「公的年金」は、老後の生活を支えるうえで欠かせない収入源のひとつですが、実際にどのくらいの金額を受け取れるかご存じでしょうか。
厚生労働省年金局が公表した「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金の平均受給額は月約5万円、厚生年金では月約14万円となっています。
もちろんこれはあくまで平均的な水準ですが、多くの方がこの額に近い水準の年金を受け取っていると考えられます。
また、一定の条件を満たした配偶者や子どもがいる場合には、年金額に「加給年金」が上乗せされる制度もあります。
本記事では、この「加給年金」の支給条件や受給額の目安について解説します。
加給年金とあわせて知っておきたい「振替加算」についても紹介しているので、ご自身の世帯が対象になるかどうかの判断材料として参考にしてください。
1. 年金に上乗せ支給される「加給年金」とは?
「加給年金」とは、厚生年金保険の受給者が、一定の条件を満たす配偶者や子どもを扶養している場合に上乗せして支給される年金です。
扶養家族がいる人の生活を補う目的で設けられていることから、「扶養手当」や「家族手当」と呼ばれることもあります。
ただし、加給年金の受給にはいくつかの要件が定められているため、夫婦世帯であれば誰でも受け取れるわけではありません。
次章では、加給年金を受給するための条件を具体的に解説していきます。
1.1 「加給年金」はどんな人が受け取れる?
加給年金は、以下2つの要件を満たしている場合に支給の対象となります。
- 厚生年金保険の被保険者期間が20年※以上であること
- 65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)で、その方に生計を維持されている配偶者または子どもがいること
※または、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降15年から19年であること
加給年金は、厚生年金に加入している人のみが対象となる制度のため、自営業者やフリーランスといった国民年金だけに加入している場合は、受給の対象にはなりません。
さらに、加給年金を受け取るためには、扶養している配偶者や子どもが所定の条件を満たしている必要があります。
- 配偶者
・65歳未満であること
・厚生年金加入(共済を含む)が20年未満であること - 子ども
・18歳到達年度の末日まで(高校卒業の3月まで)または1級・2級の障害の状態にある20歳未満
65歳の時点で子どもが18歳未満というケースはあまり多くないため、加給年金の受給者の多くは配偶者との年齢差がある「年の差夫婦」であることが一般的です。
では、実際に要件を満たした場合、どの程度の金額が年金に上乗せされるのでしょうか。