2. 繰上げ受給、《手取りベース》損益分岐点は何歳?
額面ベースの計算はシンプルですが、実際の家計に直結する「手取り額」で考える方がより現実的です。実際の生活費を考える上で最も重要なのは、年金から税金(所得税・住民税)や社会保険料(国民健康保険料・介護保険料)が引かれた後の「手取り額」です。年金額が少ない場合、国民健康保険料などの負担が軽くなる傾向があるため、手取りベースで見ると損益分岐点は額面よりもやや後ろにずれる可能性があります。
ここでは試算を分かりやすくするため、年金から控除される金額をモデルケースとして仮定して手取り額を概算します。
2.1 税金・社会保険料の控除額を仮定する
手取り額を試算するため、以下の通りに税金・社会保険料の控除額を仮定します。
※便宜上のモデル数値であり、正確な額は個人によって異なります。
- 65歳受給:年金額168万円→控除額18万円→手取り150万円
- 60歳受給:年金額127万6800円→控除額11万円→手取り116万6800円
仮定した控除額は、国民健康保険料の軽減効果などにより、60歳繰上げ受給の方が低くなります。
また、この手取り額をもとに、65歳までの5年間で先行して受け取る総額を試算します。
- 65歳までの5年間、先行して受け取る年金総額
→116万6800円×5年=583万4000円
2.2 《手取りベース》の損益分岐点
手取りベースの損益分岐点も額面ベース同様に試算します。60歳繰上げ受給者は、65歳になるまでの5年間で総額583万4000円を先行して受け取ります。65歳以降、この先行額を埋めるのにかかる期間は、65歳受給との年額差額で割ることで求められます。
- 65歳受給との年額差額
→150万円-116万6800円=33万3200円
65歳までの先行受け取り総額を、この年額差額で割ると、差額が逆転するまでの年数が分かります。
- 差額が逆転するまでの年数
→583万4000円÷33万3200円=17.51年
65歳に17. 51年足した年齢、つまり82歳6か月が損益分岐点となります。