月18日に発表したもので、令和8年6月末時点で約55万の中小企業がこの制度に加入しています。
会社員の退職金は、勤め先に制度があるかどうか、どのように準備されているかで大きく変わります。定年まで勤めたらいくらになるのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、厚生労働省の調査をもとに会社員の退職金の平均額と制度がある企業の割合を確認し、中小企業退職金共済のしくみ、国家公務員との比較まで見ていきます。
1. 【会社員の退職金】定年退職の平均は「1896万円」
まずは会社員の退職金の金額から確認していきます。厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」は、令和4年の1年間に勤続20年以上かつ45歳以上で退職した方について、1人あたりの平均退職給付額を集計しています。
ここでいう退職給付額は、一時金で受け取る分と、分割して受け取る分を現在の価値に直した額を合わせた金額です。
1.1 定年退職の平均は大学・大学院卒で1896万円
定年で退職した方の退職給付額は、学歴と職種によって次のように分かれます。
定年退職の退職給付額は、会社員の大学・大学院卒で1896万円、国家公務員で2160万1000円です1/3
出所:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」および内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況(令和6年度)」をもとにLIMO編集部作成
- 大学・大学院卒(管理・事務・技術職):1896万円
- 高校卒(管理・事務・技術職):1682万円
- 高校卒(現業職):1183万円
いわゆる「老後2000万円」という言葉がありますが、大学・大学院卒の定年退職でも平均額はそこにわずかに届いていません。大学・大学院卒と高校卒(現業職)の間には713万円の差があります。
1.2 退職の理由で退職金は大きく変わる
同じ調査では、退職の理由別にも退職給付額が集計されています。大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で見ると、次のとおりです。
- 定年:1896万円
- 会社都合:1738万円
- 自己都合:1441万円
- 早期優遇:2266万円
最も高いのは早期優遇退職で、定年を370万円上回っています。反対に自己都合退職は定年より455万円少なくなりました。
高校卒(管理・事務・技術職)では定年1682万円に対して自己都合1280万円、高校卒(現業職)では定年1183万円に対して自己都合921万円です。どの区分でも、自己都合退職は定年退職を下回っています。
2. 【退職金制度】導入している企業は「74.9%」、そもそも退職金がない会社もある
ここまで平均額を見てきましたが、退職金の制度自体がない企業もあります。金額の前に、制度があるかどうかを押さえておきましょう。
2.1 退職金の制度がある企業は74.9%
令和5年の調査で、退職給付の制度がある企業は74.9%でした。平成30年の調査では80.5%だったので、5年間で5.6ポイント下がっています。
制度がある企業のうち、退職一時金の制度だけを設けている企業が69.0%を占めます。残りの31.0%は、分割して受け取る制度を設けている企業(一時金との併用を含む)です。
2.2 企業規模によって退職金の制度の有無に差がある
退職給付の制度がある企業の割合を企業規模別に見ると、次のようになります。
- 1000人以上:90.1%
- 300人以上999人以下:88.8%
- 100人以上299人以下:84.7%
- 30人以上99人以下:70.1%
1000人以上の企業では9割を超える一方、30人以上99人以下の企業では7割ほどにとどまります。勤め先の規模によって、退職金を前提にできるかどうかが変わるということです。
3. 【中小企業の退職金】中小企業退職金共済で準備されていることも多い
中小企業の退職金を支える国の制度に、中小企業退職金共済制度があります。退職金制度を単独で備えることが難しい中小企業のために設けられたもので、厚生労働省は毎年10月を加入促進強化月間としています。
3.1 従業員30人以上99人以下の企業では48.5%が中小企業退職金共済を利用
令和5年就労条件総合調査では、退職一時金の制度がある企業に、その支払いをどう準備しているかも尋ねています(複数回答)。全体では「社内準備」が56.5%、「中小企業退職金共済制度」が42.0%、「特定退職金共済制度」が9.9%でした。
【社内準備】
- 全体:56.5%
- 1000人以上:91.6%
- 300人以上999人以下:79.6%
- 100人以上299人以下:66.4%
- 30人以上99人以下:49.6%
【中小企業退職金共済制度】
- 全体:42.0%
- 1000人以上:該当なし
- 300人以上999人以下:14.9%
- 100人以上299人以下:35.3%
- 30人以上99人以下:48.5%
30人以上99人以下の企業では、社内準備と中小企業退職金共済がほぼ同じ割合で並んでいます。規模の小さい会社に勤める方にとっては、身近な制度といえるでしょう。
3.2 中小企業退職金共済の掛金は月5000円から3万円、新規加入なら国が2分の1を助成
厚生労働省によると、中小企業退職金共済の掛金は全額を事業主が負担し、従業員ごとに月5000円から3万円の範囲で選びます。短時間で働く従業員には、月2000円・3000円・4000円の特例の掛金月額もあります。
新しく加入する事業主には、掛金月額の2分の1(従業員ごとに上限5000円)を、加入後4か月目から1年間、国が助成します。掛金月額が1万8000円以下の従業員の掛金を増やす場合も、増額分の3分の1が増額月から1年間助成されます。
退職金は、勤労者退職金共済機構から退職者本人の預金口座に直接振り込まれます。事業主が従業員に代わって受け取ることはできません。
4. 【退職金】公務員と比べるとどうなるのか
会社員の退職金を確認したところで、比較の対象としてよく挙がる公務員の退職金も見ておきましょう。ここでは国家公務員の数字を使います。
4.1 国家公務員の定年退職は2160万1000円
内閣官房内閣人事局の「退職手当の支給状況」によると、令和6年度に定年退職した常勤職員の退職手当は平均2160万1000円でした。会社員の大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の1896万円と比べると、264万1000円高い水準です。
ただし、常勤職員全体の平均は1094万3000円、自己都合退職の平均は345万4000円です。この2つには勤続5年未満で退職した方も多く含まれるため、勤続20年以上に絞った会社員の数字とそのまま比べることはできません。
4.2 国家公務員は退職手当の制度があることを前提にできる
会社員との違いとして押さえておきたいのは、国家公務員の退職手当は国家公務員退職手当法で定められている点です。会社員の場合は、まず勤め先に制度があるかどうかから確認する必要があります。
もっとも、国家公務員の退職手当の水準は、おおむね5〜6年ごとに行う民間企業の調査を踏まえて見直されています。民間の水準が下がれば、公務員の側も影響を受けるしくみです。
会社員の定年退職の平均は大学・大学院卒で1896万円ですが、制度がある企業は74.9%で、従業員が30〜99人の企業では7割ほどです。小さな会社では、中小企業退職金共済で退職金を準備していることも少なくありません。
勤め先の退職金制度は、就業規則や退職金規程で確かめられます。中小企業退職金共済に加入している会社なら、自分の分の掛金月額を人事や総務の担当部署に聞いてみるとよいでしょう。
ここからは、勤続年数による差や退職後の保険料との関係など、平均額を自分に当てはめる前に確かめたい点を順に見ていきます。
退職金は平均額より先に、勤め先に制度があるか、どのように準備されているかを知ることが出発点です。中小企業退職金共済に加入している会社なら、退職金は本人の口座に直接振り込まれますので、就業規則とあわせて手続きの流れも確かめておくと安心です。
